嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
226 / 566

第10章 9 アンナの計画

しおりを挟む
 エドガーとルドルフの長い話をアンナは黙って聞いていたが・・やがて話を聞き終えると激しく憤った。

「何ですって?!本当に・・何てグレースという女性は酷い人間なんでしょう!これでは・・・ヒルダ様があまりにもお気の毒ですわ・・。」

そしてハンカチで目を押さえるとシクシク泣き出した。これを見て慌てたのはルドルフとエドガーである。まさか2人の話でアンナが泣きだすとは思わなかったからである。

「お、落ち着くんだ。アンナ嬢、これは・・あくまで俺達の憶測の話なのだから。」

「ええ、そうですよ。アンナ様。まずは犯人がグレースだと言う証拠を見つけなければ何も話は始まりません。」

エドガーとルドルフは必死でアンナを宥める。するとアンナはキッと顔を上げ、2人を交互に見ると言った。

「証拠を見つける?あの憎たらしいメス猫の罪を暴く前に・・・このままではマーガレット様の命が尽きてしまうかもしれないのですよねっ?!グレースを追い詰めるよりも前にまずは最初にするべき事があるのではないですか?お2人は賢い方達なのに・・何故その事に気付かないのですか?!」

アンナは興奮しながらエドガーとルドルフに迫る。

「え・・・?最初にするべき事だって・・・?」

エドガーは首を傾げる。

「グレースの罪を暴く以外に優先する事があるのですか?」

ルドルフはアンナに尋ねた。

「ええ!そうです!それは・・・ヒルダ様を『カウベリー』に連れて来てお母様と会わせてあげる事ではありませんか?」

アンナの発言に2人は驚いた。

「え・・アンナ嬢、それはいくら何でも無理な話だ。」

「そうですよ。ヒルダ様は・・ここ『カウベリー』では領民たちに顔が知られているだけでなく・・・憎まれているのですよ?一歩でもこの地を踏んだことがばれればどんな結果になるか・・。」

言いながらルドルフはその時の事を想像し・・・身体を震わせた。

「ええ、そんな事はお2人の話で十分承知しております。でも・・誰がそのままの姿でヒルダ様を連れて来ると言いましたか?」

「「え・・?」」

「まだ分りませんか?ヒルダ様をどこから見ても別人にしか見えない程に変装させるのです。例えばカツラを被せたり、眼鏡を掛けさせたりと・・・。」

得意げに言うアンナにエドガーは言う。

「アンナ嬢・・・確かに素晴らしいアイデアだとは思うが、その計画には無理がある。どんな理由で今にも死にかけている母を・・・他所からやって来た人物に会わせられるんだい?そんな事は絶対に父が許さないだろう。」

「ええ、ですから私がここにいるのです。」

胸を張って言うアンナにエドガーとルドルフが首を傾げる。

「つまり・・・私の大切な客人としてこのお屋敷へ呼べばよいのです。私はエドガー様の婚約者です。病床のマーガレット様にも何度もお会いしております。私の大切な客人とすれば・・・ハリス様だって面会させてくれるのではありませんか?」

「フム・・・確かに言われてみれば・・・。」

「ええ・・名案かもしれないですね・・。」

エドガーとルドルフが頷く。

「ええ、そうです。私が今考えた計画ですが・・・まず、電話を掛けてヒルダ様と連絡を取るのです。ちなみに・・ヒルダ様と連絡を取る方法はありますか?」

アンナが尋ねるとルドルフが答えた。

「ああ、ヒルダ達が住むアパートメントの大家は電話を持っている。ヒルダに電話を入れる事は可能だ。」

「そうですか、ではエドガー様。ヒルダ様と連絡が取れ次第、私が直接『ロータス』へヒルダ様をお迎えに参ります。そして変装したヒルダ様を連れて『カウベリー』に戻ってきます。その後は・・・このお屋敷へ連れて来てヒルダ様とマーガレット様を会わせて差し上げるのです。どうでしょうか?」

アンナはエドガーとルドルフを交互に見つめた。そしてその話を聞いた2人は・・・この方法ならヒルダとマーガレットを会わせてあげる事が出来る様に思えた。

「ルドルフ・・・君はこの話・・・どう思う?」

「僕は・・名案だと思います。」

エドガーとルドルフは互いに頷くとアンナを見た。

「アンナ嬢・・・少々危険な真似をさせる事になってしまうかもしれないが・・。」

「力を貸して頂けますか?」

エドガーとルドルフはアンナに頭を下げた。

「ええ、私に任せて下さい。」

そしてアンナは笑みを浮かべた―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。 二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。 けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。 ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。 だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。 グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。 そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

【完】あなたから、目が離せない。

ツチノカヲリ
恋愛
入社して3年目、デザイン設計会社で膨大な仕事に追われる金目杏里(かなめあんり)は今日も徹夜で図面を引いていた。共に徹夜で仕事をしていた現場監理の松山一成(まつやまひとなり)は、12歳年上の頼れる男性。直属の上司ではないが金目の入社当時からとても世話になっている。お互い「人として」の好感は持っているものの、あくまで普通の会社の仲間、という間柄だった。ところがある夏、金目の30歳の誕生日をきっかけに、だんだんと二人の距離が縮まってきて、、、。 ・全18話、エピソードによってヒーローとヒロインの視点で書かれています。

貧乏令嬢はお断りらしいので、豪商の愛人とよろしくやってください

今川幸乃
恋愛
貧乏令嬢のリッタ・アストリーにはバート・オレットという婚約者がいた。 しかしある日突然、バートは「こんな貧乏な家は我慢できない!」と一方的に婚約破棄を宣言する。 その裏には彼の領内の豪商シーモア商会と、そこの娘レベッカの姿があった。 どうやら彼はすでにレベッカと出来ていたと悟ったリッタは婚約破棄を受け入れる。 そしてバートはレベッカの言うがままに、彼女が「絶対儲かる」という先物投資に家財をつぎ込むが…… 一方のリッタはひょんなことから幼いころの知り合いであったクリフトンと再会する。 当時はただの子供だと思っていたクリフトンは実は大貴族の跡取りだった。

【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮
恋愛
出会いは、ブライトン公爵邸で行われたガーデンパーティ。それまで婚約者候補の顔合わせのパーティに、一度も顔を出さなかったエレアーナが出席したのが始まりで。 彼女のあまりの美しさに、王太子レオンハルトと宰相の一人息子ケインバッハが声をかけるも、恋愛に興味がないエレアーナの対応はとてもあっさりしていて。 優しくて清廉潔白でちょっと意地悪なところもあるレオンハルトと、真面目で正義感に溢れるロマンチストのケインバッハは、彼女の心を射止めるべく、正々堂々と頑張っていくのだが・・・。 王太子妃の座を狙う政敵が、エレアーナを狙って罠を仕掛ける。 忍びよる魔の手から、エレアーナを無事、守ることは出来るのか? 彼女の心を射止めるのは、レオンハルトか、それともケインバッハか? お話は、のんびりゆったりペースで進みます。

【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?

ここ
恋愛
アリサの婚約者ミゲルは、婚約のときから、平凡なアリサが気に入らなかった。 アリサはそれに気づいていたが、政略結婚に逆らえない。 15歳と16歳になった2人。ミゲルには恋人ができていた。マーシャという綺麗な令嬢だ。邪魔なアリサにこわい思いをさせて、婚約解消をねらうが、事態は思わぬ方向に。

処理中です...