嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
538 / 566

第8章 9 両親との別れ

しおりを挟む
 ヒルダが退院する日―

ハリスとマーガレット、カミラにノワールの姿が病室にあった。

「ヒルダ…本当に『カウベリー』には帰らないのか…?」

ハリスがヒルダに問いかけた。

「ええ。申し訳ございません、お父様。私の変え帰るべき場所は…あのアパートメントなのです」

「しかし…」

尚も言い淀むハリスにマーガレットは言った。

「あなた、大概にして下さいな。ヒルダが決めたことなのですから、もうこれ以上口出しするのはおやめ下さい」

「お前の方からそのような台詞が出て来るなんて驚きだな?」

ハリスが驚いた顔でマーガレットを見る。

「ええ、ヒルダはもう…小さな子供ではありません。大人なのですから」

「お母様…」

「奥様、旦那様。ヒルダ様の事なら私がおりますので御安心下さい」

しかし、ヒルダはカミラの言葉に首を振った。

「カミラ…もう私のことなら大丈夫よ。私…知ってるのよ。アレン先生から結婚を申し込まれているのでしょう?」

「「「「えっ?!」」」」

ヒルダの言葉にその場にいた全員が驚いた。

「カミラ…その話、本当なのか?」

ノワールが尋ねた。

「え…そ、それは…」

カミラが困惑した表情を浮かべる。

「カミラ、正直に話して頂戴」

マーガレットに言われ、カミラは観念したかのように話し始めた。

「は、はい…その通りです。実は昨年…クリスマスの日に…アレン先生にプロポーズされました…」

頬を染めながらカミラは言う。

「そうだったのか…」

ハリスは唸るように言う。

「カミラは私が心配でアレン先生のプロポーズのお返事が出来なかったのよね?でも私のことなら大丈夫。どうかプロポーズのお返事をして?」

ヒルダの言葉に思わずカミラの目に涙が浮かぶ。

「ですが…ヒルダ様は…エドガー様と…」

その言葉に思わずノワールは目を伏せる。

「いいのよ、私は…もう大丈夫だから。カミラにはどうか幸せになってもらいたいのよ」

「はい…有難うございます…ヒルダ様…」

カミラはヒルダの手をしっかりと握りしめた―。



****


「それじゃ、ヒルダ。元気でな?」

「ヒルダ、離れていても私達は親子に変わりないのだから…何かあったら手紙を書いて頂戴ね」

駅の前で馬車を降りたハリスとマーガレットが別れを告げる。

「お父様、お母様。本当に改札までお見送りしなくて宜しいのですか?」

ヒルダが馬車の中で尋ねる。

「ああ、大丈夫だよ。ヒルダは退院したばかりなのだからあまり動かないほうがいい」

「そうよ。ヒルダ。ここまででお見送りはいいのよ」

そしてハリスはカミラに言った。

「カミラ…それでは結婚するまでは…どうかヒルダを頼む…」

「はい、お任せ下さい。旦那様」

そして次にハリスはノワールを見た。

「ノワール…」

「はい」

「君には色々と言いたいことがあるが…」

そこで言葉を一度切り、言った。

「ヒルダを…宜しく頼む」

「え…?」

その言葉にノワールは一瞬躊躇うも、返事をした。

「はい。分かりました」

(ノワール様…)

ハリスとノワールが話をしている姿をヒルダは見つめていた。


そして…。

ハリスとマーガレットはカウベリーへと帰って行った―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

ヒロインは辞退したいと思います。

三谷朱花
恋愛
リヴィアはソニエール男爵の庶子だった。15歳からファルギエール学園に入学し、第二王子のマクシム様との交流が始まり、そして、マクシム様の婚約者であるアンリエット様からいじめを受けるようになった……。 「あれ?アンリエット様の言ってることってまともじゃない?あれ?……どうして私、『ファルギエール学園の恋と魔法の花』のヒロインに転生してるんだっけ?」 前世の記憶を取り戻したリヴィアが、脱ヒロインを目指して四苦八苦する物語。 ※アルファポリスのみの公開です。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?

ここ
恋愛
アリサの婚約者ミゲルは、婚約のときから、平凡なアリサが気に入らなかった。 アリサはそれに気づいていたが、政略結婚に逆らえない。 15歳と16歳になった2人。ミゲルには恋人ができていた。マーシャという綺麗な令嬢だ。邪魔なアリサにこわい思いをさせて、婚約解消をねらうが、事態は思わぬ方向に。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

踏み台令嬢はへこたれない

IchikoMiyagi
恋愛
「婚約破棄してくれ!」  公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。  春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。  そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?  これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。 「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」  ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。  なろうでも投稿しています。

処理中です...