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第3章 3 新しい友達
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その頃、ヒルダは大学のオリエンテーションを受ける為に教室へ移動していた。ヒルダの通う文学部は比較的女子が多い学部ではあったが、この時代はまだまだ女性の社会進出も低く、学問を身につける女性も少なかったので女子学生は1クラス40人中、10人にも満たなかった。ヒルダはそんな彼等の間に混じりながら、足を引きずりながら歩いていた。
(文学部と言っても…こんなに女子学生の数が少ないのね…これでは他の学部ではもっと少ないか、もしくは1人もいないかもしれないわ…)
だからこそ、ヒルダの姿はより一層目立っていた。人目を引くほどの美貌…それなのに足を引きずって歩く姿は男子学生たちの視線を捉えて離さなかった。
「おい…見てみろよ。ものすごい美人だ…」
「だけど可哀想に…足を引きずっているぞ」
「だから大学に入学したのか?」
「あの足ではいくら外見が良くてもな…」
彼等はヒソヒソ声で話しているのだろうが、全てヒルダの耳に届いていた。しかし、ヒルダは普段から人の悪意的な視線や自分に向けられる心ない言葉には慣れていた。
(別に気にすることは無いわ…堂々としていればいいのだから…)
ヒルダは感情を表に出さず、男子学生たちの間に混じって教室へ向かった。
ヒルダはAクラスになった。階段状になっている教室へ入ると、机の席は半分ほどが埋まっている。
(確か席は決まっていないから何処に座っても良かったのよね)
ヒルダは窓際の日差しがよく差し込む真ん中の席に座り、筆記用具を出していると不意に声を掛けられた。
「ねぇ、隣に座ってもいい?」
顔を上げるとそこには栗毛色のロングヘアの女子学生が立っていた。
「ええ、どうぞ」
「ありがとう」
女子学生は笑みを浮かべるとヒルダの右側に座ると話しかけてきた。
「私はドロシー・ノエルというの。貴女の名前を教えてくれる?」
「私はヒルダ・フィールズよ」
「ねぇ、ヒルダと呼んでもいい?」
「ええ、それじゃ私はドロシーと呼ばせてもらうわ。構わないかしら?」
「勿論よ!ねぇ、早速だけど私と友達になってくれないかしら?文学部だから女子学生が半分くらいはいると思っていたのに、周りを見れば男子学生ばかりなんだもの」
ドロシーは教室をグルリと見渡しながら言う。
「ええ、確かにそうよね」
ヒルダも教室を見渡したが、女子学生は数えるほどしかいない。しかも彼女たちは既に男子学生たちに囲まれて楽し気に会話している。それを見たドロシーは眉をしかめると言った。
「嫌だわ…ああいうの。私は本気で勉強したくて両親を説得して大学へ入学したっていうのに…あんなふうに男子学生に囲まれて楽しそうにしているのを見るのって…。だから女子学生って舐められるのよ。学問なんか身につけずに大人しく嫁にいっていばいいと言われるのだわ。」
「ドロシー…」
ヒルダは妙に熱く語るドロシーを不思議に思った。するとヒルダの視線に気づいたドロシーが慌てたように言った。
「あ、ごめんなさい。実は私には3人の兄たちがいるのだけど…全員が私が大学に入ることを反対したのよ。女のくせに生意気だって。だからつい、熱くなっちゃったわ」
ぺろりと舌を出して照れ笑いするドロシーを見てヒルダは思った。
彼女となら親友になれるかもしれない―と。
(文学部と言っても…こんなに女子学生の数が少ないのね…これでは他の学部ではもっと少ないか、もしくは1人もいないかもしれないわ…)
だからこそ、ヒルダの姿はより一層目立っていた。人目を引くほどの美貌…それなのに足を引きずって歩く姿は男子学生たちの視線を捉えて離さなかった。
「おい…見てみろよ。ものすごい美人だ…」
「だけど可哀想に…足を引きずっているぞ」
「だから大学に入学したのか?」
「あの足ではいくら外見が良くてもな…」
彼等はヒソヒソ声で話しているのだろうが、全てヒルダの耳に届いていた。しかし、ヒルダは普段から人の悪意的な視線や自分に向けられる心ない言葉には慣れていた。
(別に気にすることは無いわ…堂々としていればいいのだから…)
ヒルダは感情を表に出さず、男子学生たちの間に混じって教室へ向かった。
ヒルダはAクラスになった。階段状になっている教室へ入ると、机の席は半分ほどが埋まっている。
(確か席は決まっていないから何処に座っても良かったのよね)
ヒルダは窓際の日差しがよく差し込む真ん中の席に座り、筆記用具を出していると不意に声を掛けられた。
「ねぇ、隣に座ってもいい?」
顔を上げるとそこには栗毛色のロングヘアの女子学生が立っていた。
「ええ、どうぞ」
「ありがとう」
女子学生は笑みを浮かべるとヒルダの右側に座ると話しかけてきた。
「私はドロシー・ノエルというの。貴女の名前を教えてくれる?」
「私はヒルダ・フィールズよ」
「ねぇ、ヒルダと呼んでもいい?」
「ええ、それじゃ私はドロシーと呼ばせてもらうわ。構わないかしら?」
「勿論よ!ねぇ、早速だけど私と友達になってくれないかしら?文学部だから女子学生が半分くらいはいると思っていたのに、周りを見れば男子学生ばかりなんだもの」
ドロシーは教室をグルリと見渡しながら言う。
「ええ、確かにそうよね」
ヒルダも教室を見渡したが、女子学生は数えるほどしかいない。しかも彼女たちは既に男子学生たちに囲まれて楽し気に会話している。それを見たドロシーは眉をしかめると言った。
「嫌だわ…ああいうの。私は本気で勉強したくて両親を説得して大学へ入学したっていうのに…あんなふうに男子学生に囲まれて楽しそうにしているのを見るのって…。だから女子学生って舐められるのよ。学問なんか身につけずに大人しく嫁にいっていばいいと言われるのだわ。」
「ドロシー…」
ヒルダは妙に熱く語るドロシーを不思議に思った。するとヒルダの視線に気づいたドロシーが慌てたように言った。
「あ、ごめんなさい。実は私には3人の兄たちがいるのだけど…全員が私が大学に入ることを反対したのよ。女のくせに生意気だって。だからつい、熱くなっちゃったわ」
ぺろりと舌を出して照れ笑いするドロシーを見てヒルダは思った。
彼女となら親友になれるかもしれない―と。
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