嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

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第2章 8 エドガーの結婚式 6

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「ヒルダ様、大丈夫でしたか?遅くなって申し訳ございませんでした」

「…怖かったわ。あのデイブさんという人…やたらと話しかけてくるから…」

ヒルダは安堵のため息を付きながら言った。

「申し訳ございませんでした。私の配慮が足りずに…ヒルダ様を1人にしてしまった為に怖い目に遭わせてしまいました」

「いいえ、でもお兄様が来てくれたから大丈夫だったわ。デイブさんの奥様を結婚記念パーティーに呼んで下さっていのよ」

「…そうだったのですね」

その時、ヒルダはカミラが両手に飲み物の入ったグラスを持っていることに気が付いた。

「カミラ、その飲み物…くれるかしら?」

「あ、どうぞ」

カミラからグラスを受け取り、ヒルダは飲み物を口にした。

「…美味しい。緊張で喉がカラカラだったから…」

「そうでしたか…所で今夜は何処に宿泊されますか?マーガレット様はフィールズ家に泊まって頂くことを望んでいらっしゃるのですが…」

するとヒルダは首を振った。

「駄目…それは出来ないわ。」

「ヒルダ様…何故ですか?」

「だって…お兄様が…お屋敷にいるから…」

そこでカミラは先程マーガレットから聞いた話を口にした。

「その事ならご心配には及びません。エドガー様は今日から新婚旅行に旅立たれるそうですから」

「まぁ…そうだったの?」

「はい、なので…エドガー様の事は気になさる事はありません」

「そう…ね…。なら一度パーティーが終わった後、ホテルに戻ってチェックアウトを済ませればいいわね」

「はい、そうですね」

ヒルダは再びグラスの中の飲み物を口にいれた―。



****

 午後3時―

賑やかな結婚パーティーが無事終了し、新郎と新婦は一足先にパーティー会場を出ることになった。

「皆さん、本日は私とエレノアの為に式に参加していただき、ありがとうございました」

エドガーがエレノアと共に馬車の前に立ち、挨拶をしている。ヒルダはその様子をカミラと2人、離れた場所でじっと見つめていた。なるべくエドガーの視線から外れた場所にいるのが…エドガーの為だと思ったからだ。やがて、挨拶を終えたエドガーはエレノアの手を取り、馬車に乗り込んだ。それを人々が手を振って歓声を上げる。エレノアはニコニコしながら手を振っているが、エドガーは落ち着かない様子で周囲をキョロキョロと見渡している。その様子を見てカミラはピンときた。

(ひょっとすると…ヒルダ様を探しているのかも…)

「ヒルダ様…」

カミラが声を掛けるとヒルダが言った。

「カミラ、お兄様が…もう出発されるわ。私達もホテルへ戻りましょう?」

「そうですね。ヒルダ様…」

ヒルダはエドガーの馬車に背を向け。足を引きずりながらゆっくりとその場を去っていく。カミラはヒルダの後を追い…何気なくエドガーの乗る馬車を振り返り、ハッとなった。そこには悲しげな顔でヒルダが立ち去る様子を見つめるエドガーの姿があったからだ。

(ひょっとすると…状況によっては…エドガー様とヒルダ様が結ばれる未来があったのかもしれないわ…)

カミラはそう、思うのだった―。
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