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第2章 11 初めての2人きりの旅行
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その日の夜―
夕食を終えたヒルダとカミラはリビングでカウベリーティーを飲みながら話をしていた。話の内容はクリスマスプレゼントについての事だった。
「そうですか。ルドルフさんとエドガー様にクリスマスプレゼントを買われたのですね?」
「ええ、そうなの。アレン先生のアドバイスで万年筆を買ったの。明日、郵便局からお兄様に送るわ。あのね、お兄様にはメッセージカードも添えたのよ。」
「まあ、何と書かれたのですか?」
「メリークリスマス。お兄様。またお会いしたいです。ヒルダって書いたの。おかしな文章じゃないかしら?」
ヒルダは心配そうにカミラに尋ねた。
「ええ。少しもおかしくはありません。心のこもったメッセージだと思いますよ?」
カミラは笑みを浮かべながら言う。
「そうかしら・・・。お兄様、喜んでくれると嬉しいわ。」
「当然ですわ。何せ他ならぬヒルダ様からのプレゼントなのですから。」
「あのね、カミラの分もちゃんと用意してあるのよ。でも・・どんなプレゼントはかはまだ内緒ね?」
「それは楽しみですね。私もヒルダ様に用意してありますけど、当日まで内緒にしておきますね。」
そして2人は微笑み合った―。
あれから何日間かの時が流れ・・・ルドルフと一緒に『ボルト』へ向かう土曜日となった。
朝9時―
トランクケースに1泊分の荷物を玄関前に置き、既に防寒具を着こんであるヒルダはルドルフが迎えに来るのを待っていた。カミラはもう仕事に出かけているので、このアパートメントに今いるのはヒルダただ1人だった。
「9時・・・そろそろルドルフが来る頃だわ・・・。」
ヒルダは柱に掛けてある時計を見るとポツリと呟いた。その時・・・・。
コンコン
ドアノッカーの音が部屋に響き渡った。
「きっとルドルフだわ。」
ヒルダは椅子の背もたれ部分に掛けていたショルダーバックを斜めに掛けると玄関へと向かった。
ガチャリ
ドアを開けると、そこにはやはり帽子を被り、コートの襟を立てたルドルフがそこに立っていた。
「おはようございます。ヒルダ様。」
ルドルフは笑顔でヒルダに挨拶する。
「お、お早う。ルドルフ。そ、その・・・貴方に・・とても会いたかったわ。」
頬を赤く染めてヒルダは俯きながら言った。
「ヒルダ様・・・。」
ルドルフは素直に好意を表してくれるヒルダが愛しくて、ギュッとヒルダを胸に抱きしめると言った。
「ヒルダ様、僕も・・・・会いたかったです。」
そして少しの間、恋人たちは抱き合うとルドルフが言った。
「馬車を外で待たせてあるんです。行きましょう、ヒルダ様。」
「まあ、ルドルフ。馬車を用意してくれたの?」
「はい、荷物もありますし・・汽車に2時間は乗らないといけないのでヒルダ様の足に負担がかかってはいけませんから。」
「ありがとう・・気を使ってくれて。嬉しいわ・・。」
「それでは荷物を持ちますので参りましょう?」
ルドルフはヒルダの荷物を右手で持つと左手を差し出した。
「ええ・・・。」
ヒルダは左手に杖を持つと、そっとルドルフの手に触れた―。
ガラガラガラガラ
馬車の中でヒルダとルドルフは向かい合わせに座り、話をしていた。
「ヒルダ様。10時発の『カウベリー』行の汽車に乗って、『ボルト』の駅には12時頃に到着予定なので、駅に着いたらお茶を買っておきましょう。中々の長旅になると思うので。」
「ええ、そうね。でも・・本当にルドルフの友人が見つかれば良いけど・・・。」
「多分、コリンもノラもカウベリーには戻っていないと思いますよ。あの2人にとっても・・・故郷は辛い場所に感じているはずですから・・・。」
ルドルフの言葉にヒルダは驚いた。
「まあ?そうなの?」
「はい。学校からの手紙によると・・コリンもノラも教会の火事の事件で相当大人たちから怒られたらしく・・中学を卒業後は故郷を離れたいと学校に願い出ていたそうなんです。」
「知らなかったわ・・・。」
ヒルダはポツリと呟き、馬車から外の景色を眺めながら思った。
あの火事で・・・人生が変わってしまったのは、自分だけでは無かったのだと―。
夕食を終えたヒルダとカミラはリビングでカウベリーティーを飲みながら話をしていた。話の内容はクリスマスプレゼントについての事だった。
「そうですか。ルドルフさんとエドガー様にクリスマスプレゼントを買われたのですね?」
「ええ、そうなの。アレン先生のアドバイスで万年筆を買ったの。明日、郵便局からお兄様に送るわ。あのね、お兄様にはメッセージカードも添えたのよ。」
「まあ、何と書かれたのですか?」
「メリークリスマス。お兄様。またお会いしたいです。ヒルダって書いたの。おかしな文章じゃないかしら?」
ヒルダは心配そうにカミラに尋ねた。
「ええ。少しもおかしくはありません。心のこもったメッセージだと思いますよ?」
カミラは笑みを浮かべながら言う。
「そうかしら・・・。お兄様、喜んでくれると嬉しいわ。」
「当然ですわ。何せ他ならぬヒルダ様からのプレゼントなのですから。」
「あのね、カミラの分もちゃんと用意してあるのよ。でも・・どんなプレゼントはかはまだ内緒ね?」
「それは楽しみですね。私もヒルダ様に用意してありますけど、当日まで内緒にしておきますね。」
そして2人は微笑み合った―。
あれから何日間かの時が流れ・・・ルドルフと一緒に『ボルト』へ向かう土曜日となった。
朝9時―
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「9時・・・そろそろルドルフが来る頃だわ・・・。」
ヒルダは柱に掛けてある時計を見るとポツリと呟いた。その時・・・・。
コンコン
ドアノッカーの音が部屋に響き渡った。
「きっとルドルフだわ。」
ヒルダは椅子の背もたれ部分に掛けていたショルダーバックを斜めに掛けると玄関へと向かった。
ガチャリ
ドアを開けると、そこにはやはり帽子を被り、コートの襟を立てたルドルフがそこに立っていた。
「おはようございます。ヒルダ様。」
ルドルフは笑顔でヒルダに挨拶する。
「お、お早う。ルドルフ。そ、その・・・貴方に・・とても会いたかったわ。」
頬を赤く染めてヒルダは俯きながら言った。
「ヒルダ様・・・。」
ルドルフは素直に好意を表してくれるヒルダが愛しくて、ギュッとヒルダを胸に抱きしめると言った。
「ヒルダ様、僕も・・・・会いたかったです。」
そして少しの間、恋人たちは抱き合うとルドルフが言った。
「馬車を外で待たせてあるんです。行きましょう、ヒルダ様。」
「まあ、ルドルフ。馬車を用意してくれたの?」
「はい、荷物もありますし・・汽車に2時間は乗らないといけないのでヒルダ様の足に負担がかかってはいけませんから。」
「ありがとう・・気を使ってくれて。嬉しいわ・・。」
「それでは荷物を持ちますので参りましょう?」
ルドルフはヒルダの荷物を右手で持つと左手を差し出した。
「ええ・・・。」
ヒルダは左手に杖を持つと、そっとルドルフの手に触れた―。
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