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第5章 5 それぞれのクリスマス 1
しおりを挟む ロータスにて―
「はぁ…」
今日はクリスマス。
昼休み、アレンは1人誰もいない診察室でため息をついていた。それを心配そうに陰から見つめる看護師のレイチェチルと事務員のリンダ。
「アレン先生、もう重症ね…」
レイチェルがボソリと言った。
「ええ、でも無理も無いわ…。だってまさかヒルダちゃんの恋人が殺されてしまうなんて…」
リンダは胸を押さえながら言う。
「あまりにもヒルダちゃんが可哀想すぎるわ…」
レイチェルが目頭を押さえながら鼻をすすった。
そんな2人の様子に気付くことも無くアレンは指を組んだ上に自分の額を乗せた
「ヒルダ…君は…今、何をしているんだ?大丈夫なのか…?」
アレンはポツリと呟いた。
****
それはあまりにも突然の出来事だった。午前中、いつものようにアレン達はこの診療所で患者の診察を行っていた。すると午前の受付の最終時間に初めて見る若い女性が診療所を訪れたのだ。
「本日はいかがされましたか?」
リンダは初めて見る人物だったので、新規の患者だと思って尋ねた。
「いいえ、患者ではありません。私はこちらでお世話になっておりますヒルダの姉のカミラと申します。実は妹ヒルダの事で大事な話があり、こちらに伺いました」
「まあ、貴女がヒルダちゃんのお姉さんだったのですね?今受付している患者様の診察が終わるまでお待ちいただけますか?」
リンダが言うと、カミラは頷きながら言う。
「ええ。そのつもりで時間を合わせて参りました。お待ちしておりますのでお構いなく」
そしてカミラは待合室の隅の椅子に腰かけるとじっと前を向いていた。その様子を眺めていたリンダは嫌な予感がした。
(何だかあの人様子がおかしいわ。まさかヒルダちゃんの身に何かあったんじゃ…)
そして次の患者を診察室に呼ぶ前に、リンダは素早くアレンの元へ向かった。
「アレン先生」
「ん?何だ?リンダ。次の患者はどうした?」
アレンは次の患者のカルテを広げながらリンダを見た。
「ええ。すぐにお呼びしますが、その前にアレン先生にご報告があるのです」
「報告…?何だ?」
「はい、実はヒルダちゃんのお姉さんが待合室で待っているのです。ヒルダちゃんの事で大事な話があるそうです」
「え?ヒルダの?」
「はい、それが…お姉さんの様子がおかしいんです。顔色が真っ青で…何かあったのでは…」
「な、何だって?!それではすぐに診察を終わらせないと!」
するとそこへ看護婦のレイチェルがやってきた。
「アレン先生、そんな事言って手抜きの診察はしてはいけませんよ」
「な、何を言うんだ?仮にも俺は医者だ。手抜き診察などるはずがないだろう?」
そしてリンダを見ると言った。
「リンダ!大至急次の患者を呼ぶんだ!時間を掛けずに手早く診察を終わらせるぞ!」
その言葉にレイチェルとリンダは顔を見合わせ、ため息をつくのだった―。
午後12時半―
カミラが診療所を尋ねて40分後、ようやく全ての患者の診察が終了した。
待合室に残っているのはカミラ1人である。
「どうもお待たせいたしました。この診療所の医者をしておりますアレン・クラインと申します」
白衣を着たまま、アレンはカミラの前に姿を現し挨拶をした。
「初めまして、ヒルダの姉のカミラと申します。いつも妹がお世話になっております」
カミラは立ち上がると挨拶をした。
「どうぞ、掛けて下さい」
「はい、失礼致します」
カミラは頭を下げると再び着席した。アレンもカミラの向かい側に座るとカミラに尋ねた。
「ヒルダさんの事でお話があると言う事なのですが‥どうかしましたか?」
アレンは内心の動揺を隠しながらカミラに尋ねた。
「は、はい。実はヒルダは…」
