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レベッカ一行の世界漫遊の旅 2 (女盗賊アマゾナ編 2)
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森の動物たちの助けによって、たくさんの果物を持って馬車に戻るとすでにサミュエル皇子が焚火をして、カタルパの村で分けてもらった干し肉を枝に刺してあぶっていた。そしてミラージュもどこかから水を調達してきたのか、傍らに置いてある樽に並々と水が注がれていた。
「あ、もう焚火をしていただいていたんですね?ありがとうございます。サミュエル皇子。」
籠の中にたくさん果実を持って帰ってきた私を見ると、サミュエル皇子が立ち上がって私を見た。
「レ・・レベッカ・・・」
「はい?」
「良かったっ!やっと戻ってきったんだねっ?!」
サミュエル皇子は火をかいていた木の棒を放り投げるといきなり私に向かって駆け寄ってくるとギュウギュウに抱きしめてきた。キャアアアッ!!
「ど、ど、どうしたんですかっ?!サミュエル皇子っ!」
男の人の抱擁に慣れていない私は顔を真っ赤にしながら尋ねた。
「うう・・・戻ってくるのが遅いから・・どれほど君を心配したことか・・!」
サミュエル皇子は私の髪に自分の顔をこすりつけてくる。ますます羞恥で私の顔は赤くなる。
「もう・・・ですから言ったではありませんか。レベッカ様なら大丈夫だと・・」
ミラージュは木の枝をポキンと折り、焚火に放り込むと言った。
「そ、そんな事言ったってレベッカはか弱い女性なんだぞ?!心配するのは当然じゃないか」
サミュエル皇子は私を抱きしめたまま言い返す。皇子はまだ私がか弱い女性だと思い込んでいるようだが・・さすがにいつまでも抱きしめられるのは恥ずかしい。何しろ私は結婚して離婚まで経験したけれどもまだ乙女なのだから。
「お、落ち着いて下さい、サミュエル皇子。私には森の動物たちが一緒だったのですから何かあっても彼らが助けてくれますよ」
その言葉でようやくサミュエル皇子は納得したのか、私から身体を離すと尋ねてきた。
「ほ、本当に・・・?」
「ええ、本当です」
「彼らが・・?」
サミュエル皇子は私の足元にいる小動物たちに目をやる。そこにはウサギさんやキツネさん、リスにマウスにモモンガがいた。
「とても・・彼らがレベッカを守れるとは思えないんだが・・痛った~っ!!」
突然サミュエル皇子が叫んだ。見ると足をリスに嚙まれている。どうやらリスは自分が馬鹿にされたと思い、サミュエル皇子を噛んだのだ。
「ああ・・・駄目よ、噛んだりしたら。この方は私たちの大切なお友達だから優しくしてあげて?」
するとリスは納得したのかサミュエル皇子にかみつくのをやめて私の肩まで登ってきた。
「うう・・な、何て凶暴なリスなんだ・・それにしても俺の事をお友達なんて・・・せめて将来の夫と言ってもらいたかった・・・」
サミュエル皇子がぶつぶつ1人言を言っている。でも・・本当に私の事を・・?
少しだけ胸をドキドキさせながらサミュエル皇子を見つめ・・。
ぐ~・・・
派手にお腹が鳴ってしまった。
「大変!レベッカ様の体力が切れてしまうわっ!」
ミラージュは叫ぶと、串にささっていた干し肉を口に突っ込んでくれた。
モグモグ・・うん、美味しい。それを見たサミュエル皇子は尋ねてきた。
「レベッカ、体力が切れると・・どうなるんだい?」
「そうですね・・動けなくなります」
真顔で答える。
「え・・?アハハハハ・・・!た、確かにお腹がすくと人は動けなくなるよね?よし、それじゃ皆で食事にしよう!」
そして私たちは焚火を囲んで丸太に座り、ささやかな食事をして森の中で眠る事にした。
****
私とミラージュは荷台の上で寝て、サミュエル皇子は地面の上に布を広げて眠っている。私は夜空を見上げながらミラージュに声を掛けた。
「ミラージュ。まだ起きてる?」
「はい、起きてますよ。」
隣にいるミラージュが返事をする。
「私の旅だけに付き合わせるのは悪いから・・貴女の仲間たちが住んでいるドラゴンの国にも行ってみない?」
「え・・?」
ミラージュが身体を起こして私を見た。
「会いたいでしょう?お父さんに・・それに他の仲間たちにも・・・」
「レベッカ様・・・でもずっと私はレベッカ様のお傍に・・・」
「勿論、そうよ。私にはミラージュは必要だもの。でも・・一度くらいはお父さんに会いたいんじゃないの?」
「・・・よろしいんですか?」
「いいのいいの。だって私たちは自由人なんだから」
「ありがとうございます・・」
ミラージュが涙ぐんでいるように見えた。
「いいのよ、ミラージュ。もう・・寝ましょう?」
「ええ。そうですね・・・」
こうして森で過ごす夜は更けていく―。
「あ、もう焚火をしていただいていたんですね?ありがとうございます。サミュエル皇子。」
籠の中にたくさん果実を持って帰ってきた私を見ると、サミュエル皇子が立ち上がって私を見た。
「レ・・レベッカ・・・」
「はい?」
「良かったっ!やっと戻ってきったんだねっ?!」
サミュエル皇子は火をかいていた木の棒を放り投げるといきなり私に向かって駆け寄ってくるとギュウギュウに抱きしめてきた。キャアアアッ!!
「ど、ど、どうしたんですかっ?!サミュエル皇子っ!」
男の人の抱擁に慣れていない私は顔を真っ赤にしながら尋ねた。
「うう・・・戻ってくるのが遅いから・・どれほど君を心配したことか・・!」
サミュエル皇子は私の髪に自分の顔をこすりつけてくる。ますます羞恥で私の顔は赤くなる。
「もう・・・ですから言ったではありませんか。レベッカ様なら大丈夫だと・・」
ミラージュは木の枝をポキンと折り、焚火に放り込むと言った。
「そ、そんな事言ったってレベッカはか弱い女性なんだぞ?!心配するのは当然じゃないか」
サミュエル皇子は私を抱きしめたまま言い返す。皇子はまだ私がか弱い女性だと思い込んでいるようだが・・さすがにいつまでも抱きしめられるのは恥ずかしい。何しろ私は結婚して離婚まで経験したけれどもまだ乙女なのだから。
「お、落ち着いて下さい、サミュエル皇子。私には森の動物たちが一緒だったのですから何かあっても彼らが助けてくれますよ」
その言葉でようやくサミュエル皇子は納得したのか、私から身体を離すと尋ねてきた。
「ほ、本当に・・・?」
「ええ、本当です」
「彼らが・・?」
サミュエル皇子は私の足元にいる小動物たちに目をやる。そこにはウサギさんやキツネさん、リスにマウスにモモンガがいた。
「とても・・彼らがレベッカを守れるとは思えないんだが・・痛った~っ!!」
突然サミュエル皇子が叫んだ。見ると足をリスに嚙まれている。どうやらリスは自分が馬鹿にされたと思い、サミュエル皇子を噛んだのだ。
「ああ・・・駄目よ、噛んだりしたら。この方は私たちの大切なお友達だから優しくしてあげて?」
するとリスは納得したのかサミュエル皇子にかみつくのをやめて私の肩まで登ってきた。
「うう・・な、何て凶暴なリスなんだ・・それにしても俺の事をお友達なんて・・・せめて将来の夫と言ってもらいたかった・・・」
サミュエル皇子がぶつぶつ1人言を言っている。でも・・本当に私の事を・・?
少しだけ胸をドキドキさせながらサミュエル皇子を見つめ・・。
ぐ~・・・
派手にお腹が鳴ってしまった。
「大変!レベッカ様の体力が切れてしまうわっ!」
ミラージュは叫ぶと、串にささっていた干し肉を口に突っ込んでくれた。
モグモグ・・うん、美味しい。それを見たサミュエル皇子は尋ねてきた。
「レベッカ、体力が切れると・・どうなるんだい?」
「そうですね・・動けなくなります」
真顔で答える。
「え・・?アハハハハ・・・!た、確かにお腹がすくと人は動けなくなるよね?よし、それじゃ皆で食事にしよう!」
そして私たちは焚火を囲んで丸太に座り、ささやかな食事をして森の中で眠る事にした。
****
私とミラージュは荷台の上で寝て、サミュエル皇子は地面の上に布を広げて眠っている。私は夜空を見上げながらミラージュに声を掛けた。
「ミラージュ。まだ起きてる?」
「はい、起きてますよ。」
隣にいるミラージュが返事をする。
「私の旅だけに付き合わせるのは悪いから・・貴女の仲間たちが住んでいるドラゴンの国にも行ってみない?」
「え・・?」
ミラージュが身体を起こして私を見た。
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「レベッカ様・・・でもずっと私はレベッカ様のお傍に・・・」
「勿論、そうよ。私にはミラージュは必要だもの。でも・・一度くらいはお父さんに会いたいんじゃないの?」
「・・・よろしいんですか?」
「いいのいいの。だって私たちは自由人なんだから」
「ありがとうございます・・」
ミラージュが涙ぐんでいるように見えた。
「いいのよ、ミラージュ。もう・・寝ましょう?」
「ええ。そうですね・・・」
こうして森で過ごす夜は更けていく―。
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