15 / 17
第15話
しおりを挟む
俺は大きく深呼吸した。
「お義父さん!」
「お義父さんと呼ぶな!! 図々しい奴め!」
「す、すみません!!」
倍以上の大きい声で怒鳴られ、思わず萎縮しそうになる。
「お前のような男に、お義父さんなどと呼ばれる筋合いはない!」
「で、ではヒューゴー子爵と呼ばせて下さい。ヒューゴー子爵! どうしても私を出入り禁止にすると仰るのでしたら、言う通りにいたします。ですがその代わり条件があります!」
「何……? 条件だと?」
義父の眉がピクリと動く。
「はい、そうで……」
「馬鹿者!! まだ自分の立場を理解していないようだな!! お前のようなクズが条件を言える立場だと思っているのか!!」
鼓膜がビリビリ震えるほどの大声で怒鳴る義父。
「ク、クズ……?」
言うに事欠いて、まさか自分がクズ呼ばわりされるとは思わなかった。
しかも、こんなに大勢の見ている前で。流石にこれはショックが大き過ぎる。
「ああ、そうだ。クズをクズと呼んで何が悪い」
義父は腕組みしたまま、微動だにしない。
「くっ……」
思わず、唇を噛みしめる。
だが、こんなことぐらいで挫けてなるものか。これでも俺は若くして一代で事業を起こした社長だ!
おまけに、義父の言われるまま出ていけば……何もかも失ってしまう!!
「そのようなことを仰らず後生ですから、どうかお願いします。この通りですから」
こうなったら下でに出るしか無い。恥をかきすて、情けないほどに何度も頭をペコペコ下げる。
「ふん! まぁ良い。聞くだけ聞いてやろう。お前が出ていく条件を言ってみろ」
やった! 俺の誠意が伝わったようだ!
下でに出て正解だった。
「はい、でしたら私物を全て引き取らせて下さい。会社にある私物と、屋敷にある私物全てです。着の身着のまま追い出されては露頭に迷ってしまいます。私物まで取り上げるのは、あまりに無慈悲ではないでしょうか? 私物の持ち運びの許可と、荷物整理に時間を下さい。5日……いえ、せめて3日。いかがでしょうか?」
情に訴えるように話せば、少しは聞く耳を持ってくれるかもしれない。
何とか出ていくまでの数日間、時間を稼ぐんだ。
そして、その間に信頼を取り戻せれば……うまくいけるかもしれない。
義父は少しの間、考え込む素振りを見せたが……やがて頷いた。
「……いいだろう」
「え!? 本当ですか!?」
まさか、俺の作戦が成功したのか?
「住むところが決まり次第、住所を教えろ。お前の私物を郵送してやろう。それまでは預かっといてやる」
「え!?」
まさか、そう出てくるとは思わなかった。
「だが、こちらもタダでは出来ない。なのでこちらの条件も出そう」
「ど、どのような条件……でしょうか……?」
背中を嫌な汗が伝う。
すると義父がニヤリと笑い、懐から二つ折りにした書類を取り出した。
「これにサインをしてもらおうか?」
「サ、サイン……?」
まさか……果てしなく嫌な予感しかない。
「そうだ。言わずとも分かるだろう。既にエリザベスの署名は入っている。後はお前が署名するだけだ! さぁ! とっとと離婚届にサインしろ! さもなくばお前の私物は没収だ! どうせ、我らが与えた金で買い集めたものばかりなのだからな!」
義父が眼前に突きつけてきた離婚届には……エリザベスの名前がしっかりと記入されていた――
「お義父さん!」
「お義父さんと呼ぶな!! 図々しい奴め!」
「す、すみません!!」
倍以上の大きい声で怒鳴られ、思わず萎縮しそうになる。
「お前のような男に、お義父さんなどと呼ばれる筋合いはない!」
「で、ではヒューゴー子爵と呼ばせて下さい。ヒューゴー子爵! どうしても私を出入り禁止にすると仰るのでしたら、言う通りにいたします。ですがその代わり条件があります!」
「何……? 条件だと?」
義父の眉がピクリと動く。
「はい、そうで……」
「馬鹿者!! まだ自分の立場を理解していないようだな!! お前のようなクズが条件を言える立場だと思っているのか!!」
鼓膜がビリビリ震えるほどの大声で怒鳴る義父。
「ク、クズ……?」
言うに事欠いて、まさか自分がクズ呼ばわりされるとは思わなかった。
しかも、こんなに大勢の見ている前で。流石にこれはショックが大き過ぎる。
「ああ、そうだ。クズをクズと呼んで何が悪い」
義父は腕組みしたまま、微動だにしない。
「くっ……」
思わず、唇を噛みしめる。
だが、こんなことぐらいで挫けてなるものか。これでも俺は若くして一代で事業を起こした社長だ!
おまけに、義父の言われるまま出ていけば……何もかも失ってしまう!!
「そのようなことを仰らず後生ですから、どうかお願いします。この通りですから」
こうなったら下でに出るしか無い。恥をかきすて、情けないほどに何度も頭をペコペコ下げる。
「ふん! まぁ良い。聞くだけ聞いてやろう。お前が出ていく条件を言ってみろ」
やった! 俺の誠意が伝わったようだ!
下でに出て正解だった。
「はい、でしたら私物を全て引き取らせて下さい。会社にある私物と、屋敷にある私物全てです。着の身着のまま追い出されては露頭に迷ってしまいます。私物まで取り上げるのは、あまりに無慈悲ではないでしょうか? 私物の持ち運びの許可と、荷物整理に時間を下さい。5日……いえ、せめて3日。いかがでしょうか?」
