嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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第6章 14 馬車の中の3人

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 3人で馬車に乗り込むと、御者はすぐに馬車を走らせた。馬車の御者はヒルダの知らない人物だった。

(…スコットさんに最後にお別れの挨拶をしたかったわ…)

思わずため息をつくヒルダに向かい側に座るエドガーが声を掛けて来た。

「ヒルダ、大丈夫か?寒くないか?足の痛みは無いのか?」

エドガーはヒルダの体調が心配でならなかった。

「いいえ、大丈夫です。心配して頂き、ありがとうございます」

するとノワールがニヤリと笑いながら言った。

「…どうやら俺はお邪魔だったかもしれないな?俺だけ違う馬車に乗るべきだったか?」

「何を言っているのですか?そんなはずないでしょう?」

エドガーは少しだけ眉をしかめるとノワールを見た。

「ハハハッ。冗談さ。本気に取るな」

「ところでこれからどうするのですか?もうこの時間だと『ロータス』行の電車は無いはずですよ?」

エドガーは腕時計を見ながら言う。

「ああ、それなら心配するな。ホテルにはまだ空き室があったから、まだ泊まれるだけの余裕はある。俺の部屋は2人部屋だからエドガーは俺の部屋に泊まればいい。ヒルダの部屋だけ手配すればいいだろう」

ノワールはヒルダを見ながら言った。

「…どうもありがとうございます」

ヒルダが頭を下げると、ノワールは意外そうな目を向けた。

「あの…何か?」

戸惑いながら尋ねるとノワールは口を開いた。

「いや…普通なら文句の一つでも言われるはずなのに…まさかお礼を言われるとは思わなかった」

「何故文句を言うのですか?」

ヒルダは首を傾げた。

「それは当然だろう?俺のせいでヒルダは完全に両親と決別する事になってしまったのだから。普通なら責められて然りだろう?」

しかし、ヒルダは首を振った。

「いいえ、そんな事はありません。ノワール様のお陰で、お兄様は救われ…私は望まぬ結婚をお父様に強いられずにすんだのですから」

「ヒルダ…」

エドガーは悲し気にヒルダを見た。

「フフ…望まぬ結婚か…やっぱりヒルダは誰とも結婚したくはないのか?」

「兄さん、一体何をヒルダに…」

言いかけたエドガーの言葉をノワールは手で制するとヒルダに尋ねた。

「どうなんだ?ヒルダ。だが、本当は父親の命令通り、『カウベリー』の為なら父親よりも年上の貴族でも結婚しようと思っていたのじゃないか?」

「そ、それは…」

ヒルダは言いよどんだ。そう、ヒルダの愛するルドルフはもうこの世にいない。愛する人と結婚出来ないのなら…せめて父の役に立てる相手と結婚しても構わないと思っていたのは事実だ。

「成程…図星か。でも、それはある意味…結婚相手は誰でもいいと言う事になるんじゃないのか?例えば…それこそ、この俺が相手でも構わないのだろう?」

ノワールはとんでもない事を言って来た。

「え?!ノワール様?!」

ヒルダはその言葉に目を見張った。

「兄さんっ!」

エドガーも驚いてノワールを見る。

「ハハハハハ…2人共、本気にするな。冗談に決まっているだろう?」

笑うノワールを見て、ヒルダは安堵のため息をつく。

「兄さん…冗談にしては質が悪いですよ…」

エドガーは少しだけ恨みを込めた目でノワールを見た。

「すまん、悪かったな。2人を和ませようとしただけだ」

「こんな話で和めるはずないでしょう?」

エドガーの言葉にノワールは頷く。

「ああ…そうだな」

しかし、ノワールの言葉は…どこか寂し気だった―。

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