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第7章 5 エドガーの迎え
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「お帰りなさいませ、ヒルダ様」
カミラは早速玄関までヒルダを出迎えた。
「ただいま、遅くなってごめんなさい」
ヒルダはコートを脱ぎながらカミラに謝った。
「いえ、大丈夫です。エドガー様と会ってらしたのですよね?」
「ええ、そうなの。アルバイト先を出たところで私の仕事が終わるのを待ってらしたようなの。寒空の下で…悪いことをしてしまったわ」
「そう言えば雪になってきましたね。寒かったのではありませんか?お部屋で温かい紅茶でも飲まれますか?」
「ええ、そうね。ありがとう。部屋に荷物を置いたらすぐリビングに行くわ」
「では私は紅茶の準備をしておきますね」
「ええ。すぐに行くわ」
ヒルダは荷物を持って自室へ行き、カミラは紅茶を淹れにリビングへと向かった―。
****
薪ストーブがパチパチと燃える温かな部屋でヒルダはカミラが淹れてくれた紅茶を飲んでいた。
「美味しいわ…それに何だか身体もすごく温まる感じがするわ」
ヒルダはカミラが淹れてくれた紅茶を飲みながら笑みを浮かべた。
「はい、実はその紅茶にはブランデーが入っているのです」
「まぁ。そうだったの?どうりでほのかにアルコールの香りがすると思ったわ。とても美味しい…」
カミラは美味しそうに紅茶を飲むヒルダを見ながら尋ねた。
「ヒルダ様…エドガー様に…何か言われましたか?」
「え?特に何か言われたわけではないけれど…あ、そうだわ。もうお兄様では無く、名前で呼んで貰いたいと頼まれたのよ」
「名前で…ですか?」
「ええ、そうよ。後、明日は2人で一緒に出掛ける事になったの」
「そうなのですね。エドガー様は余程…」
そこまで言いかけてカミラは言葉を切った。
「余程…どうかしたの?」
「い、いえ。エドガー様はヒルダ様の事を大切に思われているのだと感じたのです」
「そうね…。私は本来ならお兄様に恨まれても良い立場なのに…。だから私はお兄様の頼みは何でも聞いてあげたいと思っているの。私はまだ一度もお兄様の役に立てたことが無かったから…」
「ヒルダ様…」
カミラは複雑な気持ちでヒルダの話を聞いていた―。
****
翌朝―。
カミラは仕事に行き、ヒルダは家事をしていた。食器の後片付けを済ませ、洗濯物をバスルームに干し終えた頃、ドアノッカーの音が部屋の中に響き渡った。
「きっとお兄様ね」
ヒルダはエプロンをつけたまま玄関へ向かい、ドアアイで外を確認するとやはりそこに立っていたのはエドガーだった。
ガチャリ
扉を開けるとそこにはエドガーが笑みを浮かべて立っていた。
「おはよう、ヒルダ。迎えに来たよ」
「おはようございます。エドガー様。もうすぐ家事が終わりますので少し上がってお待ちいただけますか?」
エドガーはヒルダに名前を呼ばれた事が嬉しく、笑みを浮かべるとそっとヒルダの髪に触れながら言った。
「あ、ああ…それじゃ上がらせて貰おうかな」
「はい、どうぞ上がって下さい」
ヒルダに案内されてエドガーはリビングに通されると、すでにそこにはお茶の用意がされていた。
薪ストーブの上で沸かしたお湯をポットに注ぎ入れ、ヒルダは紅茶を淹れている。
そんな姿をじっとエドガーは見つめながら、昨夜ノワールと交わした会話を思い返していた―。
カミラは早速玄関までヒルダを出迎えた。
「ただいま、遅くなってごめんなさい」
ヒルダはコートを脱ぎながらカミラに謝った。
「いえ、大丈夫です。エドガー様と会ってらしたのですよね?」
「ええ、そうなの。アルバイト先を出たところで私の仕事が終わるのを待ってらしたようなの。寒空の下で…悪いことをしてしまったわ」
「そう言えば雪になってきましたね。寒かったのではありませんか?お部屋で温かい紅茶でも飲まれますか?」
「ええ、そうね。ありがとう。部屋に荷物を置いたらすぐリビングに行くわ」
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「ええ。すぐに行くわ」
ヒルダは荷物を持って自室へ行き、カミラは紅茶を淹れにリビングへと向かった―。
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「美味しいわ…それに何だか身体もすごく温まる感じがするわ」
ヒルダはカミラが淹れてくれた紅茶を飲みながら笑みを浮かべた。
「はい、実はその紅茶にはブランデーが入っているのです」
「まぁ。そうだったの?どうりでほのかにアルコールの香りがすると思ったわ。とても美味しい…」
カミラは美味しそうに紅茶を飲むヒルダを見ながら尋ねた。
「ヒルダ様…エドガー様に…何か言われましたか?」
「え?特に何か言われたわけではないけれど…あ、そうだわ。もうお兄様では無く、名前で呼んで貰いたいと頼まれたのよ」
「名前で…ですか?」
「ええ、そうよ。後、明日は2人で一緒に出掛ける事になったの」
「そうなのですね。エドガー様は余程…」
そこまで言いかけてカミラは言葉を切った。
「余程…どうかしたの?」
「い、いえ。エドガー様はヒルダ様の事を大切に思われているのだと感じたのです」
「そうね…。私は本来ならお兄様に恨まれても良い立場なのに…。だから私はお兄様の頼みは何でも聞いてあげたいと思っているの。私はまだ一度もお兄様の役に立てたことが無かったから…」
「ヒルダ様…」
カミラは複雑な気持ちでヒルダの話を聞いていた―。
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翌朝―。
カミラは仕事に行き、ヒルダは家事をしていた。食器の後片付けを済ませ、洗濯物をバスルームに干し終えた頃、ドアノッカーの音が部屋の中に響き渡った。
「きっとお兄様ね」
ヒルダはエプロンをつけたまま玄関へ向かい、ドアアイで外を確認するとやはりそこに立っていたのはエドガーだった。
ガチャリ
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「おはよう、ヒルダ。迎えに来たよ」
「おはようございます。エドガー様。もうすぐ家事が終わりますので少し上がってお待ちいただけますか?」
エドガーはヒルダに名前を呼ばれた事が嬉しく、笑みを浮かべるとそっとヒルダの髪に触れながら言った。
「あ、ああ…それじゃ上がらせて貰おうかな」
「はい、どうぞ上がって下さい」
ヒルダに案内されてエドガーはリビングに通されると、すでにそこにはお茶の用意がされていた。
薪ストーブの上で沸かしたお湯をポットに注ぎ入れ、ヒルダは紅茶を淹れている。
そんな姿をじっとエドガーは見つめながら、昨夜ノワールと交わした会話を思い返していた―。
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