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第7話
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――40分後
「何だって? ツケがきかないだって?」
思わず大きな声が出てしまい、慌ててミランダの方を振り向いた。
しかし、ここから少し離れたソファに座る彼女は何も聞こえていない様子で窓の外を眺めている。
安堵のため息をつくと、俺は店員に向き直った。
「おい、どういうことだ? 俺はこの靴屋の常連客だってことくらい、分かっているだろう? いつもエリザベスと靴を買いに来ていたじゃないか? 金は後できちんと払う。だからツケ払いにさせるんだ」
半ば脅迫めいた言葉と取られてしまうが、ここは致し方ない。
昨夜も俺の金で、メリンダとデートをしたのだ。エリザベスが屋敷に戻ってくるまでには後2日はある。
それまではなるべく自分の手元の金を減らしたくはなかった。
しかし店員は俺が凄んでも、怯むこと無く平然と答える。
「ええ、それは十分承知しております。ですが、我々が特別対応していたのはお客様が奥様と買い物にいらして下さっていたからです。奥様がいらっしゃらなければ、流石にツケ払いは無理です。現金でお支払い願います」
「何だって……?」
まただ、ここでもまたエリザベスだ。俺という人間を信用していないのか? これでも俺は社長なのに?
「いいか? 俺を誰だと思っている? 俺は……」
「はい、カール製粉の社長様でいらっしゃいますよね。でしたら現金でお買い上げなど、造作も無いことではありませんか?」
店員は痛いところをついてくる。
確かに俺は社長ではある。けれども今の規模まで会社を大きくすることが出来たのは、全てエリザベスと彼女の両親の資金援助のお陰だ。
よって、俺の財布事情は3人に握られてしまっている。それが資金援助を受ける際の条件だったからだ。
「どうされましたか? まさか、お支払出来ないのでしょうか? だとしたら、申し訳ございませんがお連れ様からお金を頂くしかありませんね」
「な、何だって!?」
メリンダから金を取る? 冗談じゃない、そんなマネさせられるか!
「わ、分かった。支払う、現金で支払おう」
胸ポケットから札入れを取り出し……仕方無しにその場で現金払いをした。
くそっ……なんてことだ。
コレで、手持ちの金は半分以下に減ってしまったじゃないか。
店員は現金を受け取ると、途端に笑顔になる。
「ありがとうございます。またのご利用をお待ちしております。今度は是非、奥様といらして下さい」
「あ、ああ。勿論、そうするさ」
背中にゾッとしたものを感じながら、返事をすると急ぎ足でメリンダの元へ向かった。
「あ、社長。靴のプレゼントありが……え? どうなさったのですか? 何だか顔色が優れないようですけど?」
俺の顔色は相当悪かったのだろう、メリンダが心配そうに声をかけてきた。
「い、いや。大丈夫だ、それよりも早く店を出よう」
背後から何やら痛い視線を感じる。長居すると、色々良くないことが起こりそうだ。
「はい、分かりました」
立ち上がったメリンダを伴うと、逃げるように靴屋を後にした。
「え? もう会社に戻るのですか? せめて何処かでお茶でも飲んでいきませんか? もう少しだけ、社長とデート気分を楽しみたいのですけど……」
メリンダが嬉しいセリフを言ってくれる。勿論、俺もそうしたいところだが……。
「それは無理だ。今は一切変装をしていないからな。既婚者の俺が君と2人で町を歩いてみろ。知り合いに会ったら何を言われるか分かったものじゃないだろう?」
婿養子の立場である俺は何かと気を使わなければならないのだ。メリンダにはその事が良く分かっていない。
「そうですか……でも、仕方ありませんね。靴をプレゼントしていただいたのですから、これ以上我儘は言えませんものね。分かりました、では会社に戻りましょう」
「君が物分かりの良い女性で助かったよ」
こうして、俺達は再び辻馬車に乗り込むと会社へ戻った――
「何だって? ツケがきかないだって?」
思わず大きな声が出てしまい、慌ててミランダの方を振り向いた。
しかし、ここから少し離れたソファに座る彼女は何も聞こえていない様子で窓の外を眺めている。
安堵のため息をつくと、俺は店員に向き直った。
「おい、どういうことだ? 俺はこの靴屋の常連客だってことくらい、分かっているだろう? いつもエリザベスと靴を買いに来ていたじゃないか? 金は後できちんと払う。だからツケ払いにさせるんだ」
半ば脅迫めいた言葉と取られてしまうが、ここは致し方ない。
昨夜も俺の金で、メリンダとデートをしたのだ。エリザベスが屋敷に戻ってくるまでには後2日はある。
それまではなるべく自分の手元の金を減らしたくはなかった。
しかし店員は俺が凄んでも、怯むこと無く平然と答える。
「ええ、それは十分承知しております。ですが、我々が特別対応していたのはお客様が奥様と買い物にいらして下さっていたからです。奥様がいらっしゃらなければ、流石にツケ払いは無理です。現金でお支払い願います」
「何だって……?」
まただ、ここでもまたエリザベスだ。俺という人間を信用していないのか? これでも俺は社長なのに?
「いいか? 俺を誰だと思っている? 俺は……」
「はい、カール製粉の社長様でいらっしゃいますよね。でしたら現金でお買い上げなど、造作も無いことではありませんか?」
店員は痛いところをついてくる。
確かに俺は社長ではある。けれども今の規模まで会社を大きくすることが出来たのは、全てエリザベスと彼女の両親の資金援助のお陰だ。
よって、俺の財布事情は3人に握られてしまっている。それが資金援助を受ける際の条件だったからだ。
「どうされましたか? まさか、お支払出来ないのでしょうか? だとしたら、申し訳ございませんがお連れ様からお金を頂くしかありませんね」
「な、何だって!?」
メリンダから金を取る? 冗談じゃない、そんなマネさせられるか!
「わ、分かった。支払う、現金で支払おう」
胸ポケットから札入れを取り出し……仕方無しにその場で現金払いをした。
