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第9章 9 胸に秘めた想い
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温かなお風呂で身体がすっかり温まったヒルダは夜着に着替え、キルトのガウンを着込むとノワールの部屋の扉をノックした。
コンコン
するとすぐに扉が開かれ、ノワールが姿を現した
「…どうした?そうか…入浴が済んだのか?」
「はい、バスルームが空きましたので伝えに来ました」
「ああ、わざわざ教えてくれてありがとう。体を冷やさないようにな、今夜は早めに休むといい」
「…はい。分かりました。おやすみなさい」
「ああ、お休み」
ヒルダは頭を下げるとノワールの部屋を後にした。その後姿を見ていたノワールの顔は赤く染まっていた―。
***
23時―
ヒルダは自室で本を読んでいた。その本はこの間、ノワールに連れて行って貰った古書店で購入した本だった。とても面白い本だったので既に半分以上読み終わっていた。
「今日はここまでにしておきましょう」
きりの良いページまで読み終わったヒルダは小さく呟くと栞をページに挟んで、本を閉じた。そしてノワールの事を思い出した。
『もし何も用事がなければまたあの古本屋へ行かないか?』
ノワールの言葉が頭に蘇ってくる。
「ノワール様に悪いことをしてしまったかしら…」
ヒルダにとってノワールは恩人以外の何者でもなかった。エドガーをフィールズ家から救ってくれたのもノワールだったし、ヒルダをフィールズ家から解放してくれたのもノワールだった。そして今も行き場を無くしそうになっていたヒルダの為に家を借り、無償で住まわせて貰っている。そんなノワールの誘いを断ってしまったので、申し訳ない気持ちで一杯だった。
「明日…朝食の席で謝りましょう…」
そしてヒルダは明かりを消すとベッドへ潜り込んだ―。
****
翌朝、6時に起きたヒルダは着替えを済ませるとすぐに部屋を出てキッチンへとむかった。朝食の準備をする為である。
じゃがいも、人参、玉ねぎが入った野菜スープを作り、ゆで卵を茹でて潰してパンに挟んでサンドイッチを作った。そしてケトルでお湯を沸かしている頃…。
「ヒルダ?」
背後でノワールの声が聞こえた。
「あ、おはようございます。ノワール様」
「あ、ああ。おはよう…。まさか…朝食を用意してくれたのか?」
「はい、差し出がましいいかと思ったのですが…少しでもノワール様の御役に立ちたくて…」
「ヒルダ…役に立ちたいとか、そんな風に思う必要は無い。ヒルダは俺のアシスタントだろう?だから一緒に住んで貰ったんだ。それに…」
そこでノワールは言葉を切った。
(俺が…ヒルダに傍にいてもらいたいからだ…)
けれど、そんな事は口に出せるはずは無かった。
「ノワール様?」
首を傾げたヒルダにノワールは言った。
「俺には責任があるからな…エドガーの件で…。これは俺の罪滅ぼしだ。だからヒルダは気兼ねすることなくこの家にいてくれればいい。だけど…食事を作って貰えるのは…嬉しいよ」
「ノワール様…」
ヒルダは驚いていた。
いつも何処か不機嫌そうな様子のノワールが笑みを浮かべてそんな台詞を言うとは思いもしていなかったのだ。
「それでは…これから先も私が食事の支度をしてもいいですか?」
「…出来ればそうして貰えると…助かる」
その言葉をヒルダに告げるノワールの顔が…少しだけ赤らんでいた―。
コンコン
するとすぐに扉が開かれ、ノワールが姿を現した
「…どうした?そうか…入浴が済んだのか?」
「はい、バスルームが空きましたので伝えに来ました」
「ああ、わざわざ教えてくれてありがとう。体を冷やさないようにな、今夜は早めに休むといい」
「…はい。分かりました。おやすみなさい」
「ああ、お休み」
ヒルダは頭を下げるとノワールの部屋を後にした。その後姿を見ていたノワールの顔は赤く染まっていた―。
***
23時―
ヒルダは自室で本を読んでいた。その本はこの間、ノワールに連れて行って貰った古書店で購入した本だった。とても面白い本だったので既に半分以上読み終わっていた。
「今日はここまでにしておきましょう」
きりの良いページまで読み終わったヒルダは小さく呟くと栞をページに挟んで、本を閉じた。そしてノワールの事を思い出した。
『もし何も用事がなければまたあの古本屋へ行かないか?』
ノワールの言葉が頭に蘇ってくる。
「ノワール様に悪いことをしてしまったかしら…」
ヒルダにとってノワールは恩人以外の何者でもなかった。エドガーをフィールズ家から救ってくれたのもノワールだったし、ヒルダをフィールズ家から解放してくれたのもノワールだった。そして今も行き場を無くしそうになっていたヒルダの為に家を借り、無償で住まわせて貰っている。そんなノワールの誘いを断ってしまったので、申し訳ない気持ちで一杯だった。
「明日…朝食の席で謝りましょう…」
そしてヒルダは明かりを消すとベッドへ潜り込んだ―。
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翌朝、6時に起きたヒルダは着替えを済ませるとすぐに部屋を出てキッチンへとむかった。朝食の準備をする為である。
じゃがいも、人参、玉ねぎが入った野菜スープを作り、ゆで卵を茹でて潰してパンに挟んでサンドイッチを作った。そしてケトルでお湯を沸かしている頃…。
「ヒルダ?」
背後でノワールの声が聞こえた。
「あ、おはようございます。ノワール様」
「あ、ああ。おはよう…。まさか…朝食を用意してくれたのか?」
「はい、差し出がましいいかと思ったのですが…少しでもノワール様の御役に立ちたくて…」
「ヒルダ…役に立ちたいとか、そんな風に思う必要は無い。ヒルダは俺のアシスタントだろう?だから一緒に住んで貰ったんだ。それに…」
そこでノワールは言葉を切った。
(俺が…ヒルダに傍にいてもらいたいからだ…)
けれど、そんな事は口に出せるはずは無かった。
「ノワール様?」
首を傾げたヒルダにノワールは言った。
「俺には責任があるからな…エドガーの件で…。これは俺の罪滅ぼしだ。だからヒルダは気兼ねすることなくこの家にいてくれればいい。だけど…食事を作って貰えるのは…嬉しいよ」
「ノワール様…」
ヒルダは驚いていた。
いつも何処か不機嫌そうな様子のノワールが笑みを浮かべてそんな台詞を言うとは思いもしていなかったのだ。
「それでは…これから先も私が食事の支度をしてもいいですか?」
「…出来ればそうして貰えると…助かる」
その言葉をヒルダに告げるノワールの顔が…少しだけ赤らんでいた―。
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