嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
118 / 566

2章 12 脅し

しおりを挟む
 翌朝―

フランシスが登校してくると、いきなり背後からマイクが声を掛けてきた。

「おかしいと思わないか?」

「うわああっ!お、お前・・いきなり後ろから声を掛けて来るなっ!大体何がおかしいんだよ!」

フランシスは突然マイクから声を掛けられたショックで、まだドキドキする胸を押さえながら言った。

「ほら・・彼女達の様子だよ。」

マイクが顎でしゃくった方を見れば、そこには教室の椅子に座るダフネを囲むように3人の女生徒達が立ってダフネを見下ろしている。そんなダフネの顔色は真っ青で、小刻みに震えている。

「・・・確かに何だか尋常じゃない雰囲気を感じるな・・・。」

 見ていると、突然1人の女子学生がダフネの左肩に手を置き、耳元で何かを囁く素振りを見せた。すると明らかにダフネの肩が跳ね上がる。そして力なく立ちあがるとまるで取り囲まれるように教室を出て行った。

「・・・何処へ行く気だろう?まあ・・まだホームルームまでは時間があるけれども・・・。」

ポツリと呟くとマイクがフランシスの肩に手を置いた。

「よし、行くか。」

「ええっ?!行くって何処へ!」

「決まっているだろう?彼女達の後を追うんだよ。」

「何故俺がッ?!行くなら、マイク。お前が1人で行って来いよっ!」

すると今度はマイクはフランシスの肩に手を回してきた。

「おいおい・・・そんな事を言ってもいいのかあ?ヒルダに関わる事かもしれないのに?」

マイクの言葉にフランシスは反応する。

「何だって?!ならすぐに後を追おうっ!ほら、行くぞっ!」

フランシスはマイクの腕を掴むと教室を出た。そして2人は知らなかった。
誰かが2人の後をつけているという事に・・・。

 教室を出た2人は長い廊下をキョロキョロ見渡し。背後にある階段へ向かって行く彼女達の姿を見つけた。

「あの階段に向かったようだな。」

「ああ・・・そうだな。」

マイクの言葉にフランシスは頷く。

「よし、行ってみよう!」

フランシスはマイクに声を掛け、一緒に女子学生達の後を追った。
行きついた先は階段の踊り場だった。彼女達は屋上へ続く踊り場でダフネを取り囲んでいたのである。
見つからないように咄嗟に壁に身を隠したフランシスとマイクは顔を見渡すと小声で話し合った。

「一体、彼女達は何をしているんだ・・?」

フランシスは首を傾げた。

「ああ、そうだな。でもどのみちあまり穏やかな様子には見えない。」

マイクが答える。

「ええ、私もそう思うわ。」

そこへ2人の背後から女子学生の声が聞こえた。

「「え・・・?」」

フランシスとマイクが後ろを振り返り、驚いた。

「ステラじゃないか・・・何してるんだよ、こんな所で。」

マイクが呆れたように言う。

「あら?そう言う貴方達も何してるの?私貴方達からヒルダの名前が聞こえて来たから後をついてきたのよ。だって私はヒルダの親友なんだから。」

「え・・?」

(何だ?ステラの奴・・いつのまにヒルダと親友になったって言うんだ・・?)

フランシスが思ったその時、踊り場から声が聞こえてきた。

「ほら、いつまでだんまりを決め込んでいるのよっ!ばらされたくなければ早くお金をよこしなさいっ!」

黒髪を肩先まで切りそろえた少女が言う。

「お、お願い・・もう許して・・。これ以上貴女達に渡せるお金は・・。」

少女たちに囲まれて姿は見えないが、その声はダフネである事は分かった。

「あら?それじゃあバラしてもいいのね?アデルの財布を盗んだ犯人はダフネ、貴女で・・しかもその罪をヒルダに擦り付けたって。」

背中まで髪の長い栗毛色の少女が言う。

「うう・・そ、それだけは言わないで・・・。」

嗚咽交じりのダフネの声が聞こえる。ステラもマイクも神妙な面持ちで彼女達の会話を聞いていたが、フランシスは我慢できなかった。

「何だって・・?!ダフネッ!お前がヒルダに罪を擦り付けた犯人だったのか?!」

気付けば、フランシスは彼女達の前に飛び出して・・叫んでいた—。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

彼女がいなくなった6年後の話

こん
恋愛
今日は、彼女が死んでから6年目である。 彼女は、しがない男爵令嬢だった。薄い桃色でサラサラの髪、端正な顔にある2つのアーモンド色のキラキラと光る瞳には誰もが惹かれ、それは私も例外では無かった。 彼女の墓の前で、一通り遺書を読んで立ち上がる。 「今日で貴方が死んでから6年が経ったの。遺書に何を書いたか忘れたのかもしれないから、読み上げるわ。悪く思わないで」 何回も読んで覚えてしまった遺書の最後を一息で言う。 「「必ず、貴方に会いに帰るから。1人にしないって約束、私は破らない。」」 突然、私の声と共に知らない誰かの声がした。驚いて声の方を振り向く。そこには、見たことのない男性が立っていた。 ※ガールズラブの要素は殆どありませんが、念の為入れています。最終的には男女です! ※なろう様にも掲載

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

【完結】愛してるなんて言うから

空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」  婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。  婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。 ――なんだそれ。ふざけてんのか。  わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。 第1部が恋物語。 第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ! ※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。  苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

処理中です...