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3章 10 それぞれのヒルダへの思い
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「遅いな・・・ヒルダ。」
「ええ・・本当ね・・。」
ステラとフランシスは今、ステラの馬車の中でヒルダが帰宅するのを待っていた。
「まさか・・ヒルダ、どこかで転んで怪我したりしてないよな・・?それともヒルダは美人だから悪い奴らにつかまって・・・!」
「ねえ、フランシス。どうしてさっきからそんな恐ろしい考えしか浮かばないの?もっと他にヒルダさんの帰りが遅い理由・・考えつかないのかしら?」
ステラは溜息をつきながらフランシスを見た。
「な、何だよ。そういうステラはどうしてヒルダの帰りが遅いと思うんだ?」
「う~ん・・・例えばだけど・・食事を作るために買い物・・・とか?ほら、ヒルダさんって食事の支度とかしてるし、上手にクッキーとか作るのよ?以前貰った手作りクッキー本当においしかったわ・・。」
ステラが馬車の中でうっとりと頬杖をつくのを見てフランシスは驚いた。
「な・・何だってっ?!ステラッ!お前・・・ヒルダからクッキー貰ったことがあるのか?」
「ええ。あるわよ。・・・ところで、フランシス。前から言おう言おうと思っていたのだけど・・どうして貴方ってそんなに言葉遣いが乱暴なの?女の子に嫌われるわよ?」
「え・・ええっ?!お、俺の言葉遣い・・そんなに乱暴か?」
「そうねえ・・それじゃ言わせてもらうけど、少なくとも女の子には『お前』なんて言葉使わないほうがいいわよ?」
「そ、そうか。分かった。気を付ける。ほかにどんな所を直せばいい?」
その後―フランシスは延々とステラから言葉遣いの手ほどきを受けるのであった。
やがて、すっかり日が暮れ始め、町の街灯がポツポツとつきはじめた頃・・・。
「あ!」
突然馬車から外を覗いていたフランシスが大声を上げた。
「どうしたの?フランシス。」
「いや・・カミラとヒルダが一緒に帰ってきたんだよ。あ・・・そうだった。今日は店の定休日だったから父さんと母さんの仕事が休みで・・・カミラはうちのチビ達の子守りに来ない日だったんだっけな・・・。」
「それじゃあ2人は今日はどこかで待ち合わせをしていたっていうわけなのね?」
そして2人は馬車の中からヒルダの様子を見て息を飲んだ。何とヒルダがカミラと歩きながら笑みを浮かべていたからだ。それは2人が初めて見る笑顔だった。
「嘘・・・ヒルダさんが・・笑ってる・・。」
ステラは信じられない思いでみつめている。
「か、可愛い・・・。」
フランシスは顔を赤らめてヒルダを凝視している。そして思った。
(やっぱり・・・ヒルダは本当は『氷の女王』なんかじゃない。ああやって笑う事も出来るんだ・・・。だけど、俺たちの前では決して笑うことがないっていう事は・・。)
ヒルダとカミラはステラたちの乗っている馬車の前を通り過ぎてアパートメントへ入って行った。それを見ていたステラが言う。
「ねえ・・・フランシス。」
「何だ?」
「ヒルダさん・・・笑っていたね。」
「ああ、そうだな。」
「ヒルダさん・・・お姉さんの前ではあんな風に笑みを見せてくれるけど・・・学校でも私達の前でも・・笑ってくれないわよね。」
ステラはフランシスと同じ事を考えていた。
「私、今思ったんだけど・・ヒルダさんがあんな風に笑ってくれるようになるまではあまり急いで距離を縮めない方がいいかなって思ったの。そうしないと・・ヒルダさんに逃げられてしまいそうで・・。」
フランシスはステラの言わんとしている意味が理解出来た。
「そうだな・・・いきなり登下校を一緒に・・なんてハードルが高いかも。」
「それじゃ・・・帰りましょう?貴方の家まで送るわよ。」
ステラはフランシスを見ると言った。
「ありがとう、ステラ。」
やがてステラとフランシスを乗せた馬車は日の暮れた町の中を走り出していく。
その頃、マイクは電話をかけていた。
「うん、そうなんだ。名前はヒルダ・フィールズ。彼女の事について調べてくれるかい?どんな些細な事でもいいから・・・。うん、時間もお金もかかってもいいから。よろしく頼むよ。」
そしてマイクは電話を切るとつぶやいた。
