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第2章 4 来年の約束
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ようやく店内に入ることが出来た2人はカウンター前で何を注文するか話し合っていた。
「ヒルダ様は何にしますか?」
「それじゃ・・私はチーズバーガーとサラダにオレンジジュースにするわ。」
「ルドルフはどうするの?」
「それじゃ僕はダブルチーズバーガーとポテトとジンジャーエールにします。」
2人はそれぞれカウンターの店員に注文するとルドルフはヒルダに言った。
「ヒルダ様、先に空いている席に座って待っていて下さい。品物を受け取っておきますので。」
「ありがとう、ルドルフ。」
ヒルダは足を引きずりながら空いている席を探した。すると中央のテーブル席はまだ空いている場所が数か所あったので、ヒルダは椅子に座ると左足をマッサージした。
本当はルドルフには内緒にしていたのだが、ヒルダの左足は先ほどからズキズキと痛みを増して来ていたのだ。
(やっぱり杖を持ってくるべきだったかしら・・・。でも杖をついて歩いていたらルドルフに恥ずかしい思いをさせてしまうかもしれないもの・・。)
ヒルダは自分の左足が不自由な事に負い目を感じていた。だから本当は自分はルドルフの相手としてはふさわしくないと考えていたのだった。
「お待たせしました、ヒルダ様。」
ルドルフが笑顔でトレーの上に乗せた2人分のハンバーガーセットを運んできた。
「はい、こちらがヒルダ様のですよ。」
ルドルフはヒルダの分をトレーに乗せたまま差し出して来た。
「ありがとう、ルドルフ。」
「それじゃ、頂きましょうか?」
「ええ、そうね。」
そしてルドルフは始めてのハンバーガーを口にした―。
「どうだったかしら?ルドルフ。初めて食べたハンバーガーは?」
2人で手を繋いで店を後にして、ヒルダの住むアパートメントを目指して歩いているとヒルダが不意に尋ねてきた。
「ええ、とても美味しかったです。ハンバーガーってあんなに美味しかったのですね。あれなら毎週食べてもいい位です。」
「フフ・・・やっぱりルドルフも男の子なのね。」
「え?」
「あのね・・・フランシスが・・・。あ、フランシスって言う人は私達と同級生で彼の両親は港のレストランを経営していて彼も休みの時はウェイターの仕事をしているのだけど・・有名なシーフード料理店の跡取り息子なのにハンバーガーが大好きなのよ?」
「フランシス・・・。」
ルドルフはその名を呟いた。マドレーヌの言葉が頭の中に蘇って来た。
< そう言えばね~・・・・フランシスってばヒルダの事を好きなのよ。いつかそのうちヒルダに告白するかもね~・・・。 >
ヒルダは不意にルドルフが押し黙ってしまったので声を掛けた。
「どうしたの・・・?ルドルフ。」
「あの・・ヒルダ様。クリスマスの夜は・・フランシスと言う人物の両親が経営するレストランでクリスマスパーティーに参加するそうですね?」
「え、ええ・・・。あ・・ひょっとして・・マドレーヌから聞いたの?」
「はい・・・。」
ルドルフは俯いて返事をした。
(ほんとうは・・・クリスマスの夜は2人でお祝いをしたかった・・・。)
しかし、それはもう手遅れなのだ。フランシスにヒルダがクリスマスパーティーにさそわれたのは冬期休暇に入る前の出来事だった。そしてルドルフとヒルダが恋人同士になれたのはほんの数日前の事なのだから。
「あのね、ルドルフ。私・・・クリスマスパーティーに参加するの・・断るわ。」
「え?」
「クリスマスは特別な日だから・・どうせならルドルフと・・2人でお祝いしたいわ。だから・・・。」
ヒルダは頬を染めながら言う。
「ヒルダ様・・・。」
ルドルフはヒルダの気持ちが嬉しかった。だからその言葉を貰えただけで十分だと思った。そこでルドルフは言った。
「いいえ、ヒルダ様。その言葉を貰えただけで・・・僕は十分です。今回は先に約束していたパーティーを優先させて下さい。その代り・・・来年は僕と2人でクリスマスをお祝い・・してもらえますか?」
「ルドルフ・・来年も私は・・・貴方の傍にいても・・いいの?」
ヒルダは目を見開いてルドルフを見た。
「ええ、勿論です。僕が傍にいて欲しい女性は・・・ヒルダ様。貴女だけですから・・。」
そしてルドルフは繋いでいたヒルダの手に力を込めた―。
「ヒルダ様は何にしますか?」
「それじゃ・・私はチーズバーガーとサラダにオレンジジュースにするわ。」
「ルドルフはどうするの?」
「それじゃ僕はダブルチーズバーガーとポテトとジンジャーエールにします。」
2人はそれぞれカウンターの店員に注文するとルドルフはヒルダに言った。
「ヒルダ様、先に空いている席に座って待っていて下さい。品物を受け取っておきますので。」
「ありがとう、ルドルフ。」
ヒルダは足を引きずりながら空いている席を探した。すると中央のテーブル席はまだ空いている場所が数か所あったので、ヒルダは椅子に座ると左足をマッサージした。
本当はルドルフには内緒にしていたのだが、ヒルダの左足は先ほどからズキズキと痛みを増して来ていたのだ。
(やっぱり杖を持ってくるべきだったかしら・・・。でも杖をついて歩いていたらルドルフに恥ずかしい思いをさせてしまうかもしれないもの・・。)
ヒルダは自分の左足が不自由な事に負い目を感じていた。だから本当は自分はルドルフの相手としてはふさわしくないと考えていたのだった。
「お待たせしました、ヒルダ様。」
ルドルフが笑顔でトレーの上に乗せた2人分のハンバーガーセットを運んできた。
「はい、こちらがヒルダ様のですよ。」
ルドルフはヒルダの分をトレーに乗せたまま差し出して来た。
「ありがとう、ルドルフ。」
「それじゃ、頂きましょうか?」
「ええ、そうね。」
そしてルドルフは始めてのハンバーガーを口にした―。
「どうだったかしら?ルドルフ。初めて食べたハンバーガーは?」
2人で手を繋いで店を後にして、ヒルダの住むアパートメントを目指して歩いているとヒルダが不意に尋ねてきた。
「ええ、とても美味しかったです。ハンバーガーってあんなに美味しかったのですね。あれなら毎週食べてもいい位です。」
「フフ・・・やっぱりルドルフも男の子なのね。」
「え?」
「あのね・・・フランシスが・・・。あ、フランシスって言う人は私達と同級生で彼の両親は港のレストランを経営していて彼も休みの時はウェイターの仕事をしているのだけど・・有名なシーフード料理店の跡取り息子なのにハンバーガーが大好きなのよ?」
「フランシス・・・。」
ルドルフはその名を呟いた。マドレーヌの言葉が頭の中に蘇って来た。
< そう言えばね~・・・・フランシスってばヒルダの事を好きなのよ。いつかそのうちヒルダに告白するかもね~・・・。 >
ヒルダは不意にルドルフが押し黙ってしまったので声を掛けた。
「どうしたの・・・?ルドルフ。」
「あの・・ヒルダ様。クリスマスの夜は・・フランシスと言う人物の両親が経営するレストランでクリスマスパーティーに参加するそうですね?」
「え、ええ・・・。あ・・ひょっとして・・マドレーヌから聞いたの?」
「はい・・・。」
ルドルフは俯いて返事をした。
(ほんとうは・・・クリスマスの夜は2人でお祝いをしたかった・・・。)
しかし、それはもう手遅れなのだ。フランシスにヒルダがクリスマスパーティーにさそわれたのは冬期休暇に入る前の出来事だった。そしてルドルフとヒルダが恋人同士になれたのはほんの数日前の事なのだから。
「あのね、ルドルフ。私・・・クリスマスパーティーに参加するの・・断るわ。」
「え?」
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そしてルドルフは繋いでいたヒルダの手に力を込めた―。
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