嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

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2章 12 脅し

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 翌朝―

フランシスが登校してくると、いきなり背後からマイクが声を掛けてきた。

「おかしいと思わないか?」

「うわああっ!お、お前・・いきなり後ろから声を掛けて来るなっ!大体何がおかしいんだよ!」

フランシスは突然マイクから声を掛けられたショックで、まだドキドキする胸を押さえながら言った。

「ほら・・彼女達の様子だよ。」

マイクが顎でしゃくった方を見れば、そこには教室の椅子に座るダフネを囲むように3人の女生徒達が立ってダフネを見下ろしている。そんなダフネの顔色は真っ青で、小刻みに震えている。

「・・・確かに何だか尋常じゃない雰囲気を感じるな・・・。」

 見ていると、突然1人の女子学生がダフネの左肩に手を置き、耳元で何かを囁く素振りを見せた。すると明らかにダフネの肩が跳ね上がる。そして力なく立ちあがるとまるで取り囲まれるように教室を出て行った。

「・・・何処へ行く気だろう?まあ・・まだホームルームまでは時間があるけれども・・・。」

ポツリと呟くとマイクがフランシスの肩に手を置いた。

「よし、行くか。」

「ええっ?!行くって何処へ!」

「決まっているだろう?彼女達の後を追うんだよ。」

「何故俺がッ?!行くなら、マイク。お前が1人で行って来いよっ!」

すると今度はマイクはフランシスの肩に手を回してきた。

「おいおい・・・そんな事を言ってもいいのかあ?ヒルダに関わる事かもしれないのに?」

マイクの言葉にフランシスは反応する。

「何だって?!ならすぐに後を追おうっ!ほら、行くぞっ!」

フランシスはマイクの腕を掴むと教室を出た。そして2人は知らなかった。
誰かが2人の後をつけているという事に・・・。

 教室を出た2人は長い廊下をキョロキョロ見渡し。背後にある階段へ向かって行く彼女達の姿を見つけた。

「あの階段に向かったようだな。」

「ああ・・・そうだな。」

マイクの言葉にフランシスは頷く。

「よし、行ってみよう!」

フランシスはマイクに声を掛け、一緒に女子学生達の後を追った。
行きついた先は階段の踊り場だった。彼女達は屋上へ続く踊り場でダフネを取り囲んでいたのである。
見つからないように咄嗟に壁に身を隠したフランシスとマイクは顔を見渡すと小声で話し合った。

「一体、彼女達は何をしているんだ・・?」

フランシスは首を傾げた。

「ああ、そうだな。でもどのみちあまり穏やかな様子には見えない。」

マイクが答える。

「ええ、私もそう思うわ。」

そこへ2人の背後から女子学生の声が聞こえた。

「「え・・・?」」

フランシスとマイクが後ろを振り返り、驚いた。

「ステラじゃないか・・・何してるんだよ、こんな所で。」

マイクが呆れたように言う。

「あら?そう言う貴方達も何してるの?私貴方達からヒルダの名前が聞こえて来たから後をついてきたのよ。だって私はヒルダの親友なんだから。」

「え・・?」

(何だ?ステラの奴・・いつのまにヒルダと親友になったって言うんだ・・?)

フランシスが思ったその時、踊り場から声が聞こえてきた。

「ほら、いつまでだんまりを決め込んでいるのよっ!ばらされたくなければ早くお金をよこしなさいっ!」

黒髪を肩先まで切りそろえた少女が言う。

「お、お願い・・もう許して・・。これ以上貴女達に渡せるお金は・・。」

少女たちに囲まれて姿は見えないが、その声はダフネである事は分かった。

「あら?それじゃあバラしてもいいのね?アデルの財布を盗んだ犯人はダフネ、貴女で・・しかもその罪をヒルダに擦り付けたって。」

背中まで髪の長い栗毛色の少女が言う。

「うう・・そ、それだけは言わないで・・・。」

嗚咽交じりのダフネの声が聞こえる。ステラもマイクも神妙な面持ちで彼女達の会話を聞いていたが、フランシスは我慢できなかった。

「何だって・・?!ダフネッ!お前がヒルダに罪を擦り付けた犯人だったのか?!」

気付けば、フランシスは彼女達の前に飛び出して・・叫んでいた—。
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