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レベッカ一行の世界漫遊の旅 1 (カタルパ編 11 終)
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ドラゴンの姿に変えたミラージュの背中に乗って、私たちはカタルパの村へと帰ってきた。
バサッバサッ
大きな翼を動かし、ミラージュは地面に風を巻き上げながら着地した。
< 到着しましたよ、レベッカ様 >
「うん、ありがとう。お疲れ様、ミラージュ」
ストンと地面に降り立ちながら私は礼を言った。相変わらず時は止まっている。私たちが魔物退治へ向かった時と全く同じ状況だった。
「ミラージュ・・それじゃ時を動かすわね。そうね・・・違和感がないように1時間くらい時を速めた状態で戻しましょう」
「ええ。そうですね」
ミラージュもそれに同意する。そして私は頭で念じ、指をパチンと鳴らした。
すると目の前の光景はいっせいにかわった。空中を飛んでいた皿は消え、先ほどまで私たちの目の間にいた人々の姿は無く、代わりに牛を連れたおじさんが目の前を横切り、家の軒先では子供たちが遊んでいる姿へと変わった。
「レベッカ様・・・」
「何?ミラージュ」
「あの空中を飛んでいたお皿・・一体どうなってしまったのでしょうね?」
ミラージュは私が考えているのと同じ事を尋ねてきた。
「さあ?誰かが拾い集めてきれいにしたんじゃないかしら?さて、それじゃサミュエル皇子の元へ戻りましょうか?」
「はい!レベッカ様っ!」
****
宿屋へ戻ると、皆まだ眠っていた。
「う~ん・・・よくもあんなクソまずい料理を・・。」
サミュエル皇子は夢の中で文句を言っているし、ハゲマッチョ男はだらしなく床に伸びて大きないびきを立てている。そのうるさい事と言ったら・・。
女将さんを含めた他の人物たちも皆幸せそうに眠ってる。
「どうします?起こしますか?」
ミラージュが尋ねてきた。
「そうね・・・気持ちよさげに眠っているから寝かしておいてあげたいのは山々だけど・・起こしましょう。力を使ったせいでお腹が空いてたまらないのよ・・」
先ほどからお腹が空いてたまらず、すきっ腹をさすりながら言う。
「まあ!大変!何か食料があればよいのですが・・・」
ミラージュは困り顔で言う。
「いいのよ、ミラージュ。それよりも先へ進みましょう。この『カタルパ』を抜ければ、森へ出るの。そこには確か果物が鈴なりになっている森なのよ。そこで果物でも採取して食べればいいわ」
「それはいいですね。では皆さんを起こしますか?」
「ええ。起こすわ」
そして私はパチンと指をならした―。
****
「ええええっ?!お、お前たちが魔物を退治したっていうのかっ?!」
目を覚ました皆に事情を説明すると、一番最初に声を上げたのはハゲマッチョ男だった。
「そうか・・・まさかレベッカ達が魔物を倒すとは・・・」
一方のサミュエル皇子は納得した様子で呟いている。彼はミラージュの正体を知っているし、なんとなく私の能力の事を知っているので対して驚いてはいなかった。
「よし、ならお前たちの言葉が本当かどうか確かめに行ってやる。者ども、行くぞっ!」
ハゲマッチョ男の掛け声に、彼らはぞろぞろと宿屋を出て行った。それを見届けるとエプロン男が尋ねてきた。
「それで?どんな魔物でしたか?やはり・・植物の姿をしていましたか?」
「ええ、そうです。巨大なお花の魔物でした。」
腕組みしながら私は答え・・・あの時の魔物の姿を思い出し、身震いした。
「とにかく、何か御礼をさせて下さい。謝礼金を・・」
それを聞いた私は言った。
「いえ、謝礼金は結構です。出来れば何か食料をいただけませんか?日持ちのする栄養価の高いもので・・魔物に汚染されていない食べ物です」
「うん、俺もそれがいいと思うな。非常食代わりになるしね」
サミュエル皇子も賛同する。
するとおかみさんが言った。
「あ!いいものがあります!お今お持ちしますね!」
そしておかみさんは厨房に行くとすぐに戻ってきた。手には大きな麻の布袋を持っている。
「ああ、これなら確かにいいだろう」
エプロン男・・もとい、シェフが満足げに言う。
「さあ!受けっとって下さいな!」
おかみさんがサミュエル皇子に手渡してきた。
「おかみさん、これは何ですか?」
「ああ、これはねヒマワリの種だよ。とってもうまいんだ。道中食べていくといいよ。」
「「!!」」
私とミラージュは顔を見合わせて驚いた―。
ガラガラガラガラ・・・・
馬車の上で私はヒマワリの種をつまみながらため息をついた。
「はあ~・・まさか当分見たくないと言っていたのに、お礼でもらったのがヒマワリの種だなんて・・」
「でも、とてもおいしいですわよ?ヒマワリの種・・」
もぐもぐ口に入れてほおばりながらミラージュは言う。
一方、御者台のサミュエル皇子が口を挟んできた。
「それにしても女性2人に魔物退治の先を越されるなんて・・今度は必ず俺も誘ってくれよ?君たちの仲間なんだから。」
「ええ、分かりました。サミュエル皇子」
私はヒマワリの種を口に入れて食べてみた。うん・・・なかなか悪くない味かも・・・。
そして馬車は私たちを乗せて走り続ける―。
バサッバサッ
大きな翼を動かし、ミラージュは地面に風を巻き上げながら着地した。
< 到着しましたよ、レベッカ様 >
「うん、ありがとう。お疲れ様、ミラージュ」
ストンと地面に降り立ちながら私は礼を言った。相変わらず時は止まっている。私たちが魔物退治へ向かった時と全く同じ状況だった。
「ミラージュ・・それじゃ時を動かすわね。そうね・・・違和感がないように1時間くらい時を速めた状態で戻しましょう」
「ええ。そうですね」
ミラージュもそれに同意する。そして私は頭で念じ、指をパチンと鳴らした。
すると目の前の光景はいっせいにかわった。空中を飛んでいた皿は消え、先ほどまで私たちの目の間にいた人々の姿は無く、代わりに牛を連れたおじさんが目の前を横切り、家の軒先では子供たちが遊んでいる姿へと変わった。
「レベッカ様・・・」
「何?ミラージュ」
「あの空中を飛んでいたお皿・・一体どうなってしまったのでしょうね?」
ミラージュは私が考えているのと同じ事を尋ねてきた。
「さあ?誰かが拾い集めてきれいにしたんじゃないかしら?さて、それじゃサミュエル皇子の元へ戻りましょうか?」
「はい!レベッカ様っ!」
****
宿屋へ戻ると、皆まだ眠っていた。
「う~ん・・・よくもあんなクソまずい料理を・・。」
サミュエル皇子は夢の中で文句を言っているし、ハゲマッチョ男はだらしなく床に伸びて大きないびきを立てている。そのうるさい事と言ったら・・。
女将さんを含めた他の人物たちも皆幸せそうに眠ってる。
「どうします?起こしますか?」
ミラージュが尋ねてきた。
「そうね・・・気持ちよさげに眠っているから寝かしておいてあげたいのは山々だけど・・起こしましょう。力を使ったせいでお腹が空いてたまらないのよ・・」
先ほどからお腹が空いてたまらず、すきっ腹をさすりながら言う。
「まあ!大変!何か食料があればよいのですが・・・」
ミラージュは困り顔で言う。
「いいのよ、ミラージュ。それよりも先へ進みましょう。この『カタルパ』を抜ければ、森へ出るの。そこには確か果物が鈴なりになっている森なのよ。そこで果物でも採取して食べればいいわ」
「それはいいですね。では皆さんを起こしますか?」
「ええ。起こすわ」
そして私はパチンと指をならした―。
****
「ええええっ?!お、お前たちが魔物を退治したっていうのかっ?!」
目を覚ました皆に事情を説明すると、一番最初に声を上げたのはハゲマッチョ男だった。
「そうか・・・まさかレベッカ達が魔物を倒すとは・・・」
一方のサミュエル皇子は納得した様子で呟いている。彼はミラージュの正体を知っているし、なんとなく私の能力の事を知っているので対して驚いてはいなかった。
「よし、ならお前たちの言葉が本当かどうか確かめに行ってやる。者ども、行くぞっ!」
ハゲマッチョ男の掛け声に、彼らはぞろぞろと宿屋を出て行った。それを見届けるとエプロン男が尋ねてきた。
「それで?どんな魔物でしたか?やはり・・植物の姿をしていましたか?」
「ええ、そうです。巨大なお花の魔物でした。」
腕組みしながら私は答え・・・あの時の魔物の姿を思い出し、身震いした。
「とにかく、何か御礼をさせて下さい。謝礼金を・・」
それを聞いた私は言った。
「いえ、謝礼金は結構です。出来れば何か食料をいただけませんか?日持ちのする栄養価の高いもので・・魔物に汚染されていない食べ物です」
「うん、俺もそれがいいと思うな。非常食代わりになるしね」
サミュエル皇子も賛同する。
するとおかみさんが言った。
「あ!いいものがあります!お今お持ちしますね!」
そしておかみさんは厨房に行くとすぐに戻ってきた。手には大きな麻の布袋を持っている。
「ああ、これなら確かにいいだろう」
エプロン男・・もとい、シェフが満足げに言う。
「さあ!受けっとって下さいな!」
おかみさんがサミュエル皇子に手渡してきた。
「おかみさん、これは何ですか?」
「ああ、これはねヒマワリの種だよ。とってもうまいんだ。道中食べていくといいよ。」
「「!!」」
私とミラージュは顔を見合わせて驚いた―。
ガラガラガラガラ・・・・
馬車の上で私はヒマワリの種をつまみながらため息をついた。
「はあ~・・まさか当分見たくないと言っていたのに、お礼でもらったのがヒマワリの種だなんて・・」
「でも、とてもおいしいですわよ?ヒマワリの種・・」
もぐもぐ口に入れてほおばりながらミラージュは言う。
一方、御者台のサミュエル皇子が口を挟んできた。
「それにしても女性2人に魔物退治の先を越されるなんて・・今度は必ず俺も誘ってくれよ?君たちの仲間なんだから。」
「ええ、分かりました。サミュエル皇子」
私はヒマワリの種を口に入れて食べてみた。うん・・・なかなか悪くない味かも・・・。
そして馬車は私たちを乗せて走り続ける―。
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