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第4章 15 エドガーの提案と依頼
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「ヒルダ。今夜は一緒にどこかへ食事に行こう。もちろんカミラも誘って。俺にご馳走させてくれ。」
蒸気船の中でエドガーはヒルダに言った。
「え・・?でもお兄様・・・。蒸気船のお金迄出して頂いて・・これ以上ご迷惑は・・。」
ヒルダは目を伏せた。
「言っただろう?ヒルダは俺にとって可愛い妹だって。ずっと会いたいって思ってたんだ。俺はヒルダの兄なんだから、兄らしいことをさせてくれ。・・そんなにしょっちゅう『ロータス』へ来れるわけでもいないしな・・・。」
「お兄さま・・・。」
エドガーは真面目な顔つきになると言った。
「ヒルダ・・・父さんは本気でヒルダが高校を卒業したらお金の援助を辞めるつもりでいる。」
「はい・・・分かっています。それは『カウベリー』を出される時から聞いていますから。」
「だが、俺はそんなことはさせたくない。」
「え・・・?お兄様・・・?」
「ヒルダ、いくら産業が発展して女性の社会進出が増えてきていても・・・まだまだ女性が仕事で生計を立てていくには・・・正直難しい時代なんだ。だから俺はヒルダを見捨てたりはしない。」
「お兄様・・・。」
「ヒルダ、俺はヒルダが高校を卒業したら、年間金貨20枚をヒルダに渡す。でも・・この事は俺とヒルダだけの秘密だ。いいな?それで・・・これは俺からの提案なんだが、カミラの手紙からヒルダがとても優秀な学生だと言う事は聞いている。それにもともとセロニア学園は名門校で有名だからな。だからヒルダ・・・学校の勉強以外にも、社会で役立てる資格の勉強も並行してするべきだと俺は思うんだ。」
「社会で役立てる勉強・・・ですか・・?」
「ああ。どんな資格がいいか今度ヒルダに会う時までに考えておく。だからヒルダはそれまでは勉強を頑張れよ?」
「はい、分かりました。」
ヒルダは素直に返事をした。
その後もヒルダとエドガーは『ロータス』の港に着くまでの間、船の中で兄妹の語らいを続けるのだった―。
やがてヒルダとエドガーを乗せた蒸気船は港へ到着し、2人は船を降りた。
エドガーの宿泊するホテルは港のすぐ側だ。そこでヒルダはアパートメントに帰る途中までエドガーと一緒に歩くことにした。
エドガーはヒルダが足を引きずりながら歩く様子を見て尋ねた。
「ヒルダ・・・足は痛まないか?」
「はい、大丈夫です。もう春になったのでほとんど痛むことは無くなってきました。」
「そうか・・と言う事は冬は痛んだのか?」
「ええ・・・そうですね。やはり冬場は痛みます。」
「母さんも・・・ヒルダの足の具合を気にしていたんだ・・・。」
エドガーはポツリと言う。
「え・・?お母様が・・?」
「ああ。だから・・・ヒルダからも・・・母さんに手紙を書いてやってくれないか?」
「手紙・・・ですか?」
いつの間にか2人はエドガーが宿泊しているホテルの前に立っていた。
「ああ、明日・・俺は朝一の汽車で『カウベリー』へ戻らないといけなんだ。できればヒルダに母さん宛てに手紙を書いてもらいたいんだ。きっと・・・喜んでくれると思うから・・。」
エドガーはじっとヒルダを見つめると言った。
(お兄様・・・本当にお母様を大切にしてくださっているのね・・・。)
ヒルダにはエドガーが母思いであると言う事が良く伝わった。そこでヒルダは言った。
「分かりました。お兄様、お母様に手紙を書きます。」
「そうか・・ありがとう。ヒルダ。それじゃ18時にヒルダ達のアパートメントへ行くから、悪いけどヒルダはそれまでに母さん宛てに手紙を書いてくれないかな?」
「はい、分かりました。手紙・・書きます。」
ヒルダは頷いた。
