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第6章 9 カミラへの報告

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「へえ~ここがヒルダが住んでいるアパートメントなのね?」

マドレーヌがヒルダの住んでいるアパートメントを見上げると言った。

「ええ、そうなの。ここの1階に姉と2人で住んでるのよ。」

「いいじゃない、可愛らしい建物で。それにお店もスーパーも近くにあるから便利よね。」

「ええ、とても便利な場所だから気に入ってるわ。」

「そうよね。あ、ヒルダ。テスト前に一緒に貴女と勉強したいのだけど・・今度からいいかしら?」

マドレーヌの提案にヒルダは少し考えたが返事をした。

「ええ、いいいわよ。」

「良かった、ありがとう。その時は是非我が家に来てくれる?お茶を御馳走するから。それじゃさよなら。ヒルダ。」

「さよなら、マドレーヌ。」

そして2人はヒルダのアパートメントの前で別れた―。



 夕方5時半―

カミラが仕事から帰宅してきた。

「ただいま帰りました。ヒルダ様。」

カミラがキッチンでエプロンをつけて料理をしているヒルダの元へやってきた。

「お帰りなさい、カミラ。」

「まあ・・・ヒルダ様。今夜もお食事の用意をして下さったのですか?学校も始まって勉強も忙しくなるというのに・・・。」

カミラは申し訳なさそうに言う。

「いいのよ、カミラ。そんな事気にしないで。だって私の方が早くに家に帰ってくるし、それに私・・・・最近お料理が好きになってきたの。なので学校卒業後はどこかレストランで働かせて貰うのもいいかしらと思っているのよ。」

「ヒルダ様・・・。」

カミラはヒルダの境遇を思うと、いつも気の毒でならなかった。本来であればヒルダは伯爵令嬢なのだ。普通伯爵令嬢と言えば、高校卒業後は上の大学へ進学するか、もしくは自宅で花嫁修業をする立場にあるべきなのに、高校を卒業すればヒルダの進路は就職しかない。そしていくらヒルダを好いてくれる男性がいたとしても、左足の怪我のせいで結婚まで至ることは難しいだろう。下手をすればヒルダは一生1人で生きていかなければならないのだ。だが、カミラには覚悟があった。

(大丈夫。私だけは絶対にヒルダ様をお1人にはさせませんから・・・。)

「カミラ。今夜はね、ミートローフを作ってみたの。もうすぐ焼けると思うから夕食にしましょう?」

ヒルダはカミラに声を掛けた。

「まあ。ミートローフですか?おいしそうですね。それでは着替えてまいりますね。」

カミラはヒルダに告げると自室へ向かった。



やがてミートローフが焼き上がり、カミラとヒルダは2人で食卓を囲んでいた。
 
「ヒルダ様。このミートローフ・・とてもおいしいですね。すっかりお料理が上手になられましたね。」

カミラは熱々のミートローフを一口食べると言った。

「本当?お料理上手なカミラに言われると嬉しいわ。でもまだまだレパートリーが少ないから、もっとお料理頑張るわ。」

ヒルダはサラダを取り分けながら言う。

「そう言えばヒルダ様。クラス分けはどうでしたか?」

「ええ、特進クラスに入ることが出来たわ。お兄様の期待に添える事が出来たの。」

ヒルダの言葉にカミラは笑顔で言う。

「それはきっとエドガー様もお喜びになられますね。早速お手紙を書かれたら良いですよ。」

「ええ。それで・・・カミラ。実はもう一つ重要な話があるの。」

「重要な話・・ですか?どうされたのですか?」

「それが・・・特進クラスにルドルフが現れたのよ。転入生として・・。」

「え・・?!ルドルフ様が・・?!」

カミラはヒルダの話に衝撃を受け、思わずナイフを床に落としてしまった。



その頃―

ヒルダの住むアパートメントの外から、じっと明るい部屋の窓を見つめているルドルフの姿がそこにあった。家庭教師のアルバイトが終わり、エドガーからヒルダの住所を聞いていたルドルフはどうしてもヒルダの住む場所を見ておきたかったのだ。

「ヒルダ様・・・・。今はここに・・・住んでいるのですね・・。」

ルドルフは悲し気に窓を見つめていたが、溜息をつくと学生寮へと帰っていった―。
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