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第6章 12 騙されたヒルダ
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5時間目のホームルームが始まった。担任教師は教壇に立つと言った。
「みんな、5時間目の授業はホームルームだ。2週間後に『ニトル』という島で全学年全員参加の2泊3日のオリエンテーリングが開催される。これはクラス対抗戦になっている。このクラスは特進クラス、だから絶対に優勝しなければならない。では、マイク。前に出てきてくれ。」
「はい。」
名前を呼ばれたマイクは自分の顔程の大きさの箱を持って教壇に立つと言った。
「みんな、聞いてくれ。僕たちは必ず優勝しなければならない。この大会は男女問わず2人1組のペアになる。まずはそれをくじ引きで決めたいと思うんだ。」
そして持っていた箱を教壇の机に置くと言った。
「組み合わせは公平にこの中のくじで決めたいと思う。同じ番号が2枚ずつ人数分書いてあるから、1人ずつくじを引いてくれるかい?」
しかし誰かが反対意見を言った。
「くじ引きなんかやめろよ。それぞれ相性があるだろうが。組みたい相手となるべきだろう?」
「それはダメだよ。僕たちは昨日、クラスメイトになったばかりで、知らない者同士が多いだろう?中には知り合いが誰もいない転校生もいるし?」
マイクはルドルフを見ながら言う。
「だから、公平にくじ引きで決めるのさ。これが一番手っ取り早い。」
マイクは箱をポンポンと叩きながら言う。そこまで言われれば誰も意見することは出来なかった。
「よし、それじゃ僕が箱を持ってみんなの席へ行くよ。」
そしてマイクは箱を持つと、廊下よりの一番前の席の生徒から箱を持って順番に回り始めた。その様子をクラスの生徒たちはざわめき始めた。
「ねえ、ヒルダ。どうしてマイクは自分で箱を持って回るのかしらね?」
マドレーヌはヒルダに尋ねた。
「さ、さあ・・・でも言いそびれてしまったわ・・オリエンテーリングには参加できないって・・。」
マイクが何を考えているかも分からなかったが、一番困ったのはオリエンテーリング不参加を表明することが出来なかったことだ。
(困ったわ・・どうしたらいいのかしら・・。)
ヒルダは不安に思ってうつむいていると、不意に声を掛けられた。
「ヒルダ。」
顔を上げると、いつの間にかそこにはマイクが立っていた。
「ヒルダは引かなくてもいいよ。」
小声でささやいていくる。
「え?」
「君は足が不自由で参加は無理だろう?だから引かなくていいよ。」
それだけ言うとマイクは次の席へと移動する。他の生徒たちはヒルダがくじを引かなかったことに気付いていないが、ルドルフだけはじっと見つめていた。
(マイク・・・・ヒルダ様にはくじを引かせなかった・・・。一体何を考えているんだ・・・?)
やがて全員がくじを引いたころには教室中はざわめきが大きくなっていた。マイクは教壇に戻ると言った。
「みんな、聞いてくれっ!それじゃ、1番のペアから順番に教壇の前に並んでくれないか?」
マイクは声を張り上げて指示し・・・やがて全員が相手を確認する事となった。
一方のヒルダはくじを引いていないので1人居心地が悪そうに座っていると、教師がヒルダのもとにやってきて尋ねた。
「ヒルダ。君はどうして並ばないんだ?」
「あ、あの・・・私は足が不自由なのでマイクがくじを引かなくていいと言ってくれたので・・。」
するとマイクが会話を聞いていたのか、ヒルダのもとへとやってきた。
「ヒルダは僕とペアになるんだよ。クラス委員長の僕がヒルダをサポートしてあげるから安心して任せてよ。」
そして笑みを浮かべた。
「・・・・。」
(ひどいわ・・・マイク・・・私をだますなんて・・・。)
ヒルダは俯いた。そんな様子のヒルダを見たマイクは次にルドルフに視線を移す。
ルドルフは鋭い目でマイクを睨んでいたが、それを見た彼は勝ち誇ったかのような笑みをルドルフに向けた。
(マイク・・・よくもヒルダ様を・・・っ!)
