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第7章 17 別れの手紙 2
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その頃―
エドガーはアンナと一緒に汽車に乗っていた。2人がいる最後部車両は特別車両である。車内は扉で仕切られ、完全な個室状態となっていた。座席はベッドにもする事が出来る、まさに特別車両だった。そして今、ベッドの上では疲れ切ったアンナが静かに眠っていた。
「…」
エドガーはそんなアンナを少しの間、見守っていたがやがて無言で席を立ち…そっと扉を開けると特別車両を出て、車内の外へ出た。
車外に出たエドガーは手摺につかまり、冷たい風が吹きすさぶ中、ヒルダの住む町からグングン遠ざかっていく景色を1人悲しい瞳で見つめていた。自然と手摺を握りしめる手に力がこもる。
やがて…エドガーの目から涙が溢れて来た。
「…クッ…」
涙を止めようにも悲しみが込み上げて来て止まらない。やがてエドガーの口から嗚咽が漏れ出した。
「ウッ…ヒ・ヒルダ…ヒルダ…」
世界中で一番愛するヒルダの名を呼ぶだけでエドガーの胸は張り裂けそうだった。目を閉じれば美しいヒルダが優しく微笑み、自分を見つめてくれる姿が鮮明に蘇って来る。穏やかで心優しいこの世で唯一無二の女性。
(ヒルダ…ずっと…ずっと側にいたかった。ようやく俺の気持ちが通じたと思っていたのに…こんな事になるなんて…。もう…二度と会えないなんて…っ!)
「ヒルダ…許してくれ…」
エドガーの涙はとどまるところを知らなかった…。
そんなエドガーの後姿を見守る人影。
「エドガー様…」
その人影はアンナだった。
手摺に掴まり、泣き崩れる後ろ姿を…さっきまで眠っていたはずのアンナが悲し気な目で見つめている。
エドガーはアンナに見られていると言う事に気付く事も無く、涙が枯れ果てるまで泣き続けるのだった―。
****
(こ、これは…お兄様からの手紙…!)
「ノワール様は…このお手紙を…読まれたのですか…?」
震える声でヒルダは尋ねた。
「まさか!読む筈が無いだろう?この手紙は…エドガーからヒルダへ宛てられて書いた手紙なのだから」
ノワールは首を振った。
「…そうですね…。で、では…読みます…」
本当は手紙を読みたくは無かった。ノワールの話から、自分がエドガーに捨てられてしまったのはゆるぎない事実であるのは分り切っていたからだ。今更事実を知って何になるというのだ。しかし、それでもエドガーの身に何が起こったかは知りたい気持ちの方がずっと勝っていた。
ヒルダは相反する気持ちと葛藤しながら、封筒を開封し、2つ折りになっている手紙を開いて、目を通し始めた―。
****
『愛するヒルダへ』
ヒルダ、こんな事になって本当にすまない。でもどうか信じて欲しい。別れ際に言った言葉は俺の嘘偽りない本心だ。ヒルダの事を愛していたし、恋人同士になりたいと心の底から願っていた。少なくともあの時までは…。でもまさか帰宅してみるとアンナ嬢が俺を訪ねてきているとは思いもしなかった。そして彼女が不遇な目に遭っていたということも。
つい最近の出来事だ。アンナ嬢の両親が彼女の留学先の国に向かう途中、蒸気船の事故で亡くなったそうだ。そしてその蒸気船にはアンナと親しくしていたジャンという少年も乗り合わせていた。彼はアンナ嬢の両親を迎えに行く為に一緒に船に乗り合わせ…沈没事故に巻き込まれて亡くなってしまった。両親を一度に亡くしてしまったアンナ嬢には後見人が必要で、新たに後見人になったのは彼女の父親の弟だった。後見人となった叔父は権力を行使して、無理やりアンナ嬢を年上の老人に嫁がせようとしていた。彼女は結婚を激しく拒否すると後見人が言ったそうだ。それならば代わりの結婚相手を連れてくれば家督も譲るし、屋敷も返すと約束したらしい。そしてアンナ嬢は俺との結婚を望み、必死になって俺の行方を探し出し…ようやく訪ね当てて来たそうだ。
だから…すまない、ヒルダ。
元々俺とアンナ嬢は婚約者同士だったが、俺がヒルダを愛していることに気付き、自分から身をひいてくれた。けれど、再び俺を求めてはるばる海を越えて助けを求めて尋ねて来たアンナ嬢をどうしても見捨てる事が出来なかった。
許してくれとは言わない。俺を恨んでくれても構わない。
愛していると言っておきながら…ヒルダの元を去るのだから、我ながら本当に最低な人間だと思っている。
さよなら、ヒルダ。
どうかいつまでも元気で。
例え何所にいても…遠い空の下でヒルダの幸せを心からずっと祈っている。
エドガー
