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第11章 17 2人が目にした異様な光景
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その頃―
エドガーとルドルフは互いの馬に乗ってグレースの住む屋敷を目指して馬を走らせていた。
「エドガー様・・グレースは・・イワンが自殺してしまった事を知っているでしょうか・・?」
馬を走らせながらルドルフは尋ねた。
「さあ・・どうだろうな・・・。でもあの屋敷の様子から見るとまるで世間から切り離されたような生活をしているように俺は感じた・・・。ひょっとするとグレースはイワンが自殺してしまった事をまだ知らないかもしれない。だが・・・。」
エドガーは手綱をグッと握りしめ、前方をキッと睨み付けるように言った。
「あのグレースの事だ・・・。イワンが自殺した事を聞いても何も動じていないかもしれない・・・。何せ、ヒルダをあんなひどい目に遭わせておきながら、のうのうと暮らし・・・その挙句に自分があの火事の犯人だと言う証拠を持って来いなどと・・!」
そんなエドガーの様子を黙って見つめていたルドルフは思った。
(ひょとすると・・・やっぱりエドガー様はヒルダ様の事を・・・?)
しかし、いくら血が繋がっていないとは言え、エドガーとヒルダは義理の兄妹である。さらにエドガーにはアンナという可愛らしい婚約者もいる。そして・・何より、ルドルフはヒルダを愛していた。
(エドガー様・・・。)
ルドルフは怒りに燃えているエドガーを複雑な気持ちで見るのだった―。
「着いたな・・・。」
エドガーとルドルフは林を抜けた先にあるグレースの住む屋敷にたどりつき、馬から降りた。この付近はまだ雪深く、新雪も踏み固められていない。そしてグレースの家の玄関には林の奥から向かってまっすぐに足跡が残されていた。
「おや・・・足跡が付いているな。誰か外から帰ってきたのだろか?」
エドガーは足跡に気付いた。
「本当だ・・・ひょっとするとグレースのお父さんかもしれませんね。」
「ああ・・そうだな。では訪ねてみようか?」
エドガーは肩についた雪をパッパッと払うと、ドアノッカーを掴んでノックした。
コンコン
「「・・・・・。」」
しかし、誰も屋敷から出てくる気配がない。
「何だ?聞こえなかったのだろうか?」
エドガーは首を傾げ、再度ドアをノックした。
「・・・。」
しかし、それでも返事は無い。だが雪の上には大きな足跡が残されているし、家を出て行った形跡の足跡は残されていない。なのに屋敷の中は異常な静けさに包まれている。
「・・・。」
エドガーは無言でドアノブを掴んで回すと、カチャリと音を立ててドアが開いた。
「開いた・・・。」
ルドルフが呟くと、エドガーが言った。
「・・中へ入ってみるか。」
「え?エドガー様っ?!」
ルドルフは慌ててエドガーを見ると、もう既に屋敷の中へ入り込んでいた。
まだ正午前だと言うのに、屋敷の中は薄暗く、しんと静まり返った室内は言い知れぬ恐ろしさを感じる。
2人でギシギシ鳴る床を踏みしめながら歩いていると、左の方からすすり泣きのような声が聞こえてきた。
「う・・・うう・・・。」
その声を聞いた2人は互いに頷きあうと、すすり泣きが聞こえる部屋へ向かい・・息を飲んだ。
「「!」」
「な・・何なんだ・・一体・・・。」
ルドルフは声を震わせた。
エドガーはグッと拳を握り締め、床に倒れているグレースを見た。
グレースの顔は土気色に代わり・・・醜く歪んでいた。目は大きく見開かられて赤く充血し・・・口からは泡を吹いていた。
そしてそのそばには両膝を床について、茫然と娘を見下ろしているグレースの父と・・・泣き崩れているグレースの母の姿があった。2人は屋敷の中に勝手に入ってきたエドガーとルドルフの事に気が付いていない。
(こ、これは・・・まさか・・・っ!)
