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第5章 2 グレースの嫌がらせ
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「グレース・ミラーと申します。皆さんどうぞよろしくお願い致します。」
グレースは挨拶をすると、真っすぐにヒルダを見つめた。
(グレースさん・・。な、何故この学校に・・・?)
「ではグレースさん。席は・・・。」
するとグレースはヒルダの隣に座っているシャーリーを指さすと言った。
「先生、私はヒルダさんと友達なんです。彼女の隣の席にして頂けますか?」
「「え?!」」
ヒルダとシャーリーは同時に声を上げた。
「そうね。グレースさんは転校してきたばかりだから・・・友達の隣の席の方が良いかもしれませんね?それではシャーリーさん。席を譲ってあげて下さい。シャーリーさんは一番前の席があいてるので、そこに移動して下さい。」
「は、はい・・・。」
シャーリーは恨めしそうな目で一瞬グレースを睨み、カバンを持って席を移動した。そしてそれと入れ替わるようにグレースはヒルダの隣に座ると言った。
「これからよろしくね?ヒルダさん。」
「こ、こちらこそよろしく・・グレースさん。」
グレースは口元に笑みを浮かべたが・・・その眼は笑っていなかった。ヒルダはそれが恐ろしく感じた―。
休み時間になるとグレースはヒルダに声を掛けてきた。
「ねえ、ヒルダさん。お昼休み・・・学校案内をしてくれない?」
「え・・?」
するとそこへシャーリーがやって来ると言った。
「ねえ、グレースさん・・・だったかしら?ヒルダさんは足を痛めてるのよ?他の人に案内を頼んだらどうなの?」
シャーリーは一目見た時からグレースの事が気に入らなかったのだ。
「あら・・そうなの?それじゃ貴女にお願いしようかしら?」
グレースはシャーリーに言った。
「な、何で私が・・・。」
するとヒルダが言った。
「待って、シャーリー。グレースさん。私で良ければ案内させてもらうわ。」
「ヒルダッ!」
シャーリーはヒルダを止めようとした。
「ううん。いいの。お医者さんからはリハビリの一環としてなるべく足を動かした方がいいと言われてるから・・・。」
そしてグレースに言った。
「グレースさん。あまり早く歩けないけれども案内させてもらうわね?」
「ええ、よろしく。ヒルダさん。」
そして2人は昼休みの約束をした―。
「ここが、音楽室になるのよ。」
ヒルダは杖を突きながら、いくつめかの教室を案内した。
「ふ~ん・・・。」
しかしグレースはたいして興味が無さそうにしている。グレースの態度は2人の空気を悪くしていた。ヒルダは心の中でため息をつくと言った。
「それじゃ、次の教室に・・・。」
するとグレースが言った。
「ねえ、ヒルダさん。貴女・・本当に足が悪いの?」
「え・・?」
「本当はルドルフの気を引くために足を引きずってるんじゃないの?」
グレースのあまりの言いようにヒルダは耳を疑った。
「あ、あの・・・グレースさん・・?」
すると何を思ったのか、グレースは突如ヒルダの杖を奪ってしまった。
「ふん。何よ、こんな杖・・・。」
そして杖を音楽室の教室の一番端っこに投げてしまった。
「な、何をするの?グレースさん。」
ヒルダはグレースに抗議した。
「どうせ・・演技なんでしょう?もう教室案内はいいわ。」
それだけ言い捨てるとグレースは1人さっさと歩いて行ってしまった。
「そ、そんな・・・。」
ヒルダは杖を突かないとうまく歩けない。だが、今ここには誰もいない。自分一人で杖を取りに行かなければならないのだ。
「仕方ないわ・・。」
ヒルダは一歩足をふみだした。途端に左足にしびれがはしり、バランスを失って転んでしまった。
「いった・・・。」
何とか両手をついて立ち上がろうとしたが左足が思うように動かない。
「あっ!」
再びヒルダはバランスを崩し、床に倒れてしまった。
(もう、こうなったら・・床を這って行くしかないわね・・。)
そこでヒルダは両手を床について、這って歩いていると突如背後から声が聞こえた。
「ヒルダッ!」
振り向くとそこには荒い息を吐きながら立っているシャーリーがいた。
「シャ、シャーリー・・・。」
するとシャーリーは無言で教室へ入ると杖を拾ってヒルダに手渡した。
「あ、ありがとう・・・。」
するとシャーリーは無言でヒルダを抱きしめると、肩を震わせた。
「シャーリー・・・?も、もしかして・・泣いてるの・・?」
「許せない・・・あの女・・・。教室でヒルダの悪口を・・・仮病を使ってるんじゃないかって・・・。」
「!」
「シャーリー・・ありがとう。助けに来てくれて・・・。」
ヒルダは優しい親友を抱きしめるのだった―。
グレースは挨拶をすると、真っすぐにヒルダを見つめた。
(グレースさん・・。な、何故この学校に・・・?)
