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第3章 1 クロード警部補
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『コックス』にある警察署、本庁―
「全く・・・。またアヘン中毒患者の事件が起こったよ・・。」
事件の後始末で事情徴収を終えたクロード警部補が先に部署に戻っていた同僚にぼやきながら上着を脱ぐとコートハンガーにかけた。
「そうだな。以前はアヘンと言えば医療用の麻酔代わりに使われていたのに最近の傾向としては快楽を求める為に使用され、今では犯罪も起きるようになったし・・。」
同僚のピエールは煙草を吸いながら言う。
「全く・・・俺は他にやらなければならない仕事があるのに・・。」
そのボヤキをピエールは聞き逃さなかった。
「ん?クロード・・お前、何か他に事件を担当していたか?」
「いや、そういうわけではないのだが・・・。」
クロードは心残りがあった。それはつい最近まで関わっていた『カウベリー』での事件である。その時・・・・。
「クロード警部補っ!お電話がはいっておりますっ!」
新人の婦人警官がクロードを呼びに駆け寄ってきた。
「電話?俺に?」
「ええ。電話をかけてきた相手はまだ17歳の少年で、名前をルドルフ・テイラーと名乗っておりますが?」
「ルドルフ・・・?何と!ルドルフ君からっ?!」
クロードは慌てて電話口に駆け寄ると、外されていた受話器を手に取った。
「もしもしっ!」
『こんにちは、刑事さん。ご無沙汰足しておりました。ルドルフです。』
電話口からルドルフの声が聞こえてきた。
「ああ。久しぶりだったね。ルドルフ君。元気だったかい?」
『はい、元気です。刑事さんもお元気そうで何よりです。』
「元気だけが取り柄だからな。そうでなければ刑事は務まらないよ。それで?君はまだ『カウベリー』にいるのかい?」
『いえ、実は僕はあの後すぐにロータスに戻ったんです。』
「え?そうなのか・・?」
(やはり、せっかく里帰りしたのに、あんな凄惨な事件が起きてしまったのだから無理も無いか・・。)
しかし、ルドルフの答えはクロードの考えとは全く違っていた。
『僕がロータスに戻ってきたのは・・会いたい人がいたからです・・・。』
「え?」
予想外の回答にクロードは戸惑った。
『僕は・・どうしても教会の火事を起こした罪を自らかぶって、故郷を追い出されてしまった愛する女性に会いたくて・・・戻ってきたんです。』
「ル、ルドルフ君・・。」
あまりの突然の話にクロードは戸惑ってしまった。
(参ったな・・事件や犯罪についての話なら得意だが・・恋愛の話になるとは・・。)
『実は、今・・ぼくはその愛する女性・・ヒルダ様とボルトの町に来ているのです。』
「え?ボルトの町・・・?確かそこは・・。」
クロードは『ボルト』の町についての情報を思い出した。その町は全体が工場で覆われたような・・工場の為に作られたような町であること。働いてる工員達の平均年齢がとても若い事・・・なぜならほとんどが過酷な労働環境のせいで辞めていくか、早死にしてしまうかのどちらかだったからだ。
「ルドルフ君・・・何故そんな町にいるんだい?少なくとも『ボルト』は君のような貴族が訪れるような町じゃないよ?あそこは治安も環境も悪いし・・何よりアヘン中毒者も溢れているような場所だ。」
『ええ・・そのようですね。でも・・僕はどうしても来なければならなかったんです。ここには教会の焼失事件に関わった2人の同級生がいたからです。僕は彼らに会いに来て・・・犯人はグレースだったという証言を得ることが出来たんです。そして・・そのうちの1人が結核にかかっていて・・あまり長く持たないかもしれないんです・・。』
「え・・?」
クロードはルドルフの言葉に息を飲んだ―。
「全く・・・。またアヘン中毒患者の事件が起こったよ・・。」
事件の後始末で事情徴収を終えたクロード警部補が先に部署に戻っていた同僚にぼやきながら上着を脱ぐとコートハンガーにかけた。
「そうだな。以前はアヘンと言えば医療用の麻酔代わりに使われていたのに最近の傾向としては快楽を求める為に使用され、今では犯罪も起きるようになったし・・。」
同僚のピエールは煙草を吸いながら言う。
「全く・・・俺は他にやらなければならない仕事があるのに・・。」
そのボヤキをピエールは聞き逃さなかった。
「ん?クロード・・お前、何か他に事件を担当していたか?」
「いや、そういうわけではないのだが・・・。」
クロードは心残りがあった。それはつい最近まで関わっていた『カウベリー』での事件である。その時・・・・。
「クロード警部補っ!お電話がはいっておりますっ!」
新人の婦人警官がクロードを呼びに駆け寄ってきた。
「電話?俺に?」
「ええ。電話をかけてきた相手はまだ17歳の少年で、名前をルドルフ・テイラーと名乗っておりますが?」
「ルドルフ・・・?何と!ルドルフ君からっ?!」
クロードは慌てて電話口に駆け寄ると、外されていた受話器を手に取った。
「もしもしっ!」
『こんにちは、刑事さん。ご無沙汰足しておりました。ルドルフです。』
電話口からルドルフの声が聞こえてきた。
「ああ。久しぶりだったね。ルドルフ君。元気だったかい?」
『はい、元気です。刑事さんもお元気そうで何よりです。』
「元気だけが取り柄だからな。そうでなければ刑事は務まらないよ。それで?君はまだ『カウベリー』にいるのかい?」
『いえ、実は僕はあの後すぐにロータスに戻ったんです。』
「え?そうなのか・・?」
(やはり、せっかく里帰りしたのに、あんな凄惨な事件が起きてしまったのだから無理も無いか・・。)
しかし、ルドルフの答えはクロードの考えとは全く違っていた。
『僕がロータスに戻ってきたのは・・会いたい人がいたからです・・・。』
「え?」
予想外の回答にクロードは戸惑った。
『僕は・・どうしても教会の火事を起こした罪を自らかぶって、故郷を追い出されてしまった愛する女性に会いたくて・・・戻ってきたんです。』
「ル、ルドルフ君・・。」
あまりの突然の話にクロードは戸惑ってしまった。
(参ったな・・事件や犯罪についての話なら得意だが・・恋愛の話になるとは・・。)
『実は、今・・ぼくはその愛する女性・・ヒルダ様とボルトの町に来ているのです。』
「え?ボルトの町・・・?確かそこは・・。」
クロードは『ボルト』の町についての情報を思い出した。その町は全体が工場で覆われたような・・工場の為に作られたような町であること。働いてる工員達の平均年齢がとても若い事・・・なぜならほとんどが過酷な労働環境のせいで辞めていくか、早死にしてしまうかのどちらかだったからだ。
「ルドルフ君・・・何故そんな町にいるんだい?少なくとも『ボルト』は君のような貴族が訪れるような町じゃないよ?あそこは治安も環境も悪いし・・何よりアヘン中毒者も溢れているような場所だ。」
『ええ・・そのようですね。でも・・僕はどうしても来なければならなかったんです。ここには教会の焼失事件に関わった2人の同級生がいたからです。僕は彼らに会いに来て・・・犯人はグレースだったという証言を得ることが出来たんです。そして・・そのうちの1人が結核にかかっていて・・あまり長く持たないかもしれないんです・・。』
「え・・?」
クロードはルドルフの言葉に息を飲んだ―。
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