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第4章 12 家族の揉め事
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「ヒルダは何も悪くない。俺が自分から望んでフィールズ家に養子に行ったんだ。養子縁組の話がフィールズ家から持ち出されたとき…決して強要はされなかっただろう?それに誰もが反対しなかったじゃないか」
エドガーの言葉にデイビットは反論した。
「当り前だ!それは次期当主をお前にするとハリス氏が言ってきたからだろう?だが、結局お前は金で買われたようなものだったじゃないか!大学進学もさせて貰えず…挙句にあんな年増女を嫁にしなくてはならなくなったのも!」
「やめて!デイビットッ!」
ローラが悲痛な声で叫ぶ。
「それだって全て俺が悪かったんだ。最初に婚約者だったアンナ嬢は俺よりも年下で…とても可愛らしい少女だった。だが、俺は彼女を傷つけてしまったせいで婚約破棄になってしまった。だから…」
エドガーは項垂れた。
「エドガー…」
ノワールはエドガーに近付き、肩に触れるとデイビットを見た。
「兄さん。俺はエドガーを責めたてる為にヒルダをここへ連れてきたわけじゃないんだよ。エドガーがヒルダに会いたがっていたから、強引に俺がここへヒルダを連れて来たのさ」
「しかし…デイビットがヒルダさんの事を良く思っていなかったのは知っていただろう?」
父親が口を開いた。
「え、ええ…そうよ。私個人としては…ヒルダさんには何も思う処が無いけれど、やはりハリス氏の事は関わりたくはないわ」
母親も苦し気に言う。
(やっぱり…私は来てはいけなかったのだわ。もうお兄様にも会えたことだし、目的は果たせたから帰りましょう。でも、プレゼントは…)
その時、こちらをじっと見ているノワールと視線が合った。
(そうだわ。大学でノワール様にプレゼントを託して、後で渡して貰いましょう)
そこでヒルダは言った。
「あ、あの…私はもうこれで失礼します」
「え?ヒルダッ?!」
エドガーが悲しげな顔でヒルダを見た。
(そんな…もう帰ってしまうのかっ?!)
「ああ。さっさと帰ってくれ。フィールズ家の人間となんか仲良くやってられないからな。目障りだから早く消えろ」
「兄さん。それはいくら何でも言い過ぎだ」
意外な事にノワールがヒルダをかばう発言をした。それだけではない。ヒルダに近付き、肩を抱き寄せると言った。
「それに彼女は俺の大切な後輩なんだ。これ以上ヒルダの心を傷つけないでくれ」
「に、兄さんっ!」
エドガーの顔が青ざめた。
(ま、まさか…兄さんとヒルダは恋人同士だったのか?)
ヒルダの両親もデイビットもローラも驚きの目でヒルダ達を見ている。しかし、一番驚いていたのはヒルダだった。
(ノワール様…何故?!大学では冷たい態度ばかり取っているのに…何故この場で、しかもよりにもよってお兄様の前でそんな誤解されるような発言をするなんて…!)
