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第6章 12 家族の崩壊
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「ええ、それでお願いしますっ!」
マーガレットが叫んだ。
「な、何だって…?何を言い出すんだ?!」
ハリスはマーガレットの方を見た。
「お願いですッ!ヒルダを…ヒルダをどうか連れ出して下さいっ!」
「マーガレット!」
ハリスはマーガレットに駆け寄ると肩を掴んだ。
「自分で何を言っているのか分かっているのか?お前はわが子をこの2人に渡してしまうつもりなのか?目を覚ませ、マーガレット」
するとマーガレットは叫んだ。
「いいえ!目を覚ますのはむしろ貴方の方ですっ!」
「マ、マーガレット…」
「いくら『カウベリー』が貧しいからと言って…領民たちを救うためだと言って子供を犠牲にする親がどこにいるのですかっ?!貴方は…エドガーだけでなく、ヒルダまで売り飛ばすつもりなのですかっ?!だったら…この2人にヒルダを託すのが一番でしょう?!」
マーガレットは目に涙を浮かべながら叫んだ。
「それだけじゃありませんっ!貴方は一度ヒルダを捨てていますっ!可哀想に…その為にヒルダは感情を無くしてしまい…ようやく以前のあの子に戻れたと思えば、今度はルドルフを失ってしまいました。それでもあの子は…頑張って生きているのに…それなのに貴方は再びヒルダを捨てようとしてるじゃありませんかっ!」
「…」
マーガレットの言葉に、流石のハリスも一言も言えない。
「分かりました…では先程金貨6000枚と言いましたが…夫人のヒルダを思う気持ちに打たれました。金貨7000枚でヒルダを譲り受けましょう」
ノワールの言葉にマーガレットは涙を流しながら頷く。
「ええ…お願いします」
「兄さんっ?!義母さんまで一体何を…っ!」
エドガーは2人の会話が信じられなかった。するとマーガレットがエドガーを見ると言った。
「…ごめんなさい。エドガー。貴方を…巻き込んでしまって…。でも今からもう貴方は自由よ。何処へでも好きなところへ行っていいのよ。その代わりあの子を…ヒルダを一緒に連れて行ってあげて頂戴?」
マーガレットは涙を拭いながらエドガーに言う。ハリスの顔は最早完全に色を失っていた。
「ええ、ヒルダの事は俺たちに任せて下さい」
答えられないエドガーの代わりにノワールが返事をする。そしてエドガーに言った。
「エドガー。ヒルダのところへ行って来い。そして荷造りをするんだ。今日中にここを出るぞ」
最早主導権は全てノワールの手の中にあった。
「…わ、分かりました…」
エドガーは青ざめた顔のまま、ふらりと部屋を出るとヒルダの部屋を目指した。
****
その頃、ヒルダは部屋で1人本を読んでいた。
コンコン
部屋の扉からノックの音が聞こえる。
「誰かしら…?」
すると扉の外からエドガーの声が聞こえた。
「ヒルダ、俺だ…少しいいか…」
「お兄様?どうぞ」
立ち上がって返事をすると、カチャリと扉が開かれエドガーがヒルダの部屋に入ってきた。その顔は…酷く青ざめていた。
「お兄様?どうなさったのですか?!」
ヒルダは驚いて駆け寄るとエドガーの前で止まった。
「お、お兄様…?」
次の瞬間―
ヒルダはエドガーに強く抱きしめられていた。
「お兄様?一体どうされたのですか?!」
戸惑いながら尋ねると、エドガーは肩を震わせながら言った。
「ヒルダ…もう俺はフィールズ家の養子じゃ無くなったんだ。今日この家を出ていくことになった。ヒルダ、お前もこの家を出ることが…さっき決定した。頼む!俺についてきてくれ…っ!」
(お、お兄様…泣いてるの…っ?!だけど…)
ヒルダは自分にすがりつくように泣くエドガーを突き放す事が出来なかった。
「はい…分かりました…」
気づけば、ヒルダはエドガーの背中に手を回し…頷いていた―。
