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第10章 7 エドガーの思い
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「そうだな・・・。でも・・俺はある程度予想していた。グレースは証拠を持って来いと言い出すのではないかと。」
エドガーは冷静に言うと、紅茶を飲んだ。
「え・・・?そうなのですか・・?」
「ああ、考えてもみろ。何と言ってもヒルダはここ『カウベリー』の伯爵家の娘だぞ?それなのに教会が焼失した事件で犯人がヒルダだと領民達に知れ渡った時・・・この地で一番身分の高いヒルダにさえ、皆は容赦しなかった。父が・・それこそ親子の縁を切り、爵位を剥奪し、遠くの地に追いやっても・・・いまだにヒルダの名前を口に出すことも出来ないありさまだ。グレースの母親の様子を見ただろう?我が子が犯人だと分かる前は・・ヒルダの事を憎み切っていたじゃないか。まぁ・・そこには色々と個人的感情も含まれてはいたが・・・。」
「確かに・・そうですね。現に他の人たちも・・・誰もがヒルダ様の事を口にしない。僕の・・母も・・ハリス様の執事をしている父だって・・。」
ルドルフはテーブルの上で拳を握り締めた。
「そんな状況でグレースが火事の犯人は私でしたと白状すると思うか?・・うん、これは・・美味しいな。」
エドガーは紅茶のマフィンを口に入れると言った。
「た、確かに・・グレースが白状出来るような状況じゃないかもしれませんね・・。」
「ああ、そうだ。もし、本当の犯人がグレースだった事が知れ渡れば・・ただでは済まない。ヒルダ以上の酷い扱いを受けるだろう。何せ、仮にも伯爵令嬢のヒルダに罪をかぶせたまま・・2年ものうのうとしていたんだから。領民たちの怒りは爆発するだろうな。どんなことになるか・・正直俺にも想像がつかないほどの・・。」
エドガーはサンドイッチに手を伸ばすと、ルドルフに言った。
「ほら、ルドルフ。お前も食べろ。」
「は、はい・・・頂きます・・。」
ルドルフは目の前のスコーンに手を伸ばすと口に入れた。
「・・・美味しいです・・。」
「そうだろう?フィールズ家のシェフは・・・料理が上手なんだ。」
エドガーはにこにこしながら言うが・・突然フッと悲し気な顔を見せた。
「エドガー様・・・?どうしたのですか・・?」
「いや・・今、ヒルダの事を思い出したんだ・・・。」
「ヒルダ様の事を・・?」
「ああ・・・ヒルダがこの地を追われて2年・・・一度も戻ることを許されず・・・いくらカミラが付いていてくれるとは言え・・まだたった17歳の少女なんだ。どんなに辛い思いをしているかと思うと・・そしてこの料理をヒルダは口にする事さえ出来ない。そう思うと・・ヒルダが哀れで・・・。」
「エドガー様・・。」
ルドルフはその時、初めてエドガーが感情をあらわにした姿を見た。
(間違いない・・・きっとエドガー様は・・ヒルダ様の事を・・・。だけど・・僕もヒルダ様の事を・・・。)
「あ、あの・・エドガー様・・・。」
ルドルフが言いかけると、エドガーが口を開いた。
「悪かったな。ルドエルフ・・・妙な姿を見せてしまって。」
次の瞬間、そこにいたのはいつもと変わらぬエドガーの姿だった。
「ルドルフ、君も母の今の姿を見ただろう?弱り切って・・・もうかなり生きるか死ぬかのぎりぎりの瀬戸際まで来ているんだ。」
「ええ・・・そうですね・・。」
「父は必死で有能な医者を探しているが・・・俺は・・父には悪いが、そんな事をしても無意味だと思う。やはり母を治すには・・ヒルダが必要だ。」
「!」
「母はヒルダをとても恋しがって・・会いたがっている。そんなのは当然だ。たった1人きりの娘なんだからな。それなのに・・ヒルダは『カウベリー』ですっかり嫌われ・・・この地に戻る事を許されない。そして母は病弱でもう動く事すら出来ないでいる。だから余計・・病気が進行してしまうんだ。けれど・・・もしヒルダに会えたら?抱きしめる事が出来たら?きっと・・母は生きる希望を見出して・・病気が快復に向かって行くと思う。」
