126 / 566
3章 5 ヒルダの行方
しおりを挟む
「何だって?!ヒルダが女子生徒たちに連れ去られただって?!」
カフェテリアにルイスの声が響き渡った。
「おい、落ち着けよ。ルイス、お前声が大きすぎだ。」
マイクが耳を押さえながら言う。
「それにしても・・・女生徒たちって・・一体誰なんだろう・・」
カインがテーブルの上に置かれた大量のパンを前に腕組みをして考え込む。
「そうなのよ・・・。でも本当に酷いわ・・どこの誰か分からないけど、嫌がるヒルダさんを無理やりここから連れ出すなんて・・・。」
ステラは青ざめた顔で手を組んでいる。
「それでフランシスは当てもなくヒルダを探すためにここを出たっていうわけだね?」
マイクがステラに尋ねる。
「ええ。そうよ。フランシス・・一体どこまで探しに行ったのかしら・・。私たちもこうしてはいられないわっ!すぐにヒルダさんを探しに行きましょうよっ!」
ステラは立ち上がった。するとそれをマイクが静かに止めた。
「いや、違うよ。探すのはヒルダじゃない。手がかりも無くやみくもにヒルダを
探すのは得策じゃない。でも僕には大体、この件には誰が絡んでいるかおおよその検討はついているけどね。まずは彼女たちを探す方が先決だよ。」
言いながらマイクは立ち上がった―。
昼休みで、生徒たちは全員食堂にいるか、カフェテリアに行っているので校舎はシンと静まり返っていた。
そこをフランシスが大声で名前を呼びながら廊下を歩いている。
「ヒルダーッ!どこにいるんだっ?!いたら返事をしてくれっ!」
しかし、教室が並んでいる校舎にはフランシスの足音とヒルダの名を呼ぶ声しか聞こえてこない。
「くそ・・っ!こんな事になるならヒルダを1人テーブルに残しておかなければ良かった!」
フランシスは右手で額に触れながら、苛立ちを募らせた口調で足早に別の場所へと向かって行った―。
マイクはとてもハンサムで頭の良い少年だった。スポーツも万能でクラス委員長を務め、先生たちの信頼も厚かった。
だからマイクは女生徒達の間でも絶大なる人気を誇っていた。ほとんどの女子生徒たちの誰もがマイクとはクラスメイト以上の関係になりたいと思っていた。
そしてそんな彼女たちはマイクにとっては迷惑以外の何物でもなかった。
女なんて、皆うるさい存在だ―。
しかし、そんなマイクもヒルダに出会って考えが変わった。
初めてだった。自分に全く関心を示さない少女に出会ったのは。
だからこそ、マイクはヒルダに興味がわいたのだ。
思わず二度見したくなるような、まだ16歳にはみえないその輝くような美貌。
そしてマイクと張り合う位の頭脳。だけど、最もマイクが興味を惹かれたのはヒルダの性格だった。
氷のように無表情なその顔は決して笑顔を魅せることはない。誰かと親しくなることを意図的に避けているのは目に見えて分かった。孤独を愛し、他人に心を許すことはない・・。そして痛々しそうに引きずる左足・・。きっとヒルダは何か重大な秘密を抱えているに違いない。
とにかくヒルダのすべてがマイクにとっては新鮮なものとして目に映った。気づけば毎日ヒルダの姿を目で追っていた。
子供の頃からの大親友であるフランシスもヒルダの事を熱心に見つめている。
だが、マイクは誰にもヒルダを譲るつもりはなかった。ヒルダが大切だ。何とかしてヒルダの特別な存在になりたいと常日頃から思っていたが、プライドの高さが邪魔をして、フランシスの様に素直になれなかった。
だからこそ、このチャンスを絶対に逃したくない。
マイクはステラたちとは別行動を取っていた。職員室にヒルダが突然いなくなったことを報告に行くように伝えたのだ。そしてマイクが足を向けたのは―。
「ほーんと、あの地下倉庫に落とした時のヒルダの表情・・・見ものだったわね。」
アデルが2人の取り巻きの少女たちと最近できたばかりのカフェレストランでビーフシチューを食べながら話をしていた。
このカフェレストランはセロニア学園一、料金が高いレストランだった。それ故、ここで食事をすることが出来るのはお金持ちの貴族か富豪の生徒のみである。
「そうね。アデルさん。」
取り巻き生徒が相槌を生む。
「全く・・男子生徒たちからちやほやされていい気になって・・・。もっと謹慎処分を受けていれば良かったのに・・・。少しあそこで頭を冷やすといいのよ。」
アデルは憎々しげに言う。
「ふ~ん・・・やっぱり、君がヒルダに何か悪さをしたんだね?」
背後で声が聞こえてアデル達は慌て振り向くと、そこにはマイクが腕組みをして立っていた―。
カフェテリアにルイスの声が響き渡った。
「おい、落ち着けよ。ルイス、お前声が大きすぎだ。」
マイクが耳を押さえながら言う。
「それにしても・・・女生徒たちって・・一体誰なんだろう・・」
カインがテーブルの上に置かれた大量のパンを前に腕組みをして考え込む。
「そうなのよ・・・。でも本当に酷いわ・・どこの誰か分からないけど、嫌がるヒルダさんを無理やりここから連れ出すなんて・・・。」
ステラは青ざめた顔で手を組んでいる。
「それでフランシスは当てもなくヒルダを探すためにここを出たっていうわけだね?」
マイクがステラに尋ねる。
「ええ。そうよ。フランシス・・一体どこまで探しに行ったのかしら・・。私たちもこうしてはいられないわっ!すぐにヒルダさんを探しに行きましょうよっ!」
ステラは立ち上がった。するとそれをマイクが静かに止めた。
「いや、違うよ。探すのはヒルダじゃない。手がかりも無くやみくもにヒルダを
探すのは得策じゃない。でも僕には大体、この件には誰が絡んでいるかおおよその検討はついているけどね。まずは彼女たちを探す方が先決だよ。」
言いながらマイクは立ち上がった―。
昼休みで、生徒たちは全員食堂にいるか、カフェテリアに行っているので校舎はシンと静まり返っていた。
そこをフランシスが大声で名前を呼びながら廊下を歩いている。
「ヒルダーッ!どこにいるんだっ?!いたら返事をしてくれっ!」
しかし、教室が並んでいる校舎にはフランシスの足音とヒルダの名を呼ぶ声しか聞こえてこない。
「くそ・・っ!こんな事になるならヒルダを1人テーブルに残しておかなければ良かった!」
フランシスは右手で額に触れながら、苛立ちを募らせた口調で足早に別の場所へと向かって行った―。
マイクはとてもハンサムで頭の良い少年だった。スポーツも万能でクラス委員長を務め、先生たちの信頼も厚かった。
だからマイクは女生徒達の間でも絶大なる人気を誇っていた。ほとんどの女子生徒たちの誰もがマイクとはクラスメイト以上の関係になりたいと思っていた。
そしてそんな彼女たちはマイクにとっては迷惑以外の何物でもなかった。
女なんて、皆うるさい存在だ―。
しかし、そんなマイクもヒルダに出会って考えが変わった。
初めてだった。自分に全く関心を示さない少女に出会ったのは。
だからこそ、マイクはヒルダに興味がわいたのだ。
思わず二度見したくなるような、まだ16歳にはみえないその輝くような美貌。
そしてマイクと張り合う位の頭脳。だけど、最もマイクが興味を惹かれたのはヒルダの性格だった。
氷のように無表情なその顔は決して笑顔を魅せることはない。誰かと親しくなることを意図的に避けているのは目に見えて分かった。孤独を愛し、他人に心を許すことはない・・。そして痛々しそうに引きずる左足・・。きっとヒルダは何か重大な秘密を抱えているに違いない。
とにかくヒルダのすべてがマイクにとっては新鮮なものとして目に映った。気づけば毎日ヒルダの姿を目で追っていた。
子供の頃からの大親友であるフランシスもヒルダの事を熱心に見つめている。
だが、マイクは誰にもヒルダを譲るつもりはなかった。ヒルダが大切だ。何とかしてヒルダの特別な存在になりたいと常日頃から思っていたが、プライドの高さが邪魔をして、フランシスの様に素直になれなかった。
だからこそ、このチャンスを絶対に逃したくない。
マイクはステラたちとは別行動を取っていた。職員室にヒルダが突然いなくなったことを報告に行くように伝えたのだ。そしてマイクが足を向けたのは―。
「ほーんと、あの地下倉庫に落とした時のヒルダの表情・・・見ものだったわね。」
アデルが2人の取り巻きの少女たちと最近できたばかりのカフェレストランでビーフシチューを食べながら話をしていた。
このカフェレストランはセロニア学園一、料金が高いレストランだった。それ故、ここで食事をすることが出来るのはお金持ちの貴族か富豪の生徒のみである。
「そうね。アデルさん。」
取り巻き生徒が相槌を生む。