情に訴えるように話せば、少しは聞く耳を持ってくれるかもしれない。
何とか出ていくまでの数日間、時間を稼ぐんだ。
そして、その間に信頼を取り戻せれば……うまくいけるかもしれない。
義父は少しの間、考え込む素振りを見せたが……やがて頷いた。
「……いいだろう」
「え!? 本当ですか!?」
まさか、俺の作戦が成功したのか?
「住むところが決まり次第、住所を教えろ。お前の私物を郵送してやろう。それまでは預かっといてやる」
「え!?」
まさか、そう出てくるとは思わなかった。
「だが、こちらもタダでは出来ない。なのでこちらの条件も出そう」
「ど、どのような条件……でしょうか……?」
背中を嫌な汗が伝う。
すると義父がニヤリと笑い、懐から二つ折りにした書類を取り出した。
「これにサインをしてもらおうか?」
「サ、サイン……?」
まさか……果てしなく嫌な予感しかない。
「そうだ。言わずとも分かるだろう。既にエリザベスの署名は入っている。後はお前が署名するだけだ! さぁ! とっとと離婚届にサインしろ! さもなくばお前の私物は没収だ! どうせ、我らが与えた金で買い集めたものばかりなのだからな!」
義父が眼前に突きつけてきた離婚届には……エリザベスの名前がしっかりと記入されていた――
895
お気に入りに追加
971
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。
公爵令嬢は逃げ出すことにした【完結済】
佐原香奈
恋愛
公爵家の跡取りとして厳しい教育を受けるエリー。
異母妹のアリーはエリーとは逆に甘やかされて育てられていた。
幼い頃からの婚約者であるヘンリーはアリーに惚れている。
その事実を1番隣でいつも見ていた。
一度目の人生と同じ光景をまた繰り返す。
25歳の冬、たった1人で終わらせた人生の繰り返しに嫌気がさし、エリーは逃げ出すことにした。
これからもずっと続く苦痛を知っているのに、耐えることはできなかった。
何も持たず公爵家の門をくぐるエリーが向かった先にいたのは…
完結済ですが、気が向いた時に話を追加しています。

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

【完結】広間でドレスを脱ぎ捨てた公爵令嬢は優しい香りに包まれる【短編】
青波鳩子
恋愛
シャーリー・フォークナー公爵令嬢は、この国の第一王子であり婚約者であるゼブロン・メルレアンに呼び出されていた。
婚約破棄は皆の総意だと言われたシャーリーは、ゼブロンの友人たちの総意では受け入れられないと、王宮で働く者たちの意見を集めて欲しいと言う。
そんなことを言いだすシャーリーを小馬鹿にするゼブロンと取り巻きの生徒会役員たち。
それで納得してくれるのならと卒業パーティ会場から王宮へ向かう。
ゼブロンは自分が住まう王宮で集めた意見が自分と食い違っていることに茫然とする。
*別サイトにアップ済みで、加筆改稿しています。
*約2万字の短編です。
*完結しています。
*11月8日22時に1、2、3話、11月9日10時に4、5、最終話を投稿します。


夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました
香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。
これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。
実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。
「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」
「自由……」
もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。
ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。
再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。
ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。
一方の元夫は、財政難に陥っていた。
「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」
元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。
「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」
※ふんわり設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる