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第12章 1 絶たれた希望
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この日、小さな片田舎の町・・『カウベリー』に激震が走った。
まだたった17歳の少年と少女の命が同時に失われたのである。少年は列車の飛び込み自殺。そして少女は実の父親に殺害された・・・。
あっという間にこの事件が『カウベリー』中に広まり・・大騒ぎになるのは無理も無い話であった―。
「エドガー様・・ご連絡、ありがとうございました。」
『カウベリー』にある警察署から派遣されてきた巡査部長がエドガーに頭を下げた。
「いえ・・・でも、まさか・・こんな事になるなんて・・。」
エドガーは数人の警察官に囲まれて警察署へ連行されるグレースの父をチラリと見た。手錠をかけられた彼はまるで生気の抜けたうつろな表情で視点が定まっていない。そして一方のグレースの母は泣きつかれて放心状態となっており、同じく警察署へ連行されるところであった。周囲には大勢の村人達が集まり、辺りは騒然となっていた。
巡査部長はグレースの両親がそれぞれ警察署の馬車に乗り込む姿を見届けると言った。
「それでは・・エドガー様。彼らは警察署へ連れていきますので。」
「ああ・・分かった。それで・・グレースの方は・・・?」
エドガーが尋ねると、巡査部長は首を振った。
「・・残念ですが・・・やはり死んでいました。父親に・・首を強く圧迫されて・・窒息死でした・・。しかしまさか・・自分の父親に殺されるとは思いもしなかったでしょうね・・。可哀そうに・・・。」
何も事情を知らない巡査部長は目を伏せながら言ったが・・エドガーは何も答える事が出来なかった。
何故なら・・・一歩間違えば、自分がグレースの父と同じ過ちを犯してしまっていたかもしれないからだ。
「何か・・詳しい事が分かったら連絡を下さい。ひょっとすると・・グレースは2年前の教会の焼失事件に関わっているかもしれませんので。」
エドガーは余計な話かもしれないと思ったが・・・どうしてもその話を口にせずにはいられなかった。
「え?ええ・・・分かりました。それでは。」
巡査部長は被っていた帽子を取って挨拶をすると、グレースの父が乗っている馬車に向かって歩きだした。
「・・・。」
エドガーは黙ってそれを見届け・・やがて2台の馬車は走り去って行った―。
「エドガー様っ!」
そこへルドルフが白い息を吐きながらエドガーの元へ駆け寄ってきた。ルドルフは巡査部長とエドガーの話を邪魔しない為に少し離れた場所で見守っていたのだ。
「ああ・・・ルドルフか・・。」
「エドガー様・・グレースは・・?」
エドガーは首を振ると言った。
「駄目だった・・。やはり俺たちが発見した時には既に・・死んでいたんだろうな・・。」
「そ、そんな・・・!」
ルドルフ絶句し、あたりを見渡した。
既にあれほど大勢いたやじ馬たちは誰一人いなくなっていた。残っているのはグレースの家に見張りをしている警察官たちだけである。
「エドガー様・・・一体僕たちはこれからどうしたらいいのでしょう・・?」
ルドルフは声を震わせながら尋ねてきた。
「ルドルフ・・?」
「ヒルダ様の足の怪我の原因を作り・・そして教会の火事の事件を押し付けたイワンとグレースは・・もう2人ともこの世にいない・・。一体誰が・・ヒルダ様の火事の事件の濡れ衣を晴らすことが出来ると言うんですか・・?!」
ルドルフは血を吐くような悲痛な声で言った。
「ルドルフ・・・。」
そのことはエドガーもずっと考えていた。そして言った。
「もう、こうなったら・・・あの時の火事現場に居合わせていた残りの2人を問い詰めるしかないか・・・。」
「ノラと・・コリンですか・・?」
だが、ルドルフには2人の居場所は分からなかった。なぜならノラもコリンも家族ごと引っ越しをしてしまい、今はここには住んでいないからだ。
(ヒルダ様・・・・僕にはもう・・・貴女の無実を晴らす事が出来ないのでしょうか・・。)
ルドルフはズキズキ痛む胸を押さえ・・・哀れなヒルダの事を思うのだった―。
まだたった17歳の少年と少女の命が同時に失われたのである。少年は列車の飛び込み自殺。そして少女は実の父親に殺害された・・・。
あっという間にこの事件が『カウベリー』中に広まり・・大騒ぎになるのは無理も無い話であった―。
「エドガー様・・ご連絡、ありがとうございました。」
『カウベリー』にある警察署から派遣されてきた巡査部長がエドガーに頭を下げた。
「いえ・・・でも、まさか・・こんな事になるなんて・・。」
エドガーは数人の警察官に囲まれて警察署へ連行されるグレースの父をチラリと見た。手錠をかけられた彼はまるで生気の抜けたうつろな表情で視点が定まっていない。そして一方のグレースの母は泣きつかれて放心状態となっており、同じく警察署へ連行されるところであった。周囲には大勢の村人達が集まり、辺りは騒然となっていた。
巡査部長はグレースの両親がそれぞれ警察署の馬車に乗り込む姿を見届けると言った。
「それでは・・エドガー様。彼らは警察署へ連れていきますので。」
「ああ・・分かった。それで・・グレースの方は・・・?」
エドガーが尋ねると、巡査部長は首を振った。
「・・残念ですが・・・やはり死んでいました。父親に・・首を強く圧迫されて・・窒息死でした・・。しかしまさか・・自分の父親に殺されるとは思いもしなかったでしょうね・・。可哀そうに・・・。」
何も事情を知らない巡査部長は目を伏せながら言ったが・・エドガーは何も答える事が出来なかった。
何故なら・・・一歩間違えば、自分がグレースの父と同じ過ちを犯してしまっていたかもしれないからだ。
「何か・・詳しい事が分かったら連絡を下さい。ひょっとすると・・グレースは2年前の教会の焼失事件に関わっているかもしれませんので。」
エドガーは余計な話かもしれないと思ったが・・・どうしてもその話を口にせずにはいられなかった。
「え?ええ・・・分かりました。それでは。」
巡査部長は被っていた帽子を取って挨拶をすると、グレースの父が乗っている馬車に向かって歩きだした。
「・・・。」
エドガーは黙ってそれを見届け・・やがて2台の馬車は走り去って行った―。
「エドガー様っ!」
そこへルドルフが白い息を吐きながらエドガーの元へ駆け寄ってきた。ルドルフは巡査部長とエドガーの話を邪魔しない為に少し離れた場所で見守っていたのだ。
「ああ・・・ルドルフか・・。」
「エドガー様・・グレースは・・?」
エドガーは首を振ると言った。
「駄目だった・・。やはり俺たちが発見した時には既に・・死んでいたんだろうな・・。」
「そ、そんな・・・!」
ルドルフ絶句し、あたりを見渡した。
既にあれほど大勢いたやじ馬たちは誰一人いなくなっていた。残っているのはグレースの家に見張りをしている警察官たちだけである。
「エドガー様・・・一体僕たちはこれからどうしたらいいのでしょう・・?」
ルドルフは声を震わせながら尋ねてきた。
「ルドルフ・・?」
「ヒルダ様の足の怪我の原因を作り・・そして教会の火事の事件を押し付けたイワンとグレースは・・もう2人ともこの世にいない・・。一体誰が・・ヒルダ様の火事の事件の濡れ衣を晴らすことが出来ると言うんですか・・?!」
ルドルフは血を吐くような悲痛な声で言った。
「ルドルフ・・・。」
そのことはエドガーもずっと考えていた。そして言った。
「もう、こうなったら・・・あの時の火事現場に居合わせていた残りの2人を問い詰めるしかないか・・・。」
「ノラと・・コリンですか・・?」
だが、ルドルフには2人の居場所は分からなかった。なぜならノラもコリンも家族ごと引っ越しをしてしまい、今はここには住んでいないからだ。
(ヒルダ様・・・・僕にはもう・・・貴女の無実を晴らす事が出来ないのでしょうか・・。)
ルドルフはズキズキ痛む胸を押さえ・・・哀れなヒルダの事を思うのだった―。
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