「全く・・男子生徒たちからちやほやされていい気になって・・・。もっと謹慎処分を受けていれば良かったのに・・・。少しあそこで頭を冷やすといいのよ。」
アデルは憎々しげに言う。
「ふ~ん・・・やっぱり、君がヒルダに何か悪さをしたんだね?」
背後で声が聞こえてアデル達は慌て振り向くと、そこにはマイクが腕組みをして立っていた―。
0
お気に入りに追加
725
あなたにおすすめの小説
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
あなたが望んだ、ただそれだけ
cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。
国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。
カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。
王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。
失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。
公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。
逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。
心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。
ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。
俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。
そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。
こんな女とは婚約解消だ。
この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。
愛人を切れないのなら離婚してくださいと言ったら子供のように駄々をこねられて困っています
永江寧々
恋愛
結婚生活ニ十周年を迎える今年、アステリア王国の王であるトリスタンが妻であるユーフェミアから告げられたのは『離婚してください」という衝撃の告白。
愛を囁くのを忘れた日もない。セックスレスになった事もない。それなのに何故だと焦るトリスタンが聞かされたのは『愛人が四人もいるから』ということ。
愛している夫に四人も愛人がいる事が嫌で、愛人を減らしてほしいと何度も頼んできたユーフェミアだが、
減るどころか増えたことで離婚を決めた。
幼子のように離婚はしたくない、嫌だと駄々をこねる夫とそれでも離婚を考える妻。
愛しているが、愛しているからこそ、このままではいられない。
夫からの愛は絶えず感じているのにお願いを聞いてくれないのは何故なのかわからないユーフェミアはどうすればいいのかわからず困っていた。
だが、夫には夫の事情があって……
夫に問題ありなのでご注意ください。
誤字脱字報告ありがとうございます!
9月24日、本日が最終話のアップとなりました。
4ヶ月、お付き合いくださいました皆様、本当にありがとうございました!
※番外編は番外編とも言えないものではありますが、小話程度にお読みいただければと思います。
誤字脱字報告ありがとうございます!
確認しているつもりなのですが、もし発見されましたらお手数ですが教えていただけると助かります。
大切なあのひとを失ったこと絶対許しません
にいるず
恋愛
公爵令嬢キャスリン・ダイモックは、王太子の思い人の命を脅かした罪状で、毒杯を飲んで死んだ。
はずだった。
目を開けると、いつものベッド。ここは天国?違う?
あれっ、私生きかえったの?しかも若返ってる?
でもどうしてこの世界にあの人はいないの?どうしてみんなあの人の事を覚えていないの?
私だけは、自分を犠牲にして助けてくれたあの人の事を忘れない。絶対に許すものか。こんな原因を作った人たちを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる