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第2章 16 自分たちの立場
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『ボルト』の町は空気が悪く、空の空気はどんよりしている。2人はホテルマンに勧められたガーゼのマスクをして手をつなぎながら工場の入り口を目指して歩いていた。
「ルドルフ・・・ここは本当に環境が悪い場所なのね。そういえば学校の授業で習ったわ。工業地帯は環境汚染が激しくて・・水も汚れているって・・・。」
「ええ。そうですね・・・。僕たちが住んでいた『カウべリー』は確かにとても田舎ですけど、自然のとても美しい場所です。そんなところで生まれ育った彼らが・・・こんな公害が酷い場所に住んで働いているなんて・・。」
ルドルフはヒルダの握り締める手に少しだけ力をこめると、コリンが働いている工場を見上げた。ヒルダもルドルフの隣に立ち、建物を見上げると言った。
「ここに・・・コリンさんが働いているのよね・・?」
「はい、そうです。学校の話によると土日は工場の仕事が休みだそうで、従業員のほとんどは寮生活で・・寮から出ることはほとんどないそうです。
「そう・・なの?」
「はい。過酷な労働環境の上・・・最低賃金で、何とか生活出来るレベルらしいので贅沢する余裕もないそうです。それにもともと空気も悪い町を出歩く人々はいないそうですから・・。」
「・・・。」
ヒルダは黙ってルドルフの言葉を聞いていた。それにしても聞けば聞くほどになんてひどい環境なのだろうとヒルダは思った。そして・・・たとえ、縁を切られても学校へ行かせてもらえている。家からお金の援助も出ている。さらに親切なアレン医師の元で診療所でアルバイトをさせてもらっている自分の事を改めて考えた。
(私って・・・とても恵まれた環境で暮らしていたのね・・。お父様や・・お兄様、そしてアレン先生に感謝しなくては・・・。)
一方のルドルフも同じ気持ちだった。今自分が爵位を貰い、優秀な高校へ行けるのは・・元をただせば、すべてはヒルダのお陰なのだ。そして今、2人は相思相愛の関係・・。ルドルフは心の中で誓った。
(必ず・・コリンとノラに教会での事件を白状させ・・・足の怪我の真相も聞き出してやるんだ・・!)
その時、ヒルダが声を上げた。
「見て、ルドルフ。あそこに扉があるわ。あれが工場の入り口じゃないかしら?」
ヒルダが指示したコンクリートでできた工場の一部が青い鉄の扉がはめ込まれている。
「ええ、そうですね。では行ってみましょう。」
「そうね。」
そして2人は扉へ向かって歩き出した―。
ゴンゴン
ルドルフは扉の前に着くと、ドアをノックした。しかし、何の反応もない。
「開いているかしら・・?」
「どうでしょう?試してみますね?」
ルドルフは言うと、扉にグッと手を掛けて開けようとするがびくともしない。
「駄目ですね・・開いていないようです。」
「そうなの・・・どうすればいいかしら・・。」
2人が扉の前で途方に暮れていると背後から声がかけられた。
「君たち!そんなところで何してるんだ?ここは関係者以外立ち入り禁止だ!」
振り向くと、そこには泥で汚れたつなぎを来た50代ほどの男性がバケツにモップを持って立っていた。
「すみません。僕たちはこの工場で働いている人を尋ねてきたのですが・・。」
ルドルフが言うと、男性は答えた。
「面会に来たのか?なら、ここは違う。今は休みだから寮に行くんだな。」
「その寮はどこにあるのですか?」
「ああ、ほら。向かい側にあるだろう?」
男性の指さした方向には先ほどのコンクリートの建物とは打って変わって木材建築の古びた建物が建っていた。
「あれが寮だ。入り口に管理人がいるから彼に尋ねるといい。」
「「ありがとうございます。」」
ルドルフとヒルダは頭を下げると、ルドルフはヒルダを見た。
「ヒルダ様、行きましょう。」
「ええ・・。」
2人は寮を目指して進んだ―。
「ルドルフ・・・ここは本当に環境が悪い場所なのね。そういえば学校の授業で習ったわ。工業地帯は環境汚染が激しくて・・水も汚れているって・・・。」
「ええ。そうですね・・・。僕たちが住んでいた『カウべリー』は確かにとても田舎ですけど、自然のとても美しい場所です。そんなところで生まれ育った彼らが・・・こんな公害が酷い場所に住んで働いているなんて・・。」
ルドルフはヒルダの握り締める手に少しだけ力をこめると、コリンが働いている工場を見上げた。ヒルダもルドルフの隣に立ち、建物を見上げると言った。
「ここに・・・コリンさんが働いているのよね・・?」
「はい、そうです。学校の話によると土日は工場の仕事が休みだそうで、従業員のほとんどは寮生活で・・寮から出ることはほとんどないそうです。
「そう・・なの?」
「はい。過酷な労働環境の上・・・最低賃金で、何とか生活出来るレベルらしいので贅沢する余裕もないそうです。それにもともと空気も悪い町を出歩く人々はいないそうですから・・。」
「・・・。」
ヒルダは黙ってルドルフの言葉を聞いていた。それにしても聞けば聞くほどになんてひどい環境なのだろうとヒルダは思った。そして・・・たとえ、縁を切られても学校へ行かせてもらえている。家からお金の援助も出ている。さらに親切なアレン医師の元で診療所でアルバイトをさせてもらっている自分の事を改めて考えた。
(私って・・・とても恵まれた環境で暮らしていたのね・・。お父様や・・お兄様、そしてアレン先生に感謝しなくては・・・。)
一方のルドルフも同じ気持ちだった。今自分が爵位を貰い、優秀な高校へ行けるのは・・元をただせば、すべてはヒルダのお陰なのだ。そして今、2人は相思相愛の関係・・。ルドルフは心の中で誓った。
(必ず・・コリンとノラに教会での事件を白状させ・・・足の怪我の真相も聞き出してやるんだ・・!)
その時、ヒルダが声を上げた。
「見て、ルドルフ。あそこに扉があるわ。あれが工場の入り口じゃないかしら?」
ヒルダが指示したコンクリートでできた工場の一部が青い鉄の扉がはめ込まれている。
「ええ、そうですね。では行ってみましょう。」
「そうね。」
そして2人は扉へ向かって歩き出した―。
ゴンゴン
ルドルフは扉の前に着くと、ドアをノックした。しかし、何の反応もない。
「開いているかしら・・?」
「どうでしょう?試してみますね?」
ルドルフは言うと、扉にグッと手を掛けて開けようとするがびくともしない。
「駄目ですね・・開いていないようです。」
「そうなの・・・どうすればいいかしら・・。」
2人が扉の前で途方に暮れていると背後から声がかけられた。
「君たち!そんなところで何してるんだ?ここは関係者以外立ち入り禁止だ!」
振り向くと、そこには泥で汚れたつなぎを来た50代ほどの男性がバケツにモップを持って立っていた。
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「その寮はどこにあるのですか?」
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「あれが寮だ。入り口に管理人がいるから彼に尋ねるといい。」
「「ありがとうございます。」」
ルドルフとヒルダは頭を下げると、ルドルフはヒルダを見た。
「ヒルダ様、行きましょう。」
「ええ・・。」
2人は寮を目指して進んだ―。
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