嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

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第3章 15 ゼミに入りたい理由 

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 その小説はヒルダが以前から読んでみたいと思っていた本だった。ルドルフと恋人同士だった頃…お互い好きな小説の話をした時に、ルドルフが口にしたのがこの小説だった。歴史小説で貧しい国を立て直したある国王の話…。

(こんな所にあったのね)

ヒルダが手に取った時、ノワールが声を掛けてきた。

「へ~…意外だな」

「え?」

ヒルダが顔を上げてノワールを見ると、彼はじっとヒルダを見つめている。そして言った。

「てっきり君は恋愛小説しか興味が無いと思っていたよ」

その言い方は…何処かヒルダを見下しているかのように感じた。

(やっぱりノワール様は私の事が気に入らないのね…)

「この小説…以前から興味が合ったのです。読んでも構いませんか?」

「別に好きにするがいいさ」

ノワールの許可を貰ったヒルダは早速本を持って一心不乱に読んでいるドロシーの隣に座ると、パラリと本をめくった。


そしてしばらくの間、3人は無言で本を読み続けた。部屋の中に響くのは頁をめくる音とカチコチと規則的になっている時計の音のみだった。
とても静かで穏やかな時間が流れていた…その時―。


カチャリと扉が開かれ、エーベルバッハ教授が本を小脇に現れた。

「いや~…遅くなって済まなかった…うん?君たちは誰かね?」


エーベルバッハ教授は教室にいたヒルダとドロシーを見て首を傾げた。

「教授、彼女たちは新入生でこのゼミに入りたいそうですよ」

パタンと本を閉じるとノワールが言った。

「ゼミの希望者…?」

教授はその言葉にヒルダとドロシーを見た。

「はい。私はドロシー・ノエルと申します。是非エーベルバッハ先生のゼミに入りたいと思ってうかがいました。よろしくお願い致します」

ペコリと頭を下げる。

「ヒルダ・フィールズと申します。私も先生のゼミを希望しております。どうぞ宜しくお願い致します」

ヒルダも丁寧に頭を下げる。

「そうですか。君たちは私のゼミに入りたい希望者なのですか」

エーベルバッハ教授は空いている席に座り、ヒルダとドロシーを交互に見た。

「何故、2人は私のゼミに入りたいのか教えて頂けますか?」

すると先に口を開いたのはドロシーだった。

「はい。私は小学校の先生になりたいのです。教授の授業はとても人を惹きつける内容でした。私も教授のように子どもたちの心を惹きつけるような授業が出来る先生になりたいからです」

ドロシーの話が終わると次はヒルダの番だった。

「私は絵本作家になりたくて、文学部に入学しました。子供から大人まで幅広い年齢の人達に読み継がれるような絵本を描きたくてここで学びたいと思いました」

「そうですか…2人の熱意は伝わりました。今の所まだ新入生のゼミに入りたい希望者はいないので大丈夫ですよ。今年は5名までなら希望者を受け入れようかと思っていたので」

そしてエーベルバッハ教授はノワールを見ると言った。

「ノワール、君はこの2人をどう思う?君はこのゼミの部長だろう?」

「「え?」」

ヒルダとドロシーは驚いてノワールを見た。

(そんな…ノワール様が部長だったなんて…だとしたら私は入れないかも知れないわ…)

ヒルダは自分がノワールに嫌われているので絶対断られるかと思っていたのだが…。

「別に俺は何も依存はないですよ。いいんじゃないですか?」

対して気のない返事でノワールは返事をした。

「え…いいんですか…?」

ヒルダは目を見開いてノワールを見た。

「別に俺は構わないさ。俺はもう行くよ。そろそろ次の授業が始まるからね。では教授、失礼します」

ノワールはそれだけ言うと、足元に置いてあったリュックを持つと教室を出ていってしまった―。



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