エドガーはアンナと一緒に汽車に乗っていた。2人がいる最後部車両は特別車両である。車内は扉で仕切られ、完全な個室状態となっていた。座席はベッドにもする事が出来る、まさに特別車両だった。そして今、ベッドの上では疲れ切ったアンナが静かに眠っていた。
「…」
エドガーはそんなアンナを少しの間、見守っていたがやがて無言で席を立ち…そっと扉を開けると特別車両を出て、車内の外へ出た。
車外に出たエドガーは手摺につかまり、冷たい風が吹きすさぶ中、ヒルダの住む町からグングン遠ざかっていく景色を1人悲しい瞳で見つめていた。自然と手摺を握りしめる手に力がこもる。
やがて…エドガーの目から涙が溢れて来た。
「…クッ…」
涙を止めようにも悲しみが込み上げて来て止まらない。やがてエドガーの口から嗚咽が漏れ出した。
「ウッ…ヒ・ヒルダ…ヒルダ…」
世界中で一番愛するヒルダの名を呼ぶだけでエドガーの胸は張り裂けそうだった。目を閉じれば美しいヒルダが優しく微笑み、自分を見つめてくれる姿が鮮明に蘇って来る。穏やかで心優しいこの世で唯一無二の女性。
(ヒルダ…ずっと…ずっと側にいたかった。ようやく俺の気持ちが通じたと思っていたのに…こんな事になるなんて…。もう…二度と会えないなんて…っ!)
「ヒルダ…許してくれ…」
エドガーの涙はとどまるところを知らなかった…。
そんなエドガーの後姿を見守る人影。
「エドガー様…」
その人影はアンナだった。
手摺に掴まり、泣き崩れる後ろ姿を…さっきまで眠っていたはずのアンナが悲し気な目で見つめている。
エドガーはアンナに見られていると言う事に気付く事も無く、涙が枯れ果てるまで泣き続けるのだった―。
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(こ、これは…お兄様からの手紙…!)
「ノワール様は…このお手紙を…読まれたのですか…?」
震える声でヒルダは尋ねた。
「まさか!読む筈が無いだろう?この手紙は…エドガーからヒルダへ宛てられて書いた手紙なのだから」
ノワールは首を振った。
「…そうですね…。で、では…読みます…」
本当は手紙を読みたくは無かった。ノワールの話から、自分がエドガーに捨てられてしまったのはゆるぎない事実であるのは分り切っていたからだ。今更事実を知って何になるというのだ。しかし、それでもエドガーの身に何が起こったかは知りたい気持ちの方がずっと勝っていた。
ヒルダは相反する気持ちと葛藤しながら、封筒を開封し、2つ折りになっている手紙を開いて、目を通し始めた―。
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『愛するヒルダへ』
ヒルダ、こんな事になって本当にすまない。でもどうか信じて欲しい。別れ際に言った言葉は俺の嘘偽りない本心だ。ヒルダの事を愛していたし、恋人同士になりたいと心の底から願っていた。少なくともあの時までは…。でもまさか帰宅してみるとアンナ嬢が俺を訪ねてきているとは思いもしなかった。そして彼女が不遇な目に遭っていたということも。
つい最近の出来事だ。アンナ嬢の両親が彼女の留学先の国に向かう途中、蒸気船の事故で亡くなったそうだ。そしてその蒸気船にはアンナと親しくしていたジャンという少年も乗り合わせていた。彼はアンナ嬢の両親を迎えに行く為に一緒に船に乗り合わせ…沈没事故に巻き込まれて亡くなってしまった。両親を一度に亡くしてしまったアンナ嬢には後見人が必要で、新たに後見人になったのは彼女の父親の弟だった。後見人となった叔父は権力を行使して、無理やりアンナ嬢を年上の老人に嫁がせようとしていた。彼女は結婚を激しく拒否すると後見人が言ったそうだ。それならば代わりの結婚相手を連れてくれば家督も譲るし、屋敷も返すと約束したらしい。そしてアンナ嬢は俺との結婚を望み、必死になって俺の行方を探し出し…ようやく訪ね当てて来たそうだ。
だから…すまない、ヒルダ。
元々俺とアンナ嬢は婚約者同士だったが、俺がヒルダを愛していることに気付き、自分から身をひいてくれた。けれど、再び俺を求めてはるばる海を越えて助けを求めて尋ねて来たアンナ嬢をどうしても見捨てる事が出来なかった。
許してくれとは言わない。俺を恨んでくれても構わない。
愛していると言っておきながら…ヒルダの元を去るのだから、我ながら本当に最低な人間だと思っている。
さよなら、ヒルダ。
どうかいつまでも元気で。
例え何所にいても…遠い空の下でヒルダの幸せを心からずっと祈っている。
エドガー
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