エドガーは息を飲み・・・茫然としているグレースの父に静かに尋ねた。
「いったい・・・何があったんだ?グレースに・・何をしたんだ?」
するとグレースの父はポツリと呟いた。
「あ・・・悪魔を・・・。」
「「悪魔?」」
エドガーとルドルフは同時に声を上げた。
「娘に憑りついた・・・悪魔を・・俺が殺したんだ・・・。」
そして、力なく顔をあげるとエドガーとルドルフの顔を交互に見た―。
エドガーとルドルフは互いの馬に乗ってグレースの住む屋敷を目指して馬を走らせていた。
「エドガー様・・グレースは・・イワンが自殺してしまった事を知っているでしょうか・・?」
馬を走らせながらルドルフは尋ねた。
「さあ・・どうだろうな・・・。でもあの屋敷の様子から見るとまるで世間から切り離されたような生活をしているように俺は感じた・・・。ひょっとするとグレースはイワンが自殺してしまった事をまだ知らないかもしれない。だが・・・。」
エドガーは手綱をグッと握りしめ、前方をキッと睨み付けるように言った。
「あのグレースの事だ・・・。イワンが自殺した事を聞いても何も動じていないかもしれない・・・。何せ、ヒルダをあんなひどい目に遭わせておきながら、のうのうと暮らし・・・その挙句に自分があの火事の犯人だと言う証拠を持って来いなどと・・!」
そんなエドガーの様子を黙って見つめていたルドルフは思った。
(ひょとすると・・・やっぱりエドガー様はヒルダ様の事を・・・?)
しかし、いくら血が繋がっていないとは言え、エドガーとヒルダは義理の兄妹である。さらにエドガーにはアンナという可愛らしい婚約者もいる。そして・・何より、ルドルフはヒルダを愛していた。
(エドガー様・・・。)
ルドルフは怒りに燃えているエドガーを複雑な気持ちで見るのだった―。
「着いたな・・・。」
エドガーとルドルフは林を抜けた先にあるグレースの住む屋敷にたどりつき、馬から降りた。この付近はまだ雪深く、新雪も踏み固められていない。そしてグレースの家の玄関には林の奥から向かってまっすぐに足跡が残されていた。
「おや・・・足跡が付いているな。誰か外から帰ってきたのだろか?」
エドガーは足跡に気付いた。
「本当だ・・・ひょっとするとグレースのお父さんかもしれませんね。」
「ああ・・そうだな。では訪ねてみようか?」
エドガーは肩についた雪をパッパッと払うと、ドアノッカーを掴んでノックした。
コンコン
「「・・・・・。」」
しかし、誰も屋敷から出てくる気配がない。
「何だ?聞こえなかったのだろうか?」
エドガーは首を傾げ、再度ドアをノックした。
「・・・。」
しかし、それでも返事は無い。だが雪の上には大きな足跡が残されているし、家を出て行った形跡の足跡は残されていない。なのに屋敷の中は異常な静けさに包まれている。
「・・・。」
エドガーは無言でドアノブを掴んで回すと、カチャリと音を立ててドアが開いた。
「開いた・・・。」
ルドルフが呟くと、エドガーが言った。
「・・中へ入ってみるか。」
「え?エドガー様っ?!」
ルドルフは慌ててエドガーを見ると、もう既に屋敷の中へ入り込んでいた。
まだ正午前だと言うのに、屋敷の中は薄暗く、しんと静まり返った室内は言い知れぬ恐ろしさを感じる。
2人でギシギシ鳴る床を踏みしめながら歩いていると、左の方からすすり泣きのような声が聞こえてきた。
「う・・・うう・・・。」
その声を聞いた2人は互いに頷きあうと、すすり泣きが聞こえる部屋へ向かい・・息を飲んだ。
「「!」」
「な・・何なんだ・・一体・・・。」
ルドルフは声を震わせた。
エドガーはグッと拳を握り締め、床に倒れているグレースを見た。
グレースの顔は土気色に代わり・・・醜く歪んでいた。目は大きく見開かられて赤く充血し・・・口からは泡を吹いていた。
そしてそのそばには両膝を床について、茫然と娘を見下ろしているグレースの父と・・・泣き崩れているグレースの母の姿があった。2人は屋敷の中に勝手に入ってきたエドガーとルドルフの事に気が付いていない。
(こ、これは・・・まさか・・・っ!)
エドガーは息を飲み・・・茫然としているグレースの父に静かに尋ねた。
「いったい・・・何があったんだ?グレースに・・何をしたんだ?」
するとグレースの父はポツリと呟いた。
「あ・・・悪魔を・・・。」
「「悪魔?」」
エドガーとルドルフは同時に声を上げた。
「娘に憑りついた・・・悪魔を・・俺が殺したんだ・・・。」
そして、力なく顔をあげるとエドガーとルドルフの顔を交互に見た―。
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