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第3章 9 バスの中で
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「え?!エドガー様の実のお兄様にお会いになったのですかっ?!」
カミラは驚きのあまり、手にしていたフォークを取り落としそうになった。
「ええ。そうなの…まさか大学で会う事になるとは思わなかったわ…」
ヒルダは溜息をつきながら魚の骨をフォークとナイフで取り除いている。
「…どんな方でしたか?」
カミラが躊躇いがちに尋ねて来た。
「とても美しい顔立ちをしていたわ。お兄様と…よく似ていたわ」
「そうでしたか。その方はエドガー様のお兄様ですから、ヒルダ様よりは最低2歳は年齢が離れていることになりますね」
「そうね…何年生で何所の学部に所属しているか少しも分らないけれど…今日新しく友人になった人にも言われたの。関わらない方がいいって。だから今後は校内で会ったら身を隠す様にするわ。ノワール様が大学を卒業するまではね。あの方には、はっきり私の事が嫌いだと言われてしまったし」
「ヒルダ様…」
悲し気な顔で話すヒルダを見てカミラは胸を痛めた。
(大学に入学早々…まさかエドガー様のお兄様に偶然会ってしまうなんて…お気の毒なヒルダ様…)
そんなヒルダを元気づけようとカミラは明るい声で言った。
「そうそう、ヒルダ様。実はデザートにカスタードパイを焼いたのです。一口サイズに焼き上げたので、食後にお茶と一緒に頂きませんか?」
「本当?それは美味しそうね。今から楽しみだわ」
ヒルダは笑みを浮かべてカミラを見た。
そして大学生活1日目がゆっく終わりを告げていく―。
****
翌朝―
「それじゃ行って来るわね」
玄関に立つヒルダは見送りに来ていたカミラに声を掛けた。
「はい。行ってらっしゃいませ」
「ええ」
ヒルダは笑みを浮かべ、カミラに手を振り玄関を後にした。杖をついてアパートメントを出ると、すぐ正面のバス停には既に人が並んでいた。ヒルダは列に並ぶとバスを静かに待ちながら、ノワールの事を考えていた。
(昨日はあんなことがあったから…どうか今日はあの方に会いませんように…)
やがてバスが到着し、人々はぞろぞろと乗り込んでいく。ヒルダも乗り込んだが、あいにく座席は既に埋まっていた。しかも誰も杖をついているヒルダに席を譲ろうとする人物はいない。
(仕方ないわね…とりあえず吊革に掴まっていましょう)
ヒルダが吊革につかまった時、突然背後から肩を叩かれた。
「え?」
何事かと思って、振り向くとそこにはノワールが立っていた。
「ノ、ノワール様‥!」
(そんな…まさかこの方が同じ『ロータス』に住んでいたなんて…っ!)
何て酷い偶然なのだろう…ヒルダが俯いたとき、ノワールが言った。
「何をしているんだ?席を代わってやろうとしているんだから早く来いよ」
「え?」
見るとノワールの背後に空席があり、そこには荷物が乗せられていた。
「ヒルダの為に座席を確保してあるのだから早く座ってくれ」
焦れた様に言われ、ノワールに慌てて返事をした。
「は、はい」
ノワールが座っていた席に移動すると、自分の荷物を黙ってどかしてヒルダに言った。
「ほら、座れよ」
「ありがとうございます…」
ヒルダが着席すると、ノワールはすぐに場所を移動してしまった。
(よ、良かったわ…場所を移動してくれて…)
でも…ヒルダは思った。
ノワールはひょっとすると気を遣って席を移動してくれたのではないだろうか―と。
カミラは驚きのあまり、手にしていたフォークを取り落としそうになった。
「ええ。そうなの…まさか大学で会う事になるとは思わなかったわ…」
ヒルダは溜息をつきながら魚の骨をフォークとナイフで取り除いている。
「…どんな方でしたか?」
カミラが躊躇いがちに尋ねて来た。
「とても美しい顔立ちをしていたわ。お兄様と…よく似ていたわ」
「そうでしたか。その方はエドガー様のお兄様ですから、ヒルダ様よりは最低2歳は年齢が離れていることになりますね」
「そうね…何年生で何所の学部に所属しているか少しも分らないけれど…今日新しく友人になった人にも言われたの。関わらない方がいいって。だから今後は校内で会ったら身を隠す様にするわ。ノワール様が大学を卒業するまではね。あの方には、はっきり私の事が嫌いだと言われてしまったし」
「ヒルダ様…」
悲し気な顔で話すヒルダを見てカミラは胸を痛めた。
(大学に入学早々…まさかエドガー様のお兄様に偶然会ってしまうなんて…お気の毒なヒルダ様…)
そんなヒルダを元気づけようとカミラは明るい声で言った。
「そうそう、ヒルダ様。実はデザートにカスタードパイを焼いたのです。一口サイズに焼き上げたので、食後にお茶と一緒に頂きませんか?」
「本当?それは美味しそうね。今から楽しみだわ」
ヒルダは笑みを浮かべてカミラを見た。
そして大学生活1日目がゆっく終わりを告げていく―。
****
翌朝―
「それじゃ行って来るわね」
玄関に立つヒルダは見送りに来ていたカミラに声を掛けた。
「はい。行ってらっしゃいませ」
「ええ」
ヒルダは笑みを浮かべ、カミラに手を振り玄関を後にした。杖をついてアパートメントを出ると、すぐ正面のバス停には既に人が並んでいた。ヒルダは列に並ぶとバスを静かに待ちながら、ノワールの事を考えていた。
(昨日はあんなことがあったから…どうか今日はあの方に会いませんように…)
やがてバスが到着し、人々はぞろぞろと乗り込んでいく。ヒルダも乗り込んだが、あいにく座席は既に埋まっていた。しかも誰も杖をついているヒルダに席を譲ろうとする人物はいない。
(仕方ないわね…とりあえず吊革に掴まっていましょう)
ヒルダが吊革につかまった時、突然背後から肩を叩かれた。
「え?」
何事かと思って、振り向くとそこにはノワールが立っていた。
「ノ、ノワール様‥!」
(そんな…まさかこの方が同じ『ロータス』に住んでいたなんて…っ!)
何て酷い偶然なのだろう…ヒルダが俯いたとき、ノワールが言った。
「何をしているんだ?席を代わってやろうとしているんだから早く来いよ」
「え?」
見るとノワールの背後に空席があり、そこには荷物が乗せられていた。
「ヒルダの為に座席を確保してあるのだから早く座ってくれ」
焦れた様に言われ、ノワールに慌てて返事をした。
「は、はい」
ノワールが座っていた席に移動すると、自分の荷物を黙ってどかしてヒルダに言った。
「ほら、座れよ」
「ありがとうございます…」
ヒルダが着席すると、ノワールはすぐに場所を移動してしまった。
(よ、良かったわ…場所を移動してくれて…)
でも…ヒルダは思った。
ノワールはひょっとすると気を遣って席を移動してくれたのではないだろうか―と。
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