243 / 566
第11章 12 悪女グレース
しおりを挟む
「な・・何ですって・・イワンッ!あんたって人は・・どこまで間抜けなのよっ!」
グレースの部屋に彼女自身の怒声が響き渡る。
「ううう・・ご、ごめん・・グレース・・・。ル、ルドルフに駅で偶然に会って・・俺・・こ、怖くなって・・・。」
イワンはハリスに謝罪の手紙を書いて出してしまったことをついにグレースに告白してしまったのだ。そしてそれを聞いたグレースは当然烈火のごとく激怒した。
「この・・・っ!あんたが余計な真似をしたせいで・・ルドルフと・・よりにもよってあのヒルダの義理の兄がこの家にやって来たのよっ?!」
「だ、だけど・・俺は領主様には・・手紙の事皆に内緒にして下さいって・・・お願いしたんだよ・・?」
イワンのその言葉はますますグレースの怒りに火をそそぐだけだった。
「この・・間抜けっ!本当に・・・何て事してくれたのよ!だいたいねえ・・フィールズ家の当主はあんたの名前も知らないのよっ?!そんなあんたの手紙・・誰だって悪戯だと思って誰かに相談するに決まっているでしょう?!だからあの2人が私の処にやってきたのよ?分かってるのっ?!」
「うう・・ごめん・・・ごめんよ・・・グレース・・・・。」
イワンはボロボロと哀れなほどに泣き崩れている。そんなイワンを見てグレースは忌々し気に舌打をした。
(全く・・・よりにもよって・・・何でこの間抜けなイワンがカウベリーに残ったのよ・・。コリンやノラだったらこんなヘマはしなかったはずよ。なのに・・あの2人は卒業と同時に逃げるようにこの村を出て行って・・都会に就職してしまったし・・残ったのがこの馬鹿なイワンだったなんて・・!最悪だわ・・っ!」
グレースは思い切り軽蔑の目をイワンに向けると言った。
「いい?イワン・・・あの教会を燃やしたのは・・今のところヒルダとなっているけど・・ルドルフとエドガーは完全に私を疑っているわ。大体・・あの教会が焼け落ちた結果・・ヒルダがどうなってしまったか知っているでしょう?」
グレースの言葉に、イワンは泣きながら頷く。
「し・・・知ってるよ・・ヒ、ヒルダは家族の縁を切られて・・この村から嫌われて・・追い出されたんだろう・・?そのせいでヒルダのお母さんは病気になって・・そ、そうだ!グレース・・・お、俺・・・ヒルダらしき少女を駅で見かけたんだよ・・!」
「な・・何ですって?!どうしてその話をもっと早くしないのよっ!」
グレースの焦りはますますピークに達していた。
(まずいわ・・・ひょっとするとヒルダがここに戻って来たって言う事は・・・あの2人が何か手がかりを掴んだのかしら・・?犯人の目星でも見つけたとか・・?)
もう一刻の猶予もならないとグレースは思った。幸い、ノラもコリンも遠くの町に働きに行き、一度も里帰りしたことがないのだ。
(きっとあの2人は・・・もう二度とカウベリーには戻らないかも・・と言う事は・・。)
グレースの目の前には泣き崩れている頭の弱いイワンしかいない。
(そうよ・・・イワンには悪いけど・・・全ての罪を被ってもらえばいいのよ。だってもともとはヒルダの足の怪我も・・私があの場所で薪を落としたのも・・・全ての原因はイワンのせいなんだから・・!)
そしてグレースはルドルフを指さすと言った。
「いい・・・?何度も言うけどヒルダが足を怪我したのは、あんたが蜂の巣を叩き落として、ヒルダの乗っていた馬を驚かしたからよ。そして教会の火事は・・火のついた薪を握っていた私の腕をあんたが強く握りしめたから・・・腕が痛くなって薪を落としてしまった・・それも全てあんたのせいよ!」
「お・・・俺のせい・・?」
イワンの目からは後から後から涙が零れ落ちていく。
「ええ、そうよ。だから・・さっさとフィールズ家に言って自分の罪を全て告白してきなさいよっ!正直に言えば・・許してもらえるかもしれないでしょうっ?!」
グレースは心にもないことを言った。そんな事を言えばただで済むはずがないのは分かり切っていたが、イワンなら騙せると思ったのだ。
「う・・・・わ・・・分かった・・・よ・・。」
イワンはふらりと立ち上がり・・ヨロヨロとグレースの部屋を出て行った。
「ふん・・余計な手間をとらせて・・・・!」
そんなイワンの後ろ姿をグレースは忌々し気に言った。
けれど、この時のグレースはまだ何も分かっていなかった。
この後大事件が起こるという事に―。
グレースの部屋に彼女自身の怒声が響き渡る。
「ううう・・ご、ごめん・・グレース・・・。ル、ルドルフに駅で偶然に会って・・俺・・こ、怖くなって・・・。」
イワンはハリスに謝罪の手紙を書いて出してしまったことをついにグレースに告白してしまったのだ。そしてそれを聞いたグレースは当然烈火のごとく激怒した。
「この・・・っ!あんたが余計な真似をしたせいで・・ルドルフと・・よりにもよってあのヒルダの義理の兄がこの家にやって来たのよっ?!」
「だ、だけど・・俺は領主様には・・手紙の事皆に内緒にして下さいって・・・お願いしたんだよ・・?」
イワンのその言葉はますますグレースの怒りに火をそそぐだけだった。
「この・・間抜けっ!本当に・・・何て事してくれたのよ!だいたいねえ・・フィールズ家の当主はあんたの名前も知らないのよっ?!そんなあんたの手紙・・誰だって悪戯だと思って誰かに相談するに決まっているでしょう?!だからあの2人が私の処にやってきたのよ?分かってるのっ?!」
「うう・・ごめん・・・ごめんよ・・・グレース・・・・。」
イワンはボロボロと哀れなほどに泣き崩れている。そんなイワンを見てグレースは忌々し気に舌打をした。
(全く・・・よりにもよって・・・何でこの間抜けなイワンがカウベリーに残ったのよ・・。コリンやノラだったらこんなヘマはしなかったはずよ。なのに・・あの2人は卒業と同時に逃げるようにこの村を出て行って・・都会に就職してしまったし・・残ったのがこの馬鹿なイワンだったなんて・・!最悪だわ・・っ!」
グレースは思い切り軽蔑の目をイワンに向けると言った。
「いい?イワン・・・あの教会を燃やしたのは・・今のところヒルダとなっているけど・・ルドルフとエドガーは完全に私を疑っているわ。大体・・あの教会が焼け落ちた結果・・ヒルダがどうなってしまったか知っているでしょう?」
グレースの言葉に、イワンは泣きながら頷く。
「し・・・知ってるよ・・ヒ、ヒルダは家族の縁を切られて・・この村から嫌われて・・追い出されたんだろう・・?そのせいでヒルダのお母さんは病気になって・・そ、そうだ!グレース・・・お、俺・・・ヒルダらしき少女を駅で見かけたんだよ・・!」
「な・・何ですって?!どうしてその話をもっと早くしないのよっ!」
グレースの焦りはますますピークに達していた。
(まずいわ・・・ひょっとするとヒルダがここに戻って来たって言う事は・・・あの2人が何か手がかりを掴んだのかしら・・?犯人の目星でも見つけたとか・・?)
もう一刻の猶予もならないとグレースは思った。幸い、ノラもコリンも遠くの町に働きに行き、一度も里帰りしたことがないのだ。
(きっとあの2人は・・・もう二度とカウベリーには戻らないかも・・と言う事は・・。)
グレースの目の前には泣き崩れている頭の弱いイワンしかいない。
(そうよ・・・イワンには悪いけど・・・全ての罪を被ってもらえばいいのよ。だってもともとはヒルダの足の怪我も・・私があの場所で薪を落としたのも・・・全ての原因はイワンのせいなんだから・・!)
そしてグレースはルドルフを指さすと言った。
「いい・・・?何度も言うけどヒルダが足を怪我したのは、あんたが蜂の巣を叩き落として、ヒルダの乗っていた馬を驚かしたからよ。そして教会の火事は・・火のついた薪を握っていた私の腕をあんたが強く握りしめたから・・・腕が痛くなって薪を落としてしまった・・それも全てあんたのせいよ!」
「お・・・俺のせい・・?」
イワンの目からは後から後から涙が零れ落ちていく。
「ええ、そうよ。だから・・さっさとフィールズ家に言って自分の罪を全て告白してきなさいよっ!正直に言えば・・許してもらえるかもしれないでしょうっ?!」
グレースは心にもないことを言った。そんな事を言えばただで済むはずがないのは分かり切っていたが、イワンなら騙せると思ったのだ。
「う・・・・わ・・・分かった・・・よ・・。」
イワンはふらりと立ち上がり・・ヨロヨロとグレースの部屋を出て行った。
「ふん・・余計な手間をとらせて・・・・!」
そんなイワンの後ろ姿をグレースは忌々し気に言った。
けれど、この時のグレースはまだ何も分かっていなかった。
この後大事件が起こるという事に―。
0
お気に入りに追加
725
あなたにおすすめの小説
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
今さら救いの手とかいらないのですが……
カレイ
恋愛
侯爵令嬢オデットは学園の嫌われ者である。
それもこれも、子爵令嬢シェリーシアに罪をなすりつけられ、公衆の面前で婚約破棄を突きつけられたせい。
オデットは信じてくれる友人のお陰で、揶揄されながらもそれなりに楽しい生活を送っていたが……
「そろそろ許してあげても良いですっ」
「あ、結構です」
伸ばされた手をオデットは払い除ける。
許さなくて良いので金輪際関わってこないで下さいと付け加えて。
※全19話の短編です。
【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく
たまこ
恋愛
10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。
多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。
もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。
大好きな旦那様はどうやら聖女様のことがお好きなようです
古堂すいう
恋愛
祖父から溺愛され我儘に育った公爵令嬢セレーネは、婚約者である皇子から衆目の中、突如婚約破棄を言い渡される。
皇子の横にはセレーネが嫌う男爵令嬢の姿があった。
他人から冷たい視線を浴びたことなどないセレーネに戸惑うばかり、そんな彼女に所有財産没収の命が下されようとしたその時。
救いの手を差し伸べたのは神官長──エルゲンだった。
セレーネは、エルゲンと婚姻を結んだ当初「穏やかで誰にでも微笑むつまらない人」だという印象をもっていたけれど、共に生活する内に徐々に彼の人柄に惹かれていく。
だけれど彼には想い人が出来てしまったようで──…。
「今度はわたくしが恩を返すべきなんですわ!」
今まで自分のことばかりだったセレーネは、初めて人のために何かしたいと思い立ち、大好きな旦那様のために奮闘するのだが──…。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる