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第9章 6 ルドルフの帰郷 6
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その夜、一家団欒の食事の席での事だった。
「ルドルフ、本当にお前は優秀な息子だ。『カウベリー』出身で一番優秀な息子だと皆から褒められているんだ。私も鼻が高いよ。そうそう、ハリス様も大層喜んでくださっているんだ。」
マルコはワインを飲みながら嬉しそうにルドルフに話しかけてきた。
カチャーンッ
ルドルフはハリスの名を聞いて、手にしていたフォークを皿に取り落としてしまった。
「まあ、どうしたの?ルドルフ。ひょっとして・・口に合わなかったの?」
母が心配そうに声を掛けてくる。
「ううん、そんな事は無いよ。とっても美味しいよ・・やっぱり母さんの作るムニエルは最高だよ。」
ルドルフは気を取り直してフォークを握りなおすと言った。
「そうだ、ルドルフ。明日もエドガー様の処へ行くのだろう?私と一緒にフィールズ家に行こう。ハリス様が成長したお前に会いたがってるんだ。」
マルコはバゲットにガーリックバターを塗りながら言うと、口に入れた。
(旦那様・・・。ヒルダ様を一方的に責め立て・・・絶縁してこの地を追い出した方・・。)
「どうしても・・会わないと駄目・・・なのかな・・・?」
ルドルフは苦し気に言うと、マルコは驚きの声を上げた。
「何を言い出すのだ、ルドルフ。我々がどれほどハリス様から恩義を受けているのか分からないのか?」
「・・・分かってるよ。だけど・・僕は・・・。」
ルドルフはテーブルの上でグッと拳を握り締めた。
「ルドルフ・・・お願い、父さんの言うとおりにして頂戴。父さんは旦那様の執事なのよ?」
「そうだ、ルドルフ。そもそもお前が都会の・・しかも一流高校に通えているのは誰のお陰か・・・胸に手を当てて良く考えるのだ。」
マルコはすっかり酔いが冷めてしまったのか・・・神妙な面持ちでルドルフに言う。
「わ・・・分かりました・・。」
まだ17歳で力の無いルドルフは・・両親の言葉に従うしかなかった―。
その夜―
暖炉の燃える温かい部屋でルドルフはじっと窓の外を眺めていた。夜になり気温が下がった為か、ますます降り積もる雪の量は増えてゆく。
(ヒルダ様は・・・今頃どのように過ごされているのだろうか・・?足の具合は大丈夫なのだろうか・・・?)
ルドルフは窓ガラスに映る自分の姿をじっと見つめ・・・溜息をつくのだった―。
翌朝―
「ん・・・。」
ルドルフはカーテンの隙間から差し込む太陽の光によって目が覚めた。
「明るい・・・・雪がやんだのかな?」
ベッドから起き上がり、室内履きを履くとルドルフは窓に近寄りカーテンを開けた。
「うわ・・・すごく積もっているな・・・。」
一晩中雪は降り続いたのだろうか・・外は一面銀世界であった。こんもりと綿が乗った様に盛り上がった大地、雪の花を咲かせた木々・・・それらがまぶしく照り付ける太陽によってキラキラと光り輝いている。
窓の外を確認したルドルフはクローゼットに向かうとシャツやセーター、ズボン等の着替えを出すと手早く着替え・・・父と母のいるリビングへと向かった。
「おはよう、父さん。母さん。」
ルドルフは部屋に入ると父と母に朝の挨拶をした。ちょうど父はコーヒーを飲みながら新聞を読んでおり、母は料理をテーブルの上に並べ始めていた。
「ああ、おはようルドルフ。食事が済んだらフィールズ家に向かうからな。」
マルコは新聞から目を離すとルドルフに言う。
「・・・うん、分かってるよ。」
ためらいがちに返事をすると母が言った。
「ルドルフ、食事の前に顔を洗ってらっしゃい。今朝はルドルフの好きなパンプキンスープを用意したわ。」