ヒルダにはノワールが何を考えているのかさっぱり理解出来なかった。ただ分るのは今の発言でエドガーが酷くショックを受けていると言う事だった。エドガーは顔面蒼白でヒルダを見つめている。その様子から分ってしまった。エドガーがまだ自分の事を愛していると言う事に。
「ノワール!お前…何時の間にそんな関係になったんだ?!俺は…絶対にフィールズ家の人間は認めないからな!」
怒りをぶつけるデイビットについに父親が口を挟んできた。
「…よさないか。デイビット」
そしてデイビットを見ると言った。
「お前が自分を責めている事はよく分っている。長男なのに…この状況をどうする事も出来なかった事で苦しんでいると言う事位な」
「父さん…!お、俺は…」
そこで言葉を切ったデイビットは項垂れた。
「あの…それでは私はこれで失礼します」
そしてノワールを見た。
「もう…いいですよね…?」
ヒルダの悲しげな顔に一瞬ノワールはハッとした顔になった。
「あ、ああ…1人で帰れるか?」
「はい、外に出て辻馬車を拾いますから」
そしてその場にいる全員にヒルダは言った。
「本当に…申し訳ございませんでした。フィールズ家の者として謝罪させて下さい」
しかし、ヒルダの言葉に返事をする者はいなかった。全員が気まずそうにしている。
ヒルダは頭を下げて背を向けて去ろうとした時…。
「ヒルダッ!待ってくれ!」
エドガーが背後から声を掛けて来た―。
エドガーの言葉にデイビットは反論した。
「当り前だ!それは次期当主をお前にするとハリス氏が言ってきたからだろう?だが、結局お前は金で買われたようなものだったじゃないか!大学進学もさせて貰えず…挙句にあんな年増女を嫁にしなくてはならなくなったのも!」
「やめて!デイビットッ!」
ローラが悲痛な声で叫ぶ。
「それだって全て俺が悪かったんだ。最初に婚約者だったアンナ嬢は俺よりも年下で…とても可愛らしい少女だった。だが、俺は彼女を傷つけてしまったせいで婚約破棄になってしまった。だから…」
エドガーは項垂れた。
「エドガー…」
ノワールはエドガーに近付き、肩に触れるとデイビットを見た。
「兄さん。俺はエドガーを責めたてる為にヒルダをここへ連れてきたわけじゃないんだよ。エドガーがヒルダに会いたがっていたから、強引に俺がここへヒルダを連れて来たのさ」
「しかし…デイビットがヒルダさんの事を良く思っていなかったのは知っていただろう?」
父親が口を開いた。
「え、ええ…そうよ。私個人としては…ヒルダさんには何も思う処が無いけれど、やはりハリス氏の事は関わりたくはないわ」
母親も苦し気に言う。
(やっぱり…私は来てはいけなかったのだわ。もうお兄様にも会えたことだし、目的は果たせたから帰りましょう。でも、プレゼントは…)
その時、こちらをじっと見ているノワールと視線が合った。
(そうだわ。大学でノワール様にプレゼントを託して、後で渡して貰いましょう)
そこでヒルダは言った。
「あ、あの…私はもうこれで失礼します」
「え?ヒルダッ?!」
エドガーが悲しげな顔でヒルダを見た。
(そんな…もう帰ってしまうのかっ?!)
「ああ。さっさと帰ってくれ。フィールズ家の人間となんか仲良くやってられないからな。目障りだから早く消えろ」
「兄さん。それはいくら何でも言い過ぎだ」
意外な事にノワールがヒルダをかばう発言をした。それだけではない。ヒルダに近付き、肩を抱き寄せると言った。
「それに彼女は俺の大切な後輩なんだ。これ以上ヒルダの心を傷つけないでくれ」
「に、兄さんっ!」
エドガーの顔が青ざめた。
(ま、まさか…兄さんとヒルダは恋人同士だったのか?)
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(ノワール様…何故?!大学では冷たい態度ばかり取っているのに…何故この場で、しかもよりにもよってお兄様の前でそんな誤解されるような発言をするなんて…!)
ヒルダにはノワールが何を考えているのかさっぱり理解出来なかった。ただ分るのは今の発言でエドガーが酷くショックを受けていると言う事だった。エドガーは顔面蒼白でヒルダを見つめている。その様子から分ってしまった。エドガーがまだ自分の事を愛していると言う事に。
「ノワール!お前…何時の間にそんな関係になったんだ?!俺は…絶対にフィールズ家の人間は認めないからな!」
怒りをぶつけるデイビットについに父親が口を挟んできた。
「…よさないか。デイビット」
そしてデイビットを見ると言った。
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「父さん…!お、俺は…」
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「本当に…申し訳ございませんでした。フィールズ家の者として謝罪させて下さい」
しかし、ヒルダの言葉に返事をする者はいなかった。全員が気まずそうにしている。
ヒルダは頭を下げて背を向けて去ろうとした時…。
「ヒルダッ!待ってくれ!」
エドガーが背後から声を掛けて来た―。
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