「それじゃ、ヒルダ。18時になったら迎えに行く。またな。気を付けて帰れよ。」
エドガーは笑顔で言った―。
蒸気船の中でエドガーはヒルダに言った。
「え・・?でもお兄様・・・。蒸気船のお金迄出して頂いて・・これ以上ご迷惑は・・。」
ヒルダは目を伏せた。
「言っただろう?ヒルダは俺にとって可愛い妹だって。ずっと会いたいって思ってたんだ。俺はヒルダの兄なんだから、兄らしいことをさせてくれ。・・そんなにしょっちゅう『ロータス』へ来れるわけでもいないしな・・・。」
「お兄さま・・・。」
エドガーは真面目な顔つきになると言った。
「ヒルダ・・・父さんは本気でヒルダが高校を卒業したらお金の援助を辞めるつもりでいる。」
「はい・・・分かっています。それは『カウベリー』を出される時から聞いていますから。」
「だが、俺はそんなことはさせたくない。」
「え・・・?お兄様・・・?」
「ヒルダ、いくら産業が発展して女性の社会進出が増えてきていても・・・まだまだ女性が仕事で生計を立てていくには・・・正直難しい時代なんだ。だから俺はヒルダを見捨てたりはしない。」
「お兄様・・・。」
「ヒルダ、俺はヒルダが高校を卒業したら、年間金貨20枚をヒルダに渡す。でも・・この事は俺とヒルダだけの秘密だ。いいな?それで・・・これは俺からの提案なんだが、カミラの手紙からヒルダがとても優秀な学生だと言う事は聞いている。それにもともとセロニア学園は名門校で有名だからな。だからヒルダ・・・学校の勉強以外にも、社会で役立てる資格の勉強も並行してするべきだと俺は思うんだ。」
「社会で役立てる勉強・・・ですか・・?」
「ああ。どんな資格がいいか今度ヒルダに会う時までに考えておく。だからヒルダはそれまでは勉強を頑張れよ?」
「はい、分かりました。」
ヒルダは素直に返事をした。
その後もヒルダとエドガーは『ロータス』の港に着くまでの間、船の中で兄妹の語らいを続けるのだった―。
やがてヒルダとエドガーを乗せた蒸気船は港へ到着し、2人は船を降りた。
エドガーの宿泊するホテルは港のすぐ側だ。そこでヒルダはアパートメントに帰る途中までエドガーと一緒に歩くことにした。
エドガーはヒルダが足を引きずりながら歩く様子を見て尋ねた。
「ヒルダ・・・足は痛まないか?」
「はい、大丈夫です。もう春になったのでほとんど痛むことは無くなってきました。」
「そうか・・と言う事は冬は痛んだのか?」
「ええ・・・そうですね。やはり冬場は痛みます。」
「母さんも・・・ヒルダの足の具合を気にしていたんだ・・・。」
エドガーはポツリと言う。
「え・・?お母様が・・?」
「ああ。だから・・・ヒルダからも・・・母さんに手紙を書いてやってくれないか?」
「手紙・・・ですか?」
いつの間にか2人はエドガーが宿泊しているホテルの前に立っていた。
「ああ、明日・・俺は朝一の汽車で『カウベリー』へ戻らないといけなんだ。できればヒルダに母さん宛てに手紙を書いてもらいたいんだ。きっと・・・喜んでくれると思うから・・。」
エドガーはじっとヒルダを見つめると言った。
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ヒルダにはエドガーが母思いであると言う事が良く伝わった。そこでヒルダは言った。
「分かりました。お兄様、お母様に手紙を書きます。」
「そうか・・ありがとう。ヒルダ。それじゃ18時にヒルダ達のアパートメントへ行くから、悪いけどヒルダはそれまでに母さん宛てに手紙を書いてくれないかな?」
「はい、分かりました。手紙・・書きます。」
ヒルダは頷いた。
「それじゃ、ヒルダ。18時になったら迎えに行く。またな。気を付けて帰れよ。」
エドガーは笑顔で言った―。
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