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第1章 11 カミラへの報告
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18時―
「ただいま戻りました。」
カミラが仕事から帰宅してきた。
「お帰りなさい、カミラ。」
ヒルダが笑顔で玄関まで出迎えて来た。部屋の中にはスープの美味しそうな匂いが漂っている。
「どうしたのですか?ヒルダ様。何だかすごくご機嫌に見えますよ?」
カミラはいつになく明るいヒルダを見て眩しそうに目を細めた。
「あ・・分かる?カミラ。実はね・・。今日ルドルフに会ったの。そして私たちにお土産を持ってきてくれたのよ?」
「え?ルドルフさんに会ったのですか?」
コートを脱いでいたカミラは驚きで一瞬手が止まった。
「確か・・・ルドルフさんはカウベリーに戻ったのではないでしょうか?」
ハンガーにコートを掛けながらカミラは首をかしげた。
「ええ・・そうなのよね・・・1週間ほどでロータスに戻って来るとは思わなかったわ・・・どうして早く帰ってきたのかしら?理由は聞いていないのだけど・・。」
するとカミラが笑みを浮かべながら言った。
「フフフ・・ひょっとするとルドルフさんはヒルダ様に会いたくて早くロータスに戻って来たのではないですか?」
「ま、まさか・・・そんなはず・・無いわ・・・。だって私はルドルフを・・あんなにも傷つけてしまったのだから・・。」
ヒルダは俯くと言った。
「でもヒルダ様・・・。ルドルフさんはわざわざカウベリーのお土産を持ってきて下さったのですよね?嫌いな相手にわざわざお土産など買ってくると思いますか?」
「そう・・・なのかしら・・・。ルドルフは・・・もう私を嫌っていないのかしら・・。」
「嫌いどころか・・むしろヒルダ様の事を好きだと思いますよ?」
カミラは笑みを浮かべた。
「カ、カミラ・・・・。」
ヒルダは顔を真っ赤に染めた。
(でも・・もしルドルフが私の事を好いてくれているのなら・・私・・・。)
ヒルダはそっと自分の手を握り締めた―。
夕食を終えたヒルダとカミラはリビングで、それぞれ思い思いの事をしていた。
カミラは編み物、ヒルダは最近覚えたての刺繍を真っ白なエプロンにしていた。
「ヒルダ様、今夜のお食事・・・とても美味しかったです。やはりお野菜たっぷりのスープは美味しいですね。」
カミラは編み物の手を不意に止めるとヒルダに話しかけてきた。
「ええ、そうなの。今日はマルシェが特売日だったのよ。お野菜が安くて・・つい買い過ぎてしまったの。それで荷物が重くてベンチで休んでいたのよ。そして立ち上ってすぐに転びかけて・・。」
「まあ、転びかけたのですか?ヒルダ様、大丈夫だったのですか?」
「ええ、大丈夫だったわ。ルドルフが助けてくれたの。」
「まあ・・・ルドルフさんが?」
「ええ・・・あ、それでルドルフが明日ケーキを持ってきてくれるそうなのよ?」
「え?ケーキですか・・・?これはまた随分唐突ですね・・・。」
「そうなの。マドレーヌのご両親のお店で買ったのですって。明日出来上がるそうなの。」
「どんなケーキなのでしょうねぇ・・・。」
「分からないわ。でもとても素敵なケーキだったらしいから・・。」
「そうなのですか。それは今から楽しみですね。」
カミラはヒルダがまた再び昔のような笑顔を取り戻した姿を見て幸せを感じていた。
(本当に良かったわ・・ヒルダ様・・。後は旦那様の許しが出れば・・。)
カミラはそう、祈るのだった―。
一方、その頃ルドルフはルームメイトがいない寮で手紙を書いていた。その手紙のあて先はカウベリーの中学校あてだった。ヒルダに会いたいが為にルドルフは早々にロータスに戻ってきてしまったが、やるべき事があった事を思い出したのだ。
それは・・カウベリーを出て行ったノラとコリンの事だった。この2人は中学校の推薦で就職が決まったと言う話を聞いていた。学校に尋ねれば2人の行方がつかめるのではないかと思ったのだ。
(そうだ・・ノラとコリンの証言が得られれば・・ヒルダ様の無実がきっと証明されるはずなんだ・・。)