ルドルフは唇を噛み、悔しそうにマイクを睨みつけるのだった―。
「みんな、5時間目の授業はホームルームだ。2週間後に『ニトル』という島で全学年全員参加の2泊3日のオリエンテーリングが開催される。これはクラス対抗戦になっている。このクラスは特進クラス、だから絶対に優勝しなければならない。では、マイク。前に出てきてくれ。」
「はい。」
名前を呼ばれたマイクは自分の顔程の大きさの箱を持って教壇に立つと言った。
「みんな、聞いてくれ。僕たちは必ず優勝しなければならない。この大会は男女問わず2人1組のペアになる。まずはそれをくじ引きで決めたいと思うんだ。」
そして持っていた箱を教壇の机に置くと言った。
「組み合わせは公平にこの中のくじで決めたいと思う。同じ番号が2枚ずつ人数分書いてあるから、1人ずつくじを引いてくれるかい?」
しかし誰かが反対意見を言った。
「くじ引きなんかやめろよ。それぞれ相性があるだろうが。組みたい相手となるべきだろう?」
「それはダメだよ。僕たちは昨日、クラスメイトになったばかりで、知らない者同士が多いだろう?中には知り合いが誰もいない転校生もいるし?」
マイクはルドルフを見ながら言う。
「だから、公平にくじ引きで決めるのさ。これが一番手っ取り早い。」
マイクは箱をポンポンと叩きながら言う。そこまで言われれば誰も意見することは出来なかった。
「よし、それじゃ僕が箱を持ってみんなの席へ行くよ。」
そしてマイクは箱を持つと、廊下よりの一番前の席の生徒から箱を持って順番に回り始めた。その様子をクラスの生徒たちはざわめき始めた。
「ねえ、ヒルダ。どうしてマイクは自分で箱を持って回るのかしらね?」
マドレーヌはヒルダに尋ねた。
「さ、さあ・・・でも言いそびれてしまったわ・・オリエンテーリングには参加できないって・・。」
マイクが何を考えているかも分からなかったが、一番困ったのはオリエンテーリング不参加を表明することが出来なかったことだ。
(困ったわ・・どうしたらいいのかしら・・。)
ヒルダは不安に思ってうつむいていると、不意に声を掛けられた。
「ヒルダ。」
顔を上げると、いつの間にかそこにはマイクが立っていた。
「ヒルダは引かなくてもいいよ。」
小声でささやいていくる。
「え?」
「君は足が不自由で参加は無理だろう?だから引かなくていいよ。」
それだけ言うとマイクは次の席へと移動する。他の生徒たちはヒルダがくじを引かなかったことに気付いていないが、ルドルフだけはじっと見つめていた。
(マイク・・・・ヒルダ様にはくじを引かせなかった・・・。一体何を考えているんだ・・・?)
やがて全員がくじを引いたころには教室中はざわめきが大きくなっていた。マイクは教壇に戻ると言った。
「みんな、聞いてくれっ!それじゃ、1番のペアから順番に教壇の前に並んでくれないか?」
マイクは声を張り上げて指示し・・・やがて全員が相手を確認する事となった。
一方のヒルダはくじを引いていないので1人居心地が悪そうに座っていると、教師がヒルダのもとにやってきて尋ねた。
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するとマイクが会話を聞いていたのか、ヒルダのもとへとやってきた。
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そして笑みを浮かべた。
「・・・・。」
(ひどいわ・・・マイク・・・私をだますなんて・・・。)
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ルドルフは鋭い目でマイクを睨んでいたが、それを見た彼は勝ち誇ったかのような笑みをルドルフに向けた。
(マイク・・・よくもヒルダ様を・・・っ!)
ルドルフは唇を噛み、悔しそうにマイクを睨みつけるのだった―。
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