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第4章 12 ルドルフの実家で
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2人を乗せた馬車はルドルフの家族が住む屋敷に到着した。食事を御馳走になるのだからと言って馬車代を支払ったのはクロード警部補だった。
「すみません、刑事さんに馬車代を支払ってもらう事になるなんて…」
馬車から降りたルドルフは申し訳なさげに頭を下げた。
「ハハハ…何を言ってるんだい。これから君の家でお昼を御馳走になるわけだからな。大体大人がお金を支払うのは当然だろう?」
クロード警部補は笑いながら言う。
「ありがとうございます。では行きましょうか?」
ルドルフはクロード警部補を促した。
「ああ、ありがとう」
そして改めてルドルフの屋敷を眺めた。以前訪れたフィールズ家ほどではないがルドルフの屋敷もそれは立派なものだと彼は思った。
2階建ての赤レンガの大きな屋敷には部屋が幾つもあるのだろう。アーチ型の窓が並んでいる。グレーのとんがり屋根からは煙突が伸び、屋根から滑り落ちた雪が地面に落ちて雪山を作っていた。
リーン
リーン
ルドルフはエントランスに立つと、呼び鈴を引っ張った。すると…。
ガチャリ
扉が開かれ、ルドルフの母親が出迎えに現れた。
「お帰り!ルドルフッ!」
「ただいま、母さん」
ルドルフと母は親子の抱擁を済ませると、母はクロード警部補を見上げた。
「刑事さん。ようこそおいで下さいました。外は寒いでしょう、さあ中へお入り下さい。お食事の用意も出来ておりますから」
「こんにちは。どうもすみません…突然訪問してしまって」
「いいえ、そんな事はありません。さあ、どうぞ」
ルドルフの母は先頭に立って歩き出し、ルドルフとクロード警部補は後に続いた。
****
2人が通された部屋は大きな暖炉が赤々と燃えている広々としたダイニングルームだった。円卓のテーブルには既に様々な料理が並べられていた。鶏肉と野菜のハーブグリル焼きにベーコンにマッシュポテト、テーブルパンにサラダ。それは見事なものだった。
まさかこんなに豪勢な食事が用意されているとは知らず、すっかりクロード警部補は恐縮してしまった。
「本当に申し訳ありません。いきなり昼食時間に押しかけて、ご馳走になってしまうなんて…」
しかし、ルドルフは言った。
「刑事さん、別にこれくらいはいつもと変わらないので気にしないで下さい」
席に着いたルドルフに言われてクロード警部補は驚いた。
「え?これって…特別な事ではないのかい?」
するとそこへ温めたスープをトレーに乗せてルドルフの母が現れた。
「はい、実は私は料理が趣味でして…つい作りすぎてしまうんです。それにルドルフは今育ち盛りですからね…これで丁度良い位の量ですから」
言いながら2人の前にスープ皿を置いていく。
「どうぞ、ごゆっくり召し上がって行って下さいね」
ルドルフの母はそれだけ言うとダイニングルームを出て行った。2人だけで大事な話があるだろうと思い、気を利かせた母がルドルフとクロード警部補の2人きりにしたのであった。
「刑事さん、では食べましょう」
「あ、ああ。では頂こうかな?」
ルドルフに促され、クロード警部補は頷いた。
そして2人だけの食事が始まった―。
「すみません、刑事さんに馬車代を支払ってもらう事になるなんて…」
馬車から降りたルドルフは申し訳なさげに頭を下げた。
「ハハハ…何を言ってるんだい。これから君の家でお昼を御馳走になるわけだからな。大体大人がお金を支払うのは当然だろう?」
クロード警部補は笑いながら言う。
「ありがとうございます。では行きましょうか?」
ルドルフはクロード警部補を促した。
「ああ、ありがとう」
そして改めてルドルフの屋敷を眺めた。以前訪れたフィールズ家ほどではないがルドルフの屋敷もそれは立派なものだと彼は思った。
2階建ての赤レンガの大きな屋敷には部屋が幾つもあるのだろう。アーチ型の窓が並んでいる。グレーのとんがり屋根からは煙突が伸び、屋根から滑り落ちた雪が地面に落ちて雪山を作っていた。
リーン
リーン
ルドルフはエントランスに立つと、呼び鈴を引っ張った。すると…。
ガチャリ
扉が開かれ、ルドルフの母親が出迎えに現れた。
「お帰り!ルドルフッ!」
「ただいま、母さん」
ルドルフと母は親子の抱擁を済ませると、母はクロード警部補を見上げた。
「刑事さん。ようこそおいで下さいました。外は寒いでしょう、さあ中へお入り下さい。お食事の用意も出来ておりますから」
「こんにちは。どうもすみません…突然訪問してしまって」
「いいえ、そんな事はありません。さあ、どうぞ」
ルドルフの母は先頭に立って歩き出し、ルドルフとクロード警部補は後に続いた。
****
2人が通された部屋は大きな暖炉が赤々と燃えている広々としたダイニングルームだった。円卓のテーブルには既に様々な料理が並べられていた。鶏肉と野菜のハーブグリル焼きにベーコンにマッシュポテト、テーブルパンにサラダ。それは見事なものだった。
まさかこんなに豪勢な食事が用意されているとは知らず、すっかりクロード警部補は恐縮してしまった。
「本当に申し訳ありません。いきなり昼食時間に押しかけて、ご馳走になってしまうなんて…」
しかし、ルドルフは言った。
「刑事さん、別にこれくらいはいつもと変わらないので気にしないで下さい」
席に着いたルドルフに言われてクロード警部補は驚いた。
「え?これって…特別な事ではないのかい?」
するとそこへ温めたスープをトレーに乗せてルドルフの母が現れた。
「はい、実は私は料理が趣味でして…つい作りすぎてしまうんです。それにルドルフは今育ち盛りですからね…これで丁度良い位の量ですから」
言いながら2人の前にスープ皿を置いていく。
「どうぞ、ごゆっくり召し上がって行って下さいね」
ルドルフの母はそれだけ言うとダイニングルームを出て行った。2人だけで大事な話があるだろうと思い、気を利かせた母がルドルフとクロード警部補の2人きりにしたのであった。
「刑事さん、では食べましょう」
「あ、ああ。では頂こうかな?」
ルドルフに促され、クロード警部補は頷いた。
そして2人だけの食事が始まった―。
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