「ではグレースさん。席は・・・。」
するとグレースはヒルダの隣に座っているシャーリーを指さすと言った。
「先生、私はヒルダさんと友達なんです。彼女の隣の席にして頂けますか?」
「「え?!」」
ヒルダとシャーリーは同時に声を上げた。
「そうね。グレースさんは転校してきたばかりだから・・・友達の隣の席の方が良いかもしれませんね?それではシャーリーさん。席を譲ってあげて下さい。シャーリーさんは一番前の席があいてるので、そこに移動して下さい。」
「は、はい・・・。」
シャーリーは恨めしそうな目で一瞬グレースを睨み、カバンを持って席を移動した。そしてそれと入れ替わるようにグレースはヒルダの隣に座ると言った。
「これからよろしくね?ヒルダさん。」
「こ、こちらこそよろしく・・グレースさん。」
グレースは口元に笑みを浮かべたが・・・その眼は笑っていなかった。ヒルダはそれが恐ろしく感じた―。
休み時間になるとグレースはヒルダに声を掛けてきた。
「ねえ、ヒルダさん。お昼休み・・・学校案内をしてくれない?」
「え・・?」
するとそこへシャーリーがやって来ると言った。
「ねえ、グレースさん・・・だったかしら?ヒルダさんは足を痛めてるのよ?他の人に案内を頼んだらどうなの?」
シャーリーは一目見た時からグレースの事が気に入らなかったのだ。
「あら・・そうなの?それじゃ貴女にお願いしようかしら?」
グレースはシャーリーに言った。
「な、何で私が・・・。」
するとヒルダが言った。
「待って、シャーリー。グレースさん。私で良ければ案内させてもらうわ。」
「ヒルダッ!」
シャーリーはヒルダを止めようとした。
「ううん。いいの。お医者さんからはリハビリの一環としてなるべく足を動かした方がいいと言われてるから・・・。」
そしてグレースに言った。
「グレースさん。あまり早く歩けないけれども案内させてもらうわね?」
「ええ、よろしく。ヒルダさん。」
そして2人は昼休みの約束をした―。
「ここが、音楽室になるのよ。」
ヒルダは杖を突きながら、いくつめかの教室を案内した。
「ふ~ん・・・。」
しかしグレースはたいして興味が無さそうにしている。グレースの態度は2人の空気を悪くしていた。ヒルダは心の中でため息をつくと言った。
「それじゃ、次の教室に・・・。」
するとグレースが言った。
「ねえ、ヒルダさん。貴女・・本当に足が悪いの?」
「え・・?」
「本当はルドルフの気を引くために足を引きずってるんじゃないの?」
グレースのあまりの言いようにヒルダは耳を疑った。
「あ、あの・・・グレースさん・・?」
すると何を思ったのか、グレースは突如ヒルダの杖を奪ってしまった。
「ふん。何よ、こんな杖・・・。」
そして杖を音楽室の教室の一番端っこに投げてしまった。
「な、何をするの?グレースさん。」
ヒルダはグレースに抗議した。
「どうせ・・演技なんでしょう?もう教室案内はいいわ。」
それだけ言い捨てるとグレースは1人さっさと歩いて行ってしまった。
「そ、そんな・・・。」
ヒルダは杖を突かないとうまく歩けない。だが、今ここには誰もいない。自分一人で杖を取りに行かなければならないのだ。
「仕方ないわ・・。」
ヒルダは一歩足をふみだした。途端に左足にしびれがはしり、バランスを失って転んでしまった。
「いった・・・。」
何とか両手をついて立ち上がろうとしたが左足が思うように動かない。
「あっ!」
再びヒルダはバランスを崩し、床に倒れてしまった。
(もう、こうなったら・・床を這って行くしかないわね・・。)
そこでヒルダは両手を床について、這って歩いていると突如背後から声が聞こえた。
「ヒルダッ!」
振り向くとそこには荒い息を吐きながら立っているシャーリーがいた。
「シャ、シャーリー・・・。」
するとシャーリーは無言で教室へ入ると杖を拾ってヒルダに手渡した。
「あ、ありがとう・・・。」
するとシャーリーは無言でヒルダを抱きしめると、肩を震わせた。
「シャーリー・・・?も、もしかして・・泣いてるの・・?」
「許せない・・・あの女・・・。教室でヒルダの悪口を・・・仮病を使ってるんじゃないかって・・・。」
「!」
「シャーリー・・ありがとう。助けに来てくれて・・・。」
ヒルダは優しい親友を抱きしめるのだった―。
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