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3章 2 ホームルーム
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チャイムの音とともに、担任教師のミシェルが教室の中に入ってきた。そして素早くヒルダを見る。
「ヒルダさん。復学出来て良かったわ。」
「ありがとうございます。」
ヒルダは静かに頭を下げた。ミシェルはそんなヒルダの様子を満足気に見ると、今度は生徒たちを見渡すと言った。
「皆さん、ヒルダさんは無実でした。ただ争いを早く終わらせる為に犠牲になっただけです。なのでどうか皆さんはヒルダさんを温かく受け入れてあげてください。そして・・罪を犯してしまった彼女たちは今、寮で謹慎処分を受けています。学校からも指導を受け、両親達にも彼女たちは叱責されました。十分反省していると思います。なのでどうか皆さん。彼女たちが教室に戻ってきても決して責めずに、受け入れてあげて下さいね。特に・・・アデルさん。」
「はい。」
名前を呼ばれたアデルは返事をした。
「貴女は直接彼女から謝罪を受けています。なので・・・もうどうか今回の事は水に流して終わらせてあげてください。」
「分かりました。」
アデルはしぶしぶ返事をした。こんな大勢のクラスメイトの前でそのような話をされては、アデルは素直に従うしかなかった。
そしてそんなミシェル先生をキラキラした目で見つめていたのはステラだった。
(ミシェル先生っ!素敵ですっ!私も・・・いつか先生の様に素敵な女性になれるよう頑張りますっ!)
どうやらステラはミシェルの崇拝者になったようである―。
ホームルームが終わり、担任のミシェルが教室から去ると、たちまち教室は騒がしくなった。
「ヒルダッ!」
フランシスは周りの生徒たちの目も気にせずにヒルダの席へ駆け寄った。
「おはよう、ランドルフさん。」
ヒルダは席に座ったまま、静かにフランシスに挨拶する。緊張して身体がこわばっているフランシスとは対照的だ。
「あ、あの!ヒルダッ!」
「何かしら?」
そこでフランシスは、ハッとなった。教室中の生徒たちがじっとフランシスとヒルダの様子を伺っていたからである。誰もが興味深げに2人の様子を見つめている。
「あ・・あ、そ・その・・。」
(くそっ!駄目だ・・・!こんなに皆に注目されていては話したい事も話せないっ!)
「どうしたの?」
一方のヒルダはどこまでも冷静だ。さすがは『氷の女王』と呼ばれているだけのことはある。
するとついにフランシスの態度を見かねたのか、マイクがやってきた。
「おはよう、ヒルダ。」
「おはよう。」
マイクはフランシスの肩に腕を回しながらヒルダに言った。
「あのさ、今日のお昼・・・僕たちと一緒に食べないか?実はどうしても解けない数学の問題があって・・ヒルダの力を借りたいんだ。」
ヒルダは少し考えていたが、うなずいた。
「ええ、いいわ。でも私にも解けるかどうか分からないけど・・・。」
「なら、その時は2人で考えようよ。」
「そうね。」
「それじゃ、また後でね。ほら、行くぞ。フランシス。」
「ヒルダ、あ・後で!」
フランシスの言葉にヒルダは黙って頷く。
フランシスとマイクが席を離れると間髪あけずにステラがやってきた。
「ねえ、ヒルダさん。私も一緒にお昼に行ってもいいかしらっ?!」
「私は別に構わないけど・・彼らにも念の為に聞いてもらえるかしら?」
ヒルダはマイクとフランシスをチラリと見た。
「ええ!もちろん私からちゃんと尋ねるわっ!」
ステラは嬉しそうに返事をした。
「・・・。」
そんなヒルダの様子を1人じっと見つめる少女がいた。その少女は・・・アデル。
(全く・・・気に入らないわ・・。ヒルダのせいで、なんだか私は悪者扱いされている気がしてならないわ・・被害者は私なのに・・・。)
アデルはイライラした様子で、自分の親指の爪を噛むのだった―。
「ヒルダさん。復学出来て良かったわ。」
「ありがとうございます。」
ヒルダは静かに頭を下げた。ミシェルはそんなヒルダの様子を満足気に見ると、今度は生徒たちを見渡すと言った。
「皆さん、ヒルダさんは無実でした。ただ争いを早く終わらせる為に犠牲になっただけです。なのでどうか皆さんはヒルダさんを温かく受け入れてあげてください。そして・・罪を犯してしまった彼女たちは今、寮で謹慎処分を受けています。学校からも指導を受け、両親達にも彼女たちは叱責されました。十分反省していると思います。なのでどうか皆さん。彼女たちが教室に戻ってきても決して責めずに、受け入れてあげて下さいね。特に・・・アデルさん。」
「はい。」
名前を呼ばれたアデルは返事をした。
「貴女は直接彼女から謝罪を受けています。なので・・・もうどうか今回の事は水に流して終わらせてあげてください。」
「分かりました。」
アデルはしぶしぶ返事をした。こんな大勢のクラスメイトの前でそのような話をされては、アデルは素直に従うしかなかった。
そしてそんなミシェル先生をキラキラした目で見つめていたのはステラだった。
(ミシェル先生っ!素敵ですっ!私も・・・いつか先生の様に素敵な女性になれるよう頑張りますっ!)
どうやらステラはミシェルの崇拝者になったようである―。
ホームルームが終わり、担任のミシェルが教室から去ると、たちまち教室は騒がしくなった。
「ヒルダッ!」
フランシスは周りの生徒たちの目も気にせずにヒルダの席へ駆け寄った。
「おはよう、ランドルフさん。」
ヒルダは席に座ったまま、静かにフランシスに挨拶する。緊張して身体がこわばっているフランシスとは対照的だ。
「あ、あの!ヒルダッ!」
「何かしら?」
そこでフランシスは、ハッとなった。教室中の生徒たちがじっとフランシスとヒルダの様子を伺っていたからである。誰もが興味深げに2人の様子を見つめている。
「あ・・あ、そ・その・・。」
(くそっ!駄目だ・・・!こんなに皆に注目されていては話したい事も話せないっ!)
「どうしたの?」
一方のヒルダはどこまでも冷静だ。さすがは『氷の女王』と呼ばれているだけのことはある。
するとついにフランシスの態度を見かねたのか、マイクがやってきた。
「おはよう、ヒルダ。」
「おはよう。」
マイクはフランシスの肩に腕を回しながらヒルダに言った。
「あのさ、今日のお昼・・・僕たちと一緒に食べないか?実はどうしても解けない数学の問題があって・・ヒルダの力を借りたいんだ。」
ヒルダは少し考えていたが、うなずいた。
「ええ、いいわ。でも私にも解けるかどうか分からないけど・・・。」
「なら、その時は2人で考えようよ。」
「そうね。」
「それじゃ、また後でね。ほら、行くぞ。フランシス。」
「ヒルダ、あ・後で!」
フランシスの言葉にヒルダは黙って頷く。
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(全く・・・気に入らないわ・・。ヒルダのせいで、なんだか私は悪者扱いされている気がしてならないわ・・被害者は私なのに・・・。)
アデルはイライラした様子で、自分の親指の爪を噛むのだった―。
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