「エドガー様・・・。」
「ルドルフ、協力してくれ。この地で頼れる相手は・・もう君しかいないんだ。」
エドガーは頭を下げてきた―。
エドガーは冷静に言うと、紅茶を飲んだ。
「え・・・?そうなのですか・・?」
「ああ、考えてもみろ。何と言ってもヒルダはここ『カウベリー』の伯爵家の娘だぞ?それなのに教会が焼失した事件で犯人がヒルダだと領民達に知れ渡った時・・・この地で一番身分の高いヒルダにさえ、皆は容赦しなかった。父が・・それこそ親子の縁を切り、爵位を剥奪し、遠くの地に追いやっても・・・いまだにヒルダの名前を口に出すことも出来ないありさまだ。グレースの母親の様子を見ただろう?我が子が犯人だと分かる前は・・ヒルダの事を憎み切っていたじゃないか。まぁ・・そこには色々と個人的感情も含まれてはいたが・・・。」
「確かに・・そうですね。現に他の人たちも・・・誰もがヒルダ様の事を口にしない。僕の・・母も・・ハリス様の執事をしている父だって・・。」
ルドルフはテーブルの上で拳を握り締めた。
「そんな状況でグレースが火事の犯人は私でしたと白状すると思うか?・・うん、これは・・美味しいな。」
エドガーは紅茶のマフィンを口に入れると言った。
「た、確かに・・グレースが白状出来るような状況じゃないかもしれませんね・・。」
「ああ、そうだ。もし、本当の犯人がグレースだった事が知れ渡れば・・ただでは済まない。ヒルダ以上の酷い扱いを受けるだろう。何せ、仮にも伯爵令嬢のヒルダに罪をかぶせたまま・・2年ものうのうとしていたんだから。領民たちの怒りは爆発するだろうな。どんなことになるか・・正直俺にも想像がつかないほどの・・。」
エドガーはサンドイッチに手を伸ばすと、ルドルフに言った。
「ほら、ルドルフ。お前も食べろ。」
「は、はい・・・頂きます・・。」
ルドルフは目の前のスコーンに手を伸ばすと口に入れた。
「・・・美味しいです・・。」
「そうだろう?フィールズ家のシェフは・・・料理が上手なんだ。」
エドガーはにこにこしながら言うが・・突然フッと悲し気な顔を見せた。
「エドガー様・・・?どうしたのですか・・?」
「いや・・今、ヒルダの事を思い出したんだ・・・。」
「ヒルダ様の事を・・?」
「ああ・・・ヒルダがこの地を追われて2年・・・一度も戻ることを許されず・・・いくらカミラが付いていてくれるとは言え・・まだたった17歳の少女なんだ。どんなに辛い思いをしているかと思うと・・そしてこの料理をヒルダは口にする事さえ出来ない。そう思うと・・ヒルダが哀れで・・・。」
「エドガー様・・。」
ルドルフはその時、初めてエドガーが感情をあらわにした姿を見た。
(間違いない・・・きっとエドガー様は・・ヒルダ様の事を・・・。だけど・・僕もヒルダ様の事を・・・。)
「あ、あの・・エドガー様・・・。」
ルドルフが言いかけると、エドガーが口を開いた。
「悪かったな。ルドエルフ・・・妙な姿を見せてしまって。」
次の瞬間、そこにいたのはいつもと変わらぬエドガーの姿だった。
「ルドルフ、君も母の今の姿を見ただろう?弱り切って・・・もうかなり生きるか死ぬかのぎりぎりの瀬戸際まで来ているんだ。」
「ええ・・・そうですね・・。」
「父は必死で有能な医者を探しているが・・・俺は・・父には悪いが、そんな事をしても無意味だと思う。やはり母を治すには・・ヒルダが必要だ。」
「!」
「母はヒルダをとても恋しがって・・会いたがっている。そんなのは当然だ。たった1人きりの娘なんだからな。それなのに・・ヒルダは『カウベリー』ですっかり嫌われ・・・この地に戻る事を許されない。そして母は病弱でもう動く事すら出来ないでいる。だから余計・・病気が進行してしまうんだ。けれど・・・もしヒルダに会えたら?抱きしめる事が出来たら?きっと・・母は生きる希望を見出して・・病気が快復に向かって行くと思う。」
「エドガー様・・・。」
「ルドルフ、協力してくれ。この地で頼れる相手は・・もう君しかいないんだ。」
エドガーは頭を下げてきた―。
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