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第5章 1 ヒルダの故郷『カウベリー』①
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「お帰りなさいませ。エドガー様。」
フィールズ家の邸宅に戻ってきたエドガーをエントランスで迎えるのは父ハリスの執事、マルコである。
「父さんはまだ帰ってきていないのか?」
エドガーは脱いだ上着とトランクケースを預けながら尋ねた。
「はい、旦那様は明朝の汽車でお戻りになられるそうです。新規の貿易先との交渉が少々長引いたようですね。」
マルコはすっかり執事の仕事が板につき、てきぱきと返事をする。
「母さんの具合はどうだい?」
「はい、奥様はエドガー様が出発された日から、大分お元気になられた御様子です。エドガー様のお帰りを今か今かと待ちわびておられましたよ。」
「そうか・・・。」
エドガーの口元に笑みが浮かぶ。それに気づいたマルコが首をかしげる。
「エドガー様?何か旅先で良い事でもございましたか?」
「ああそうだ。母さんが喜ぶ・・最高のプレゼントがあるんだ。すぐに母さんの所へ行ってくる。」
エドガーはマルコにその事を告げると、足早に母、マーガレットの部屋へと向かった。
マーガレットは窓から暖かい日差しの差し込む部屋でロッキングチェアに座り、編み物をしていた。それは毛糸の靴下でピンク色の毛糸だった。
鼻歌を歌いながらマーガレットは編み物をしていると、部屋をノックの音がした。
コンコン
「僕です。エドガーです。」
「まあ!エドガー?すぐに中へ入って頂戴。」
すると部屋のドアは開けられ、エドガーが室内へはいってきた。エドガーはドアを閉め、マーガレットに近づくと言った。
「ただいま戻りました、お母様。」
「まあ。お帰りさない、エドガー。長旅、本当にお疲れ様。それで、どうだった?あの娘・・・ヒルダの様子は?」
「はい、カミラの手紙の時よりも大分元気になっていました。親しい友人達も何人か出来ていましたし、足の方もだいぶ機能が回復してきたようですよ。杖なしで歩いている場面もありましたから。」
「まあ・・・そうだったのね・・。」
マーガレットは瞳をキラキラさせながら話を聞いている。エドガーは手に持っていたヒルダから預かってきた手紙をマーガレットに手渡した。
「お母様、ヒルダから手紙を預かってきました。」
「まあ・・・こ、この手紙は・・ヒルダからなの?」
マーガレットは震える手で手紙を受け取る。
「はい、私がヒルダに頼んで手紙を書いてもらいました。7枚にもわたって書いたそうですよ。」
「まあ・・そんなに・・・?」
エドガーは笑みを浮かべると言った。
「私は席を外しますので、どうぞごゆっくりお読み下さい。」
「ありがとう、エドガー。」
「いいえ、それでは失礼致します。」
エドガーは頭を下げると部屋を後にし、父ハリスの執務室へと向かった。ハリスがいない間はエドガーが領主代行を務めなければならないのだ。今ハリスは外国へ新しい茶葉の貿易先を求めて船旅をしており、本日中には帰国予定となっている。実は父ハリスの不在を狙ってエドガーは思い切ってヒルダの住む『ロータス』を尋ねたのだった。今からエドガーにはハリスの代わりに書類に目を通し、サインをする仕事が待っている。
エドガ―が執務室へ行くと、既にそこにはマルコの姿があった。しかし、見慣れない若者の姿も一緒だった。
(誰だ・・・あの若者は。初めて見る顔だな・・。)
エドガーは立ち止まってマルコと、隣に立つ若者を見つめると、2人は視線に気づいたのか、頭を下げてきた。
「エドガー様。お待ちしておりました。」
マルコが頭を下げると、若者も一緒に頭を下げる。エドガーは2人に近づくと、若者に声を掛けた。
「君は・・誰だ?」