そして、アレンはカミラから衝撃的な話を聞く事になる―。
「はぁ…」
今日はクリスマス。
昼休み、アレンは1人誰もいない診察室でため息をついていた。それを心配そうに陰から見つめる看護師のレイチェチルと事務員のリンダ。
「アレン先生、もう重症ね…」
レイチェルがボソリと言った。
「ええ、でも無理も無いわ…。だってまさかヒルダちゃんの恋人が殺されてしまうなんて…」
リンダは胸を押さえながら言う。
「あまりにもヒルダちゃんが可哀想すぎるわ…」
レイチェルが目頭を押さえながら鼻をすすった。
そんな2人の様子に気付くことも無くアレンは指を組んだ上に自分の額を乗せた
「ヒルダ…君は…今、何をしているんだ?大丈夫なのか…?」
アレンはポツリと呟いた。
****
それはあまりにも突然の出来事だった。午前中、いつものようにアレン達はこの診療所で患者の診察を行っていた。すると午前の受付の最終時間に初めて見る若い女性が診療所を訪れたのだ。
「本日はいかがされましたか?」
リンダは初めて見る人物だったので、新規の患者だと思って尋ねた。
「いいえ、患者ではありません。私はこちらでお世話になっておりますヒルダの姉のカミラと申します。実は妹ヒルダの事で大事な話があり、こちらに伺いました」
「まあ、貴女がヒルダちゃんのお姉さんだったのですね?今受付している患者様の診察が終わるまでお待ちいただけますか?」
リンダが言うと、カミラは頷きながら言う。
「ええ。そのつもりで時間を合わせて参りました。お待ちしておりますのでお構いなく」
そしてカミラは待合室の隅の椅子に腰かけるとじっと前を向いていた。その様子を眺めていたリンダは嫌な予感がした。
(何だかあの人様子がおかしいわ。まさかヒルダちゃんの身に何かあったんじゃ…)
そして次の患者を診察室に呼ぶ前に、リンダは素早くアレンの元へ向かった。
「アレン先生」
「ん?何だ?リンダ。次の患者はどうした?」
アレンは次の患者のカルテを広げながらリンダを見た。
「ええ。すぐにお呼びしますが、その前にアレン先生にご報告があるのです」
「報告…?何だ?」
「はい、実はヒルダちゃんのお姉さんが待合室で待っているのです。ヒルダちゃんの事で大事な話があるそうです」
「え?ヒルダの?」
「はい、それが…お姉さんの様子がおかしいんです。顔色が真っ青で…何かあったのでは…」
「な、何だって?!それではすぐに診察を終わらせないと!」
するとそこへ看護婦のレイチェルがやってきた。
「アレン先生、そんな事言って手抜きの診察はしてはいけませんよ」
「な、何を言うんだ?仮にも俺は医者だ。手抜き診察などるはずがないだろう?」
そしてリンダを見ると言った。
「リンダ!大至急次の患者を呼ぶんだ!時間を掛けずに手早く診察を終わらせるぞ!」
その言葉にレイチェルとリンダは顔を見合わせ、ため息をつくのだった―。
午後12時半―
カミラが診療所を尋ねて40分後、ようやく全ての患者の診察が終了した。
待合室に残っているのはカミラ1人である。
「どうもお待たせいたしました。この診療所の医者をしておりますアレン・クラインと申します」
白衣を着たまま、アレンはカミラの前に姿を現し挨拶をした。
「初めまして、ヒルダの姉のカミラと申します。いつも妹がお世話になっております」
カミラは立ち上がると挨拶をした。
「どうぞ、掛けて下さい」
「はい、失礼致します」
カミラは頭を下げると再び着席した。アレンもカミラの向かい側に座るとカミラに尋ねた。
「ヒルダさんの事でお話があると言う事なのですが‥どうかしましたか?」
アレンは内心の動揺を隠しながらカミラに尋ねた。
「は、はい。実はヒルダは…」
そして、アレンはカミラから衝撃的な話を聞く事になる―。
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