「ありがとう、母さん。」
ルドルフは母に礼を述べると、洗面台へ向かった―。
「ルドルフ、本当にお前は優秀な息子だ。『カウベリー』出身で一番優秀な息子だと皆から褒められているんだ。私も鼻が高いよ。そうそう、ハリス様も大層喜んでくださっているんだ。」
マルコはワインを飲みながら嬉しそうにルドルフに話しかけてきた。
カチャーンッ
ルドルフはハリスの名を聞いて、手にしていたフォークを皿に取り落としてしまった。
「まあ、どうしたの?ルドルフ。ひょっとして・・口に合わなかったの?」
母が心配そうに声を掛けてくる。
「ううん、そんな事は無いよ。とっても美味しいよ・・やっぱり母さんの作るムニエルは最高だよ。」
ルドルフは気を取り直してフォークを握りなおすと言った。
「そうだ、ルドルフ。明日もエドガー様の処へ行くのだろう?私と一緒にフィールズ家に行こう。ハリス様が成長したお前に会いたがってるんだ。」
マルコはバゲットにガーリックバターを塗りながら言うと、口に入れた。
(旦那様・・・。ヒルダ様を一方的に責め立て・・・絶縁してこの地を追い出した方・・。)
「どうしても・・会わないと駄目・・・なのかな・・・?」
ルドルフは苦し気に言うと、マルコは驚きの声を上げた。
「何を言い出すのだ、ルドルフ。我々がどれほどハリス様から恩義を受けているのか分からないのか?」
「・・・分かってるよ。だけど・・僕は・・・。」
ルドルフはテーブルの上でグッと拳を握り締めた。
「ルドルフ・・・お願い、父さんの言うとおりにして頂戴。父さんは旦那様の執事なのよ?」
「そうだ、ルドルフ。そもそもお前が都会の・・しかも一流高校に通えているのは誰のお陰か・・・胸に手を当てて良く考えるのだ。」
マルコはすっかり酔いが冷めてしまったのか・・・神妙な面持ちでルドルフに言う。
「わ・・・分かりました・・。」
まだ17歳で力の無いルドルフは・・両親の言葉に従うしかなかった―。
その夜―
暖炉の燃える温かい部屋でルドルフはじっと窓の外を眺めていた。夜になり気温が下がった為か、ますます降り積もる雪の量は増えてゆく。
(ヒルダ様は・・・今頃どのように過ごされているのだろうか・・?足の具合は大丈夫なのだろうか・・・?)
ルドルフは窓ガラスに映る自分の姿をじっと見つめ・・・溜息をつくのだった―。
翌朝―
「ん・・・。」
ルドルフはカーテンの隙間から差し込む太陽の光によって目が覚めた。
「明るい・・・・雪がやんだのかな?」
ベッドから起き上がり、室内履きを履くとルドルフは窓に近寄りカーテンを開けた。
「うわ・・・すごく積もっているな・・・。」
一晩中雪は降り続いたのだろうか・・外は一面銀世界であった。こんもりと綿が乗った様に盛り上がった大地、雪の花を咲かせた木々・・・それらがまぶしく照り付ける太陽によってキラキラと光り輝いている。
窓の外を確認したルドルフはクローゼットに向かうとシャツやセーター、ズボン等の着替えを出すと手早く着替え・・・父と母のいるリビングへと向かった。
「おはよう、父さん。母さん。」
ルドルフは部屋に入ると父と母に朝の挨拶をした。ちょうど父はコーヒーを飲みながら新聞を読んでおり、母は料理をテーブルの上に並べ始めていた。
「ああ、おはようルドルフ。食事が済んだらフィールズ家に向かうからな。」
マルコは新聞から目を離すとルドルフに言う。
「・・・うん、分かってるよ。」
ためらいがちに返事をすると母が言った。
「ルドルフ、食事の前に顔を洗ってらっしゃい。今朝はルドルフの好きなパンプキンスープを用意したわ。」
「ありがとう、母さん。」
ルドルフは母に礼を述べると、洗面台へ向かった―。
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