<番外編>政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売

文字の大きさ
上 下
24 / 194

レベッカ一行の世界漫遊の旅 2 (女盗賊アマゾナ編)

しおりを挟む
ガラガラガラガラ・・・・

森の中を走る馬車。すっかり日も暮れ、辺りは闇につつまれてしまった。

「う~ん・・・困ったな。すっかり夜になってしまったよ。こんな心もとない明かりではこれ以上馬車を走らせるには危険かもしれないなぁ・・」

御者台に座っていたサミュエル皇子が馬車を止めると困った様子で言う。

「それならこの辺りで野宿すればいいじゃないですか。寝床はここでいいし」

私はすっかり元通りになった荷台をポンポン叩きながら言う。
この壊れていた荷台・・何故元通りになったかというと、答えは簡単。壊れる前に時間を戻したからなのだ。

「俺は野宿でも構わないけど、女性2人には厳しくないかな?この荷台は幌もついていないし・・万一雨でも降った場合・・・・」

「それなら大丈夫。今夜は快晴、そしてこの天気は次の目的地に到着するまでずっと継続します!」

自信を持って私は答える。

「へ~・・すごいじゃないか。レベッカ、君は天気を読むことが出来るのかい?」

「ええ、まぁそんなところですね」

私はサミュエル皇子に嘘をついた。本当は天気を読むことなんてできない。ただ私は天候を自由に操ることが出来るだけだ。その気になれば吹雪だって起こすことが出来る。

「しかし、ここは危険な森の中だ。危険な野生動物や魔物が現れたら・・」

尚も心配そうなサミュエル皇子。すると次にミラージュが言った。

「サミュエル皇子!まさか私の存在をお忘れではないでしょうね?」

「え?いや、まさか!君のように存在感が強烈な人を忘れるはずないじゃないか!」

「私の正体は何でしたっけ?」

「勿論知ってるよ。偉大な存在のドラゴンだろう?」

「ええ、私はドラゴンです。よいですか?私より強い生物はドラゴンしかいないのです。いくら野生動物やそこいらの魔物たちが集団で襲ってきても所詮烏合の衆!私にかなうはず無いではありませんか。第一野生に生きる生物たちは人にはない生存本能を持ち合わせています。皆私の存在に怯えて身を隠しておりますよ」

ミラージュは自慢げに言う。しかし、それは紛れもない事実だ。ミラージュと一緒にいて今まで危険な野生動物や魔物に出くわしたことなど一度も無い。

「そうか・・君たち2人は本当にすごいね~・・こうなったら俺も足手まといにならないように頑張らなくちゃな。よし・・なら今夜はここで野宿しよう。俺が寝ずの番をするよ」

サミュエル皇子は張り切って言うが、私は言った。

「いいえ、サミュエル皇子。そんな事しなくても大丈夫ですよ」

そこで私は再び森の動物たちを集めるべく、口笛を吹いた。

ピ~ッ!
ピ~ッ!

「え・・・?あ、まさか・・・その口笛は・・・!」

サミュエル皇子の言葉が言い終わる前に・・・。


ドドドドドドドド・・・ッ!

ものすごい地響きが起こり、辺りが激しく揺れ出した。そして・・・。

「ウワアアアアッ!」

サミュエル皇子が驚愕の悲鳴を上げる。だけど、驚くのは無理も無いかもしれない。馬車の周りを大小様々な野生動物が取り囲んでいたからだ。

「そうねえ・・貴方たちにはこの馬車の見張りをしてもらおうかしら?」

この中で一番大きくて頼りになる野生動物の熊2頭に見張りを命じると、熊たちは頷いた。後は・・・。

「ねえ、2人はここにいて。私は何か食べ物を探してくるわ」

すると間髪入れずサミュエル皇子が反対した。

「な、何だってっ?!駄目だ、レベッカ!危険すぎるっ!」

「大丈夫ですってば。この子たちに案内してもらうし、この森の動物たちはもうみんな私の友達ですから。」

私は自分の肩の上によじ登ってきたリスをなでながらいう。

「へ・・?」

サミュエル皇子はポカンとした目で私を見たが・・やがて笑い出した。

「ほんとに君たちといると飽きないな・・それじゃ食べ物探しは任せようかな?俺は薪を集めて焚火をするよ」

「私は水を探してきますね」

ミラージュは荷台に合ったからっぽの樽を抱えると言った。

「では、皆後ほどここに集合という事で。」

私が言うと2人は頷く。


「さて、しゅっぱーつ!」

私は森の小動物たちをゾロゾロ引き連れてカンテラを灯すと夜の森を歩き始めた―。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

お飾り王妃の愛と献身

石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。 けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。 ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。 国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

完結 愛のない結婚ですが、何も問題ありません旦那様!

音爽(ネソウ)
恋愛
「私と契約しないか」そう言われた幼い貧乏令嬢14歳は頷く他なかった。 愛人を秘匿してきた公爵は世間を欺くための結婚だと言う、白い結婚を望むのならばそれも由と言われた。 「優遇された契約婚になにを躊躇うことがあるでしょう」令嬢は快く承諾したのである。 ところがいざ結婚してみると令嬢は勤勉で朗らかに笑い、たちまち屋敷の者たちを魅了してしまう。 「奥様はとても素晴らしい、誰彼隔てなく優しくして下さる」 従者たちの噂を耳にした公爵は奥方に興味を持ち始め……

処理中です...