「はい、僕はルドルフと申します。初めまして。」
そしてルドルフは会釈をすると、エドガーを見つめた―。
フィールズ家の邸宅に戻ってきたエドガーをエントランスで迎えるのは父ハリスの執事、マルコである。
「父さんはまだ帰ってきていないのか?」
エドガーは脱いだ上着とトランクケースを預けながら尋ねた。
「はい、旦那様は明朝の汽車でお戻りになられるそうです。新規の貿易先との交渉が少々長引いたようですね。」
マルコはすっかり執事の仕事が板につき、てきぱきと返事をする。
「母さんの具合はどうだい?」
「はい、奥様はエドガー様が出発された日から、大分お元気になられた御様子です。エドガー様のお帰りを今か今かと待ちわびておられましたよ。」
「そうか・・・。」
エドガーの口元に笑みが浮かぶ。それに気づいたマルコが首をかしげる。
「エドガー様?何か旅先で良い事でもございましたか?」
「ああそうだ。母さんが喜ぶ・・最高のプレゼントがあるんだ。すぐに母さんの所へ行ってくる。」
エドガーはマルコにその事を告げると、足早に母、マーガレットの部屋へと向かった。
マーガレットは窓から暖かい日差しの差し込む部屋でロッキングチェアに座り、編み物をしていた。それは毛糸の靴下でピンク色の毛糸だった。
鼻歌を歌いながらマーガレットは編み物をしていると、部屋をノックの音がした。
コンコン
「僕です。エドガーです。」
「まあ!エドガー?すぐに中へ入って頂戴。」
すると部屋のドアは開けられ、エドガーが室内へはいってきた。エドガーはドアを閉め、マーガレットに近づくと言った。
「ただいま戻りました、お母様。」
「まあ。お帰りさない、エドガー。長旅、本当にお疲れ様。それで、どうだった?あの娘・・・ヒルダの様子は?」
「はい、カミラの手紙の時よりも大分元気になっていました。親しい友人達も何人か出来ていましたし、足の方もだいぶ機能が回復してきたようですよ。杖なしで歩いている場面もありましたから。」
「まあ・・・そうだったのね・・。」
マーガレットは瞳をキラキラさせながら話を聞いている。エドガーは手に持っていたヒルダから預かってきた手紙をマーガレットに手渡した。
「お母様、ヒルダから手紙を預かってきました。」
「まあ・・・こ、この手紙は・・ヒルダからなの?」
マーガレットは震える手で手紙を受け取る。
「はい、私がヒルダに頼んで手紙を書いてもらいました。7枚にもわたって書いたそうですよ。」
「まあ・・そんなに・・・?」
エドガーは笑みを浮かべると言った。
「私は席を外しますので、どうぞごゆっくりお読み下さい。」
「ありがとう、エドガー。」
「いいえ、それでは失礼致します。」
エドガーは頭を下げると部屋を後にし、父ハリスの執務室へと向かった。ハリスがいない間はエドガーが領主代行を務めなければならないのだ。今ハリスは外国へ新しい茶葉の貿易先を求めて船旅をしており、本日中には帰国予定となっている。実は父ハリスの不在を狙ってエドガーは思い切ってヒルダの住む『ロータス』を尋ねたのだった。今からエドガーにはハリスの代わりに書類に目を通し、サインをする仕事が待っている。
エドガ―が執務室へ行くと、既にそこにはマルコの姿があった。しかし、見慣れない若者の姿も一緒だった。
(誰だ・・・あの若者は。初めて見る顔だな・・。)
エドガーは立ち止まってマルコと、隣に立つ若者を見つめると、2人は視線に気づいたのか、頭を下げてきた。
「エドガー様。お待ちしておりました。」
マルコが頭を下げると、若者も一緒に頭を下げる。エドガーは2人に近づくと、若者に声を掛けた。
「君は・・誰だ?」
「はい、僕はルドルフと申します。初めまして。」
そしてルドルフは会釈をすると、エドガーを見つめた―。
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