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第12章 6 イワンの葬儀
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翌朝―
一晩中降り続いていた雪は朝方にやみ、アンナの住む『キャメリア』の町に朝日が差していた。
「え?今・・・何とおっしゃったのですか?」
フォークを手にしていたヒルダが顔を上げてアンナを見た。
温かい日差しの差しこむサンルームでアンナとヒルダは2人で向かい合わせに朝食を取っていた。アンナの両親は2人共別の国で仕事をしている為、この広過ぎる屋敷に住むのはアンナと使用人たちだけであった。
そのアンナがヒルダに言った。
「ええ、今日は・・イワンのお葬式が行われるそうなので・・・エドガー様もハリス様も・・・フィールズ家を不在にするの。なので・・マーガレット様と会わせて貰えるそうなのです。ヒルダ様・・・『ロータス』に帰る前に・・もう一度お母様とお会いしたいと思いませんか?」
アンナがテーブルパンにジャムを塗りながら尋ねた。
「え、ええ・・それは確かに会いたいですが・・でも大丈夫なのでしょうか・・・?お兄様が不在なのに・・私達だけで会いに行っても・・。」
「ええ、それは大丈夫です。侍女のコゼットが話を通してくれるそうなの。」
「まあ・・・そうなんですか?何だかお父様とお兄様の不在時にお母様に会いに行くのは・・悪い気がするけれども・・。」
「何を仰るのですかヒルダ様?ご自分の家なのですから・・・そんな事言わないで下さい。それに・・・ハリス様からもマーガレット様の体調が良くなったお祝いのパーティーを開こうといわれていたのですよね?」
アンナの言葉にヒルダは元気づけられた。
(そうよね・・・お父様がわざわざ誘ってくれようとしていたのだから・・。)
「ありがとうございます、アンナ様。」
ヒルダはアンナに頭を下げた。
「そんな、お礼を言われるような事は何もしておりません。でも・・ヒルダ様、本日の列車で『ロータス』へ帰られるのなら・・早めにフィールズ家へ行きましょう。」
「はい、そうですね。」
そこで2人は手早く朝食を食べ始めた―。
****
午前10時―
ゴーン・・・
ゴーン・・・
良く晴れ渡った青空の下・・・厳かな教会の鐘の音が響き渡っていた。
その教会に向かって棺を担いだ村人たちと・・その後ろを泣きながら雪の中を踏みしめて歩く一団が有った。
「うう・・・イワン・・・イワン・・・・。」
泣いている女性はイワンの母親だった。頭には黒い木綿のハンカチーフで髪をまとめ・・古びた黒のコートを羽織った様子は、その暮らしが決して楽では無い事を物語っていた。
イワンの母親は涙の長し過ぎで、目が真っ赤に腫れ上がり・・・嗚咽が止まらない。
その嘆き悲しみようは見るに堪えがたい程であった。
「父上・・・イワンの母親ですが・・・哀れで・・とても見ていられません・・。」
少し離れた場所で喪服を着たエドガーが隣に立つハリスに白い息を吐きながら語り掛ける。
「ああ・・そうだな・・・。ああいう姿を見るのは・・辛い・・。彼女の嘆き悲しみようは・・・あの子を思い出してしまい・・胸が痛む。」
ハリスはイワンの母から片時も目を話さずにぽつりと言った。
「え・・?」
エドガーはハリスの言った何気ない言葉に反応し、思わずハリスを振り向いた。
「どうした?エドガー?」
ハリスがエドガーを見た。
「い、いえ・・。」
思わずエドガーが言葉に詰まると、ハリスが言った。
「よし・・・棺も教会の中に入った事だし・・我々も中へ入ろうか?」
ハリスに促され、エドガーは頷いた。
「はい、そうですね・・。」
ハリスは少しだけ頷くと、教会へ向かって歩き始め・・・その背中をエドガーは追った。
(父上・・あの子って言うのは・・ヒルダの事ですよね・・?)
エドガーはハリスの背中を見ながら思うのだった―。
一晩中降り続いていた雪は朝方にやみ、アンナの住む『キャメリア』の町に朝日が差していた。
「え?今・・・何とおっしゃったのですか?」
フォークを手にしていたヒルダが顔を上げてアンナを見た。
温かい日差しの差しこむサンルームでアンナとヒルダは2人で向かい合わせに朝食を取っていた。アンナの両親は2人共別の国で仕事をしている為、この広過ぎる屋敷に住むのはアンナと使用人たちだけであった。
そのアンナがヒルダに言った。
「ええ、今日は・・イワンのお葬式が行われるそうなので・・・エドガー様もハリス様も・・・フィールズ家を不在にするの。なので・・マーガレット様と会わせて貰えるそうなのです。ヒルダ様・・・『ロータス』に帰る前に・・もう一度お母様とお会いしたいと思いませんか?」
アンナがテーブルパンにジャムを塗りながら尋ねた。
「え、ええ・・それは確かに会いたいですが・・でも大丈夫なのでしょうか・・・?お兄様が不在なのに・・私達だけで会いに行っても・・。」
「ええ、それは大丈夫です。侍女のコゼットが話を通してくれるそうなの。」
「まあ・・・そうなんですか?何だかお父様とお兄様の不在時にお母様に会いに行くのは・・悪い気がするけれども・・。」
「何を仰るのですかヒルダ様?ご自分の家なのですから・・・そんな事言わないで下さい。それに・・・ハリス様からもマーガレット様の体調が良くなったお祝いのパーティーを開こうといわれていたのですよね?」
アンナの言葉にヒルダは元気づけられた。
(そうよね・・・お父様がわざわざ誘ってくれようとしていたのだから・・。)
「ありがとうございます、アンナ様。」
ヒルダはアンナに頭を下げた。
「そんな、お礼を言われるような事は何もしておりません。でも・・ヒルダ様、本日の列車で『ロータス』へ帰られるのなら・・早めにフィールズ家へ行きましょう。」
「はい、そうですね。」
そこで2人は手早く朝食を食べ始めた―。
****
午前10時―
ゴーン・・・
ゴーン・・・
良く晴れ渡った青空の下・・・厳かな教会の鐘の音が響き渡っていた。
その教会に向かって棺を担いだ村人たちと・・その後ろを泣きながら雪の中を踏みしめて歩く一団が有った。
「うう・・・イワン・・・イワン・・・・。」
泣いている女性はイワンの母親だった。頭には黒い木綿のハンカチーフで髪をまとめ・・古びた黒のコートを羽織った様子は、その暮らしが決して楽では無い事を物語っていた。
イワンの母親は涙の長し過ぎで、目が真っ赤に腫れ上がり・・・嗚咽が止まらない。
その嘆き悲しみようは見るに堪えがたい程であった。
「父上・・・イワンの母親ですが・・・哀れで・・とても見ていられません・・。」
少し離れた場所で喪服を着たエドガーが隣に立つハリスに白い息を吐きながら語り掛ける。
「ああ・・そうだな・・・。ああいう姿を見るのは・・辛い・・。彼女の嘆き悲しみようは・・・あの子を思い出してしまい・・胸が痛む。」
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「え・・?」
エドガーはハリスの言った何気ない言葉に反応し、思わずハリスを振り向いた。
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「い、いえ・・。」
思わずエドガーが言葉に詰まると、ハリスが言った。
「よし・・・棺も教会の中に入った事だし・・我々も中へ入ろうか?」
ハリスに促され、エドガーは頷いた。
「はい、そうですね・・。」
ハリスは少しだけ頷くと、教会へ向かって歩き始め・・・その背中をエドガーは追った。
(父上・・あの子って言うのは・・ヒルダの事ですよね・・?)
エドガーはハリスの背中を見ながら思うのだった―。
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