マーガレットが叫んだ。
「な、何だって…?何を言い出すんだ?!」
ハリスはマーガレットの方を見た。
「お願いですッ!ヒルダを…ヒルダをどうか連れ出して下さいっ!」
「マーガレット!」
ハリスはマーガレットに駆け寄ると肩を掴んだ。
「自分で何を言っているのか分かっているのか?お前はわが子をこの2人に渡してしまうつもりなのか?目を覚ませ、マーガレット」
するとマーガレットは叫んだ。
「いいえ!目を覚ますのはむしろ貴方の方ですっ!」
「マ、マーガレット…」
「いくら『カウベリー』が貧しいからと言って…領民たちを救うためだと言って子供を犠牲にする親がどこにいるのですかっ?!貴方は…エドガーだけでなく、ヒルダまで売り飛ばすつもりなのですかっ?!だったら…この2人にヒルダを託すのが一番でしょう?!」
マーガレットは目に涙を浮かべながら叫んだ。
「それだけじゃありませんっ!貴方は一度ヒルダを捨てていますっ!可哀想に…その為にヒルダは感情を無くしてしまい…ようやく以前のあの子に戻れたと思えば、今度はルドルフを失ってしまいました。それでもあの子は…頑張って生きているのに…それなのに貴方は再びヒルダを捨てようとしてるじゃありませんかっ!」
「…」
マーガレットの言葉に、流石のハリスも一言も言えない。
「分かりました…では先程金貨6000枚と言いましたが…夫人のヒルダを思う気持ちに打たれました。金貨7000枚でヒルダを譲り受けましょう」
ノワールの言葉にマーガレットは涙を流しながら頷く。
「ええ…お願いします」
「兄さんっ?!義母さんまで一体何を…っ!」
エドガーは2人の会話が信じられなかった。するとマーガレットがエドガーを見ると言った。
「…ごめんなさい。エドガー。貴方を…巻き込んでしまって…。でも今からもう貴方は自由よ。何処へでも好きなところへ行っていいのよ。その代わりあの子を…ヒルダを一緒に連れて行ってあげて頂戴?」
マーガレットは涙を拭いながらエドガーに言う。ハリスの顔は最早完全に色を失っていた。
「ええ、ヒルダの事は俺たちに任せて下さい」
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「エドガー。ヒルダのところへ行って来い。そして荷造りをするんだ。今日中にここを出るぞ」
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「…わ、分かりました…」
エドガーは青ざめた顔のまま、ふらりと部屋を出るとヒルダの部屋を目指した。
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コンコン
部屋の扉からノックの音が聞こえる。
「誰かしら…?」
すると扉の外からエドガーの声が聞こえた。
「ヒルダ、俺だ…少しいいか…」
「お兄様?どうぞ」
立ち上がって返事をすると、カチャリと扉が開かれエドガーがヒルダの部屋に入ってきた。その顔は…酷く青ざめていた。
「お兄様?どうなさったのですか?!」
ヒルダは驚いて駆け寄るとエドガーの前で止まった。
「お、お兄様…?」
次の瞬間―
ヒルダはエドガーに強く抱きしめられていた。
「お兄様?一体どうされたのですか?!」
戸惑いながら尋ねると、エドガーは肩を震わせながら言った。
「ヒルダ…もう俺はフィールズ家の養子じゃ無くなったんだ。今日この家を出ていくことになった。ヒルダ、お前もこの家を出ることが…さっき決定した。頼む!俺についてきてくれ…っ!」
(お、お兄様…泣いてるの…っ?!だけど…)
ヒルダは自分にすがりつくように泣くエドガーを突き放す事が出来なかった。
「はい…分かりました…」
気づけば、ヒルダはエドガーの背中に手を回し…頷いていた―。
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