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第7章 7 病室で
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次にヒルダが目を覚ました時にはベッドの上にいた。目を開けると見覚えのない天井と周囲はカーテンで覆われている。
「え・・・?ここは・・?うっ!い、痛い・・・っ!」
突如右腕に痛みが走った。みると右腕には包帯が巻かれていた。
ヒルダが目を覚ました気配に気づいたのか、カーテンの向こうから声がかかった。
「ヒルダ?!目が覚めたの?!」
その声は母、マーガレットの声だ。そしてヒルダが返事をする間もなく、カーテンがシャッと開けられ、母が現れた。
「お母様・・・。私、一体・・・。」
すると母は重々しく言った。
「町外れの教会が火事にあって・・・貴女は教会で倒れていたのよ。そこをグレースと言う子の馬車の御者をしていたお爺さんが助けてくれたのよ。助け出された時、貴女は腕に火傷を負っていて・・。」
「そう・・だったの・・。」
ヒルダがポツリと言うと、母が声を掛けてきた。
「ヒルダ、・・・一体何があったの?」
その声は震えていた。
「え?」
顔を上げると、母が険しい顔でヒルダを見ている。
「何が・・あったって?」
すると母がため息をつきながら言った。
「火事にあったあの教会には・・貴女以外に4人の子供達がいたのよ。皆火事になった教会から逃げ出して・・そして運悪くグレースという少女に火の粉が降って来て、その少女は・・・顔に酷い火傷を負ってしまったのよ。」
「え・・?!」
(そ、そんな・・・グレースさんは私よりも早く教会を逃げたのに・・・?)
ヒルダは思わずショックで俯いていると、そこへ父がドアを開けて現れた。
「ヒルダ、目が覚めたのか?」
「お父様・・・・。」
父はヒルダの傍へ来ると言った。
「ヒルダ・・もう体の具合は大丈夫か?」
「は、はい・・。大丈夫です。」
「そうか・・ならお前に話がある。」
ハリスは深いため息をつくと、ヒルダのベッドの傍にある椅子に腰かけた
「ヒルダ、お前と一緒にいた子供たちは・・震えてばかりで何があったのか口を割らない。グレースと言う名前の少女は顔の火傷がひどくて・・・まともにしゃべれない。だからお前に話を聞くことにする。」
「は、はい・・。」
父の言葉は何所かヒルダを責める言い方をする。
「教会で何があった?警察の調べでは・・・あの家事は放火によるものだと言う事が今日判明した。」
(え・・?今日判明した・・・?)
父の物言いに違和感を感じたヒルダは尋ねた。
「あの・・・お父様。あの家事があったのはいつですか?」
「火事があったのは昨日だ。ヒルダ・・・お前はまる1日意識を無くして眠っていたんだ。」
ヒルダはあの火事から自分が丸1日眠っていた事を聞かされ、驚いた。
「え・・?そんなに・・・?」
「お前と一緒にいたあの少年少女たちは震えるだけで何があったか話さない。さあ、ヒルダ。お前が話すんだ。誰が・・・あの教会に放火した?ここクランベリーにすむ人々は皆信仰深い人達ばかりだ。今回教会が放火されたと言う事で人々は皆怒っている。お前たちの誰かが放火したことは間違いない。ヒルダ・・お前を助けた御者の話から、当時教会の中にいたのはお前と4人の少年少女のみだった事は確認されている。ヒルダ、何があったか正直に話すんだ。」
ハリスはヒルダの目をまっすぐに見つめると言った。
(どうしよう・・・。)
ヒルダは悩んだ。放火が重罪なのは十分知っている。そして貴族と平民では犯罪を犯した場合、貴族の方が罪が軽くなると言う事も。
(私は・・・今までグレースさんを・・苦しめてしまった・・・。そして今グレースさんは酷い火傷でまともにしゃべる事も出来ない・・。それなら・・。)
ヒルダは決心した。
「私です・・・。私が原因で・・あの教会が・・火事になってしまったの・・・。」
「「!!」」
ヒルダの言葉にハリスとマーガレットの顔色が変わった―。
「え・・・?ここは・・?うっ!い、痛い・・・っ!」
突如右腕に痛みが走った。みると右腕には包帯が巻かれていた。
ヒルダが目を覚ました気配に気づいたのか、カーテンの向こうから声がかかった。
「ヒルダ?!目が覚めたの?!」
その声は母、マーガレットの声だ。そしてヒルダが返事をする間もなく、カーテンがシャッと開けられ、母が現れた。
「お母様・・・。私、一体・・・。」
すると母は重々しく言った。
「町外れの教会が火事にあって・・・貴女は教会で倒れていたのよ。そこをグレースと言う子の馬車の御者をしていたお爺さんが助けてくれたのよ。助け出された時、貴女は腕に火傷を負っていて・・。」
「そう・・だったの・・。」
ヒルダがポツリと言うと、母が声を掛けてきた。
「ヒルダ、・・・一体何があったの?」
その声は震えていた。
「え?」
顔を上げると、母が険しい顔でヒルダを見ている。
「何が・・あったって?」
すると母がため息をつきながら言った。
「火事にあったあの教会には・・貴女以外に4人の子供達がいたのよ。皆火事になった教会から逃げ出して・・そして運悪くグレースという少女に火の粉が降って来て、その少女は・・・顔に酷い火傷を負ってしまったのよ。」
「え・・?!」
(そ、そんな・・・グレースさんは私よりも早く教会を逃げたのに・・・?)
ヒルダは思わずショックで俯いていると、そこへ父がドアを開けて現れた。
「ヒルダ、目が覚めたのか?」
「お父様・・・・。」
父はヒルダの傍へ来ると言った。
「ヒルダ・・もう体の具合は大丈夫か?」
「は、はい・・。大丈夫です。」
「そうか・・ならお前に話がある。」
ハリスは深いため息をつくと、ヒルダのベッドの傍にある椅子に腰かけた
「ヒルダ、お前と一緒にいた子供たちは・・震えてばかりで何があったのか口を割らない。グレースと言う名前の少女は顔の火傷がひどくて・・・まともにしゃべれない。だからお前に話を聞くことにする。」
「は、はい・・。」
父の言葉は何所かヒルダを責める言い方をする。
「教会で何があった?警察の調べでは・・・あの家事は放火によるものだと言う事が今日判明した。」
(え・・?今日判明した・・・?)
父の物言いに違和感を感じたヒルダは尋ねた。
「あの・・・お父様。あの家事があったのはいつですか?」
「火事があったのは昨日だ。ヒルダ・・・お前はまる1日意識を無くして眠っていたんだ。」
ヒルダはあの火事から自分が丸1日眠っていた事を聞かされ、驚いた。
「え・・?そんなに・・・?」
「お前と一緒にいたあの少年少女たちは震えるだけで何があったか話さない。さあ、ヒルダ。お前が話すんだ。誰が・・・あの教会に放火した?ここクランベリーにすむ人々は皆信仰深い人達ばかりだ。今回教会が放火されたと言う事で人々は皆怒っている。お前たちの誰かが放火したことは間違いない。ヒルダ・・お前を助けた御者の話から、当時教会の中にいたのはお前と4人の少年少女のみだった事は確認されている。ヒルダ、何があったか正直に話すんだ。」
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ヒルダは決心した。
「私です・・・。私が原因で・・あの教会が・・火事になってしまったの・・・。」
「「!!」」
ヒルダの言葉にハリスとマーガレットの顔色が変わった―。
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