嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

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第9章 14 気付いた思い

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 ヒルダはノワールの顔が真っ青な事に驚き、声を掛けた。

「どうしたのですか?ノワール様。顔色が良くないですよ?」

「あ…そ、そうか…?別に大丈夫だ。具合は何処も悪くない」

「ですが…」

ヒルダが言いかけるより早くノワールが尋ねてきた。

「そんな事よりも…聞きたいことがある。ヒルダはその告白を受け入れたのか?あの男と…交際するのか?」

ノワールは自分でも声が震えているのが分かった。まさかヒルダが告白されたという話を聞かされただけで、自分がこれほどまでにショックを受けるとは思ってもいなかったのだ。
ヒルダはその人物と交際を決めたらもうここには住まないだろう…そこまでノワールは考えていた。

「い、いえ。断りました。彼には悪いことをしたと思っていますが…どうしても恋愛対象には見る事が出来なくて…。それで結局気まずい雰囲気になって帰ってきたのです。私…もうあのレストランには行かないほうがよさそうです」

ヒルダは寂しげに言った。

「そ、そうなのか…?」

ノワールは自分が安堵している事に驚いていた。

「あの…ノワール様」

ヒルダは思いつめた顔でノワールを見つめた。

「どうした?」

「もし…もし、ノワール様に好きな女性や…恋人が出来たならその時はすぐに教えて頂けますか?」

「え?」

(一体ヒルダは何を言い出すのだ…?大体俺が好きな相手はヒルダなのに…?)

「ヒルダ、それは一体…」

するとヒルダは言った。

「ノワール様に恋人が出来れば、私はここに住み続けるわけにはいきませんから」

ヒルダの突然の発言に驚いたノワールは一瞬言葉に詰まってしまった。

「そうしたら、私は別に住む場所を探しますので…その時は見つかるまではここに置いて頂けませんか?なるべく早めに出ていくようにはしますが」

「ひょっとして…ここを出ていきたいのか?本当は…俺と一緒に暮らすのは嫌だったのか?」

そんな風には思いたくはなかった。ノワールの心に不安な気持ちが押し寄せてくる。

「い、いえ!そうではありません」

「ならずっとここにいればいいじゃないか?出ていくなんて…考える必要は無いだろう?」

そしてノワールはコーヒーを飲んだ。

「でも…ヒルダに新しい恋人が出来ればそうも言ってられないか…」

「それは無いと思います」

ヒルダはきっぱりと言う。

「そう…なのか?そうだったな…あんな目にあったんだ。そうそう好きな相手が出てくるはずないか…」

ノワールに言われて、その時になってヒルダは初めて気付いた。ノワールに言われるまでルドルフの事もエドガーの事も忘れていた事に。その代わり、頭の中をしめていたのはノワールだったのだ。

(私…ひょっとするとノワール様の事を…?)

ヒルダは目の前に座るノワールをじっと見つめた―。

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