嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

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第4章 16 自分のせい

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 美術館を出るとヒルダはエドガーに言った。

「お兄様、そろそろ自宅へ帰られた方が良いのではないですか?」

「いや、まだ大丈夫だろう。今夜は泊まって行く予定だから。それより足が疲れたんじゃないか?この美術館には喫茶店が併設してあるんだ。そこへ一緒に行こう」

エドガーは笑顔でヒルダに言う。

「ですが…」

ヒルダは気がかりだった。いくら何でもこんなに長い時間戻らなくても良いのだろうか…?と。何しろ本日はエドガーの母の誕生パーティで家族が集まったのだ。久しぶりの一家団欒をきっと母親は待ち望んでいたに違いない。なのに全く場違いな…それどころかハミルトン一族が恨んでいるフィールズ家の自分が来てしまったのだ。

(きっとさぞかし皆さんは気分を害されたに違いないわ…)

けれど…。

ヒルダはそっとエドガーを見ると、その瞳は悲し気に揺れていた。

「駄目か…?」

(お兄様は私に取って大切な方…悲しませるわけにはいかないわ…)

「分りました。では後少しなら」

俯き加減で言うとエドガーに安堵の表情が浮かんだ。

「良かった…それじゃ行こう」

「はい」

そしてヒルダはエドガーに連れられて2人は喫茶店へ向かった―。


 2人がやってきた喫茶店は美術館に隣接するように建てられていた大きなガラス窓が特徴の喫茶店だった。天井も一部はガラスで出来ていて、上を見上げると青空が見える。

「素敵な喫茶店ですね」

ヒルダが言うと、エドガーは上機嫌で答えた。

「ここの喫茶店は俺が好きな店なんだ。実家に帰省すると時々ここへ1人で来るんだよ。何より駅から近いのがいい」

「そうなんですね」

「好きな物を頼んでいいぞ?ケーキと紅茶なんてどうだろう?」

エドガーはヒルダにメニューを差し出しながら尋ねて来た。

「お兄様は何にするのですか?」

「俺か?そうだな…コーヒーとチーズケーキにしようかな?ヒルダはどうする?」

「私は紅茶とラズベリーパイにします」

「よし、それじゃ注文しようか」

エドガーは右手をサッとあげるとすぐにウェイトレスがオーダーを取りにやって来た。そしてエドガーがウェイトレスにメニューを注文している姿をそっと見ながらヒルダは思った。

(紅茶とケーキを頂いたらすぐに帰りましょう…)


30分後―

「ヒルダ、美味しかったか?」

コーヒーを飲み終えたエドガーが尋ねて来た。

「ええ。とても美味しかったです。それではお兄様。私はもう帰ろうと思います」

「そう…なのか?」

「はい。もう午後1時を過ぎていますし…流石にお兄様ももう帰らないとまずいと思いますが?」

「しかし…」

尚も言いよどむエドガーにヒルダは言った。

「私はお兄様が心配なのです。あまり遅い時間に帰ると家族の方々から責められるのではないですか?何しろ私はフィールズ家の人間でノイマン家の人達からは良く思われていませんから」

「けど、それはヒルダのせいじゃ…」

「いいえ、私のせいなのです。そもそも私が怪我をしなければ…お父様の望む通りの方の元へ嫁ぐ事が出来たでしょうし、ルドルフだって死ぬようなことは…」

そこまで言うとヒルダは声を詰まらせた。

(ヒルダ…俺の今していることはヒルダを困らせているだけなのか…?)

「わ、分ったよ…それじゃ、駅に向かうか?」

表情を強張らせながらエドガーはヒルダに尋ねた。

「はい」

ヒルダが頷くと2人は席を立った。

そして会計でエドガーがお金を支払い、2人は喫茶店を後にした―。

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