「ヒルダ・・・僕は君のその冷たい仮面の下にある素顔を知りたい。だから・・調べさせてもらうね。」
と―。
「ええ・・本当ね・・。」
ステラとフランシスは今、ステラの馬車の中でヒルダが帰宅するのを待っていた。
「まさか・・ヒルダ、どこかで転んで怪我したりしてないよな・・?それともヒルダは美人だから悪い奴らにつかまって・・・!」
「ねえ、フランシス。どうしてさっきからそんな恐ろしい考えしか浮かばないの?もっと他にヒルダさんの帰りが遅い理由・・考えつかないのかしら?」
ステラは溜息をつきながらフランシスを見た。
「な、何だよ。そういうステラはどうしてヒルダの帰りが遅いと思うんだ?」
「う~ん・・・例えばだけど・・食事を作るために買い物・・・とか?ほら、ヒルダさんって食事の支度とかしてるし、上手にクッキーとか作るのよ?以前貰った手作りクッキー本当においしかったわ・・。」
ステラが馬車の中でうっとりと頬杖をつくのを見てフランシスは驚いた。
「な・・何だってっ?!ステラッ!お前・・・ヒルダからクッキー貰ったことがあるのか?」
「ええ。あるわよ。・・・ところで、フランシス。前から言おう言おうと思っていたのだけど・・どうして貴方ってそんなに言葉遣いが乱暴なの?女の子に嫌われるわよ?」
「え・・ええっ?!お、俺の言葉遣い・・そんなに乱暴か?」
「そうねえ・・それじゃ言わせてもらうけど、少なくとも女の子には『お前』なんて言葉使わないほうがいいわよ?」
「そ、そうか。分かった。気を付ける。ほかにどんな所を直せばいい?」
その後―フランシスは延々とステラから言葉遣いの手ほどきを受けるのであった。
やがて、すっかり日が暮れ始め、町の街灯がポツポツとつきはじめた頃・・・。
「あ!」
突然馬車から外を覗いていたフランシスが大声を上げた。
「どうしたの?フランシス。」
「いや・・カミラとヒルダが一緒に帰ってきたんだよ。あ・・・そうだった。今日は店の定休日だったから父さんと母さんの仕事が休みで・・・カミラはうちのチビ達の子守りに来ない日だったんだっけな・・・。」
「それじゃあ2人は今日はどこかで待ち合わせをしていたっていうわけなのね?」
そして2人は馬車の中からヒルダの様子を見て息を飲んだ。何とヒルダがカミラと歩きながら笑みを浮かべていたからだ。それは2人が初めて見る笑顔だった。
「嘘・・・ヒルダさんが・・笑ってる・・。」
ステラは信じられない思いでみつめている。
「か、可愛い・・・。」
フランシスは顔を赤らめてヒルダを凝視している。そして思った。
(やっぱり・・・ヒルダは本当は『氷の女王』なんかじゃない。ああやって笑う事も出来るんだ・・・。だけど、俺たちの前では決して笑うことがないっていう事は・・。)
ヒルダとカミラはステラたちの乗っている馬車の前を通り過ぎてアパートメントへ入って行った。それを見ていたステラが言う。
「ねえ・・・フランシス。」
「何だ?」
「ヒルダさん・・・笑っていたね。」
「ああ、そうだな。」
「ヒルダさん・・・お姉さんの前ではあんな風に笑みを見せてくれるけど・・・学校でも私達の前でも・・笑ってくれないわよね。」
ステラはフランシスと同じ事を考えていた。
「私、今思ったんだけど・・ヒルダさんがあんな風に笑ってくれるようになるまではあまり急いで距離を縮めない方がいいかなって思ったの。そうしないと・・ヒルダさんに逃げられてしまいそうで・・。」
フランシスはステラの言わんとしている意味が理解出来た。
「そうだな・・・いきなり登下校を一緒に・・なんてハードルが高いかも。」
「それじゃ・・・帰りましょう?貴方の家まで送るわよ。」
ステラはフランシスを見ると言った。
「ありがとう、ステラ。」
やがてステラとフランシスを乗せた馬車は日の暮れた町の中を走り出していく。
その頃、マイクは電話をかけていた。
「うん、そうなんだ。名前はヒルダ・フィールズ。彼女の事について調べてくれるかい?どんな些細な事でもいいから・・・。うん、時間もお金もかかってもいいから。よろしく頼むよ。」
そしてマイクは電話を切るとつぶやいた。
「ヒルダ・・・僕は君のその冷たい仮面の下にある素顔を知りたい。だから・・調べさせてもらうね。」
と―。
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