その日―
ルドルフは夜が更けるまで手紙を書き続けた―。
「ただいま戻りました。」
カミラが仕事から帰宅してきた。
「お帰りなさい、カミラ。」
ヒルダが笑顔で玄関まで出迎えて来た。部屋の中にはスープの美味しそうな匂いが漂っている。
「どうしたのですか?ヒルダ様。何だかすごくご機嫌に見えますよ?」
カミラはいつになく明るいヒルダを見て眩しそうに目を細めた。
「あ・・分かる?カミラ。実はね・・。今日ルドルフに会ったの。そして私たちにお土産を持ってきてくれたのよ?」
「え?ルドルフさんに会ったのですか?」
コートを脱いでいたカミラは驚きで一瞬手が止まった。
「確か・・・ルドルフさんはカウベリーに戻ったのではないでしょうか?」
ハンガーにコートを掛けながらカミラは首をかしげた。
「ええ・・そうなのよね・・・1週間ほどでロータスに戻って来るとは思わなかったわ・・・どうして早く帰ってきたのかしら?理由は聞いていないのだけど・・。」
するとカミラが笑みを浮かべながら言った。
「フフフ・・ひょっとするとルドルフさんはヒルダ様に会いたくて早くロータスに戻って来たのではないですか?」
「ま、まさか・・・そんなはず・・無いわ・・・。だって私はルドルフを・・あんなにも傷つけてしまったのだから・・。」
ヒルダは俯くと言った。
「でもヒルダ様・・・。ルドルフさんはわざわざカウベリーのお土産を持ってきて下さったのですよね?嫌いな相手にわざわざお土産など買ってくると思いますか?」
「そう・・・なのかしら・・・。ルドルフは・・・もう私を嫌っていないのかしら・・。」
「嫌いどころか・・むしろヒルダ様の事を好きだと思いますよ?」
カミラは笑みを浮かべた。
「カ、カミラ・・・・。」
ヒルダは顔を真っ赤に染めた。
(でも・・もしルドルフが私の事を好いてくれているのなら・・私・・・。)
ヒルダはそっと自分の手を握り締めた―。
夕食を終えたヒルダとカミラはリビングで、それぞれ思い思いの事をしていた。
カミラは編み物、ヒルダは最近覚えたての刺繍を真っ白なエプロンにしていた。
「ヒルダ様、今夜のお食事・・・とても美味しかったです。やはりお野菜たっぷりのスープは美味しいですね。」
カミラは編み物の手を不意に止めるとヒルダに話しかけてきた。
「ええ、そうなの。今日はマルシェが特売日だったのよ。お野菜が安くて・・つい買い過ぎてしまったの。それで荷物が重くてベンチで休んでいたのよ。そして立ち上ってすぐに転びかけて・・。」
「まあ、転びかけたのですか?ヒルダ様、大丈夫だったのですか?」
「ええ、大丈夫だったわ。ルドルフが助けてくれたの。」
「まあ・・・ルドルフさんが?」
「ええ・・・あ、それでルドルフが明日ケーキを持ってきてくれるそうなのよ?」
「え?ケーキですか・・・?これはまた随分唐突ですね・・・。」
「そうなの。マドレーヌのご両親のお店で買ったのですって。明日出来上がるそうなの。」
「どんなケーキなのでしょうねぇ・・・。」
「分からないわ。でもとても素敵なケーキだったらしいから・・。」
「そうなのですか。それは今から楽しみですね。」
カミラはヒルダがまた再び昔のような笑顔を取り戻した姿を見て幸せを感じていた。
(本当に良かったわ・・ヒルダ様・・。後は旦那様の許しが出れば・・。)
カミラはそう、祈るのだった―。
一方、その頃ルドルフはルームメイトがいない寮で手紙を書いていた。その手紙のあて先はカウベリーの中学校あてだった。ヒルダに会いたいが為にルドルフは早々にロータスに戻ってきてしまったが、やるべき事があった事を思い出したのだ。
それは・・カウベリーを出て行ったノラとコリンの事だった。この2人は中学校の推薦で就職が決まったと言う話を聞いていた。学校に尋ねれば2人の行方がつかめるのではないかと思ったのだ。
(そうだ・・ノラとコリンの証言が得られれば・・ヒルダ様の無実がきっと証明されるはずなんだ・・。)
その日―
ルドルフは夜が更けるまで手紙を書き続けた―。
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