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第6章 1 グレースとルドルフの母
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ルドルフがヒルダに婚約破棄を告げられた翌朝―
「おはようございます。ルドルフはいますか?」
朝、グレースはルドルフを迎えにやって来たのだが、屋敷の外にいるはずのルドルフの姿が見当たらない。そこで直にルドルフの屋敷にやってきたのだ。
「あら、グレースちゃん。おはよう。」
ルドルフの母はドアを開けると言った。
「あの、おばさま。ルドルフはいるかしら?」
「ルドルフならもう学校へ行ったわよ。」
「ええっ?!そんな・・・でもどうやってっ?!ここから学校までは大分遠いのに・・・。」
グレースは驚いた。ルドルフの家から学校までは片道5Kはある。これを歩くのはなかなか容易な距離ではない。
「それがね、実はあの子・・自転車を買って、以前から乗る練習をしていたのよ。それで上手に乗れるようになったから、今朝から自転車に乗って学校へ行ったわ。」
「え・・・?自転車ですか・・・?」
グレースは最近大都市では若者を中心に自転車が流行っていると言う事は噂で聞いていた。しかし、この田舎町『ハウベリー』ではまだ誰もが自転車を持っていなかったし、ここから出た経験が一度も無いグレースは未だに自転車と言う物を見た事が無かったのだ。
「ハリス様から爵位を頂いてすぐに、ルドルフが自転車が欲しいと言ったから、お父さんと一緒に首都に行って、自転車を買って来たのよ。それでずっと1人で乗る練習をしていたのよ。」
「そ、そんな・・・何故私に一言も言わずに・・・。」
グレースは俯いたが、ルドルフの母はその姿を黙って見ていた。そしてルドルフの話していた言葉を思い出していた。
何度も転びながらも家の庭で自転車に乗る練習をしていたルドルフは常に生傷が絶えなかった。なので見兼ねた母は練習をするのはもうやめた方がいいと進言した時、ルドルフはこう言ったのだ。
<ヒルダ様は馬車には乗れても、馬にはもう怖くて乗れないかもしれないから僕の自転車の後ろにヒルダ様を乗せて走れるようになりたいんだ。>
ルドルフは笑顔で語っていた。
(そうよね・・・グレースちゃんには言えるはず無いわよね。何せルドルフが自転車に乗る練習をしていたのは全てヒルダ様の為だったんだから・・・。)
一方、グレースの方はルドルフが1人で学校へ行ってしまった事が気に食わなくて仕方が無い。
(何よ・・・ようやくあの邪魔なヒルダからルドルフを奪えたと思ったのに・・・送り迎えをする約束をしていたのに、1人で勝手に自転車に乗って学校へ行ってしまうなんて・・・。)
イライラしながら爪を噛んでいるグレースを見ながら母は思った。
(ルドルフは昨日泣いたような顔をして帰ってきたけど・・・ルドルフの涙の原因は・・ひょっとするとグレースちゃんじゃないかしら・・。)
「それで・・・グレースちゃん・・・。」
声を掛けると、グレースはフイと背を向けると言った。
「帰ります。おば様・・・。」
そして馬車に乗り込むと、グレースを乗せた馬車は走り去って行った。
「・・・ふう・・・あの子の気の強さは・・まさに母親譲りだねえ・・・。」
実は、ルドルフの母とグレースの母は同級生同士だったのだが、やはり彼女も気の強い少女であった。
「全く・・・親子でグレース一家と関わり合いを持つなんて思わなかったわ・・・。それに昨夜からルドルフの様子が何だかおかしかったし・・・何も起きなければいいけど・・・。」
しかし、母の予感は当たった。
ルドルフが学校で暴力事件を起こす騒ぎとなり、学校から連絡がはいったのだ―。
「おはようございます。ルドルフはいますか?」
朝、グレースはルドルフを迎えにやって来たのだが、屋敷の外にいるはずのルドルフの姿が見当たらない。そこで直にルドルフの屋敷にやってきたのだ。
「あら、グレースちゃん。おはよう。」
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「あの、おばさま。ルドルフはいるかしら?」
「ルドルフならもう学校へ行ったわよ。」
「ええっ?!そんな・・・でもどうやってっ?!ここから学校までは大分遠いのに・・・。」
グレースは驚いた。ルドルフの家から学校までは片道5Kはある。これを歩くのはなかなか容易な距離ではない。
「それがね、実はあの子・・自転車を買って、以前から乗る練習をしていたのよ。それで上手に乗れるようになったから、今朝から自転車に乗って学校へ行ったわ。」
「え・・・?自転車ですか・・・?」
グレースは最近大都市では若者を中心に自転車が流行っていると言う事は噂で聞いていた。しかし、この田舎町『ハウベリー』ではまだ誰もが自転車を持っていなかったし、ここから出た経験が一度も無いグレースは未だに自転車と言う物を見た事が無かったのだ。
「ハリス様から爵位を頂いてすぐに、ルドルフが自転車が欲しいと言ったから、お父さんと一緒に首都に行って、自転車を買って来たのよ。それでずっと1人で乗る練習をしていたのよ。」
「そ、そんな・・・何故私に一言も言わずに・・・。」
グレースは俯いたが、ルドルフの母はその姿を黙って見ていた。そしてルドルフの話していた言葉を思い出していた。
何度も転びながらも家の庭で自転車に乗る練習をしていたルドルフは常に生傷が絶えなかった。なので見兼ねた母は練習をするのはもうやめた方がいいと進言した時、ルドルフはこう言ったのだ。
<ヒルダ様は馬車には乗れても、馬にはもう怖くて乗れないかもしれないから僕の自転車の後ろにヒルダ様を乗せて走れるようになりたいんだ。>
ルドルフは笑顔で語っていた。
(そうよね・・・グレースちゃんには言えるはず無いわよね。何せルドルフが自転車に乗る練習をしていたのは全てヒルダ様の為だったんだから・・・。)
一方、グレースの方はルドルフが1人で学校へ行ってしまった事が気に食わなくて仕方が無い。
(何よ・・・ようやくあの邪魔なヒルダからルドルフを奪えたと思ったのに・・・送り迎えをする約束をしていたのに、1人で勝手に自転車に乗って学校へ行ってしまうなんて・・・。)
イライラしながら爪を噛んでいるグレースを見ながら母は思った。
(ルドルフは昨日泣いたような顔をして帰ってきたけど・・・ルドルフの涙の原因は・・ひょっとするとグレースちゃんじゃないかしら・・。)
「それで・・・グレースちゃん・・・。」
声を掛けると、グレースはフイと背を向けると言った。
「帰ります。おば様・・・。」
そして馬車に乗り込むと、グレースを乗せた馬車は走り去って行った。
「・・・ふう・・・あの子の気の強さは・・まさに母親譲りだねえ・・・。」
実は、ルドルフの母とグレースの母は同級生同士だったのだが、やはり彼女も気の強い少女であった。
「全く・・・親子でグレース一家と関わり合いを持つなんて思わなかったわ・・・。それに昨夜からルドルフの様子が何だかおかしかったし・・・何も起きなければいいけど・・・。」
しかし、母の予感は当たった。
ルドルフが学校で暴力事件を起こす騒ぎとなり、学校から連絡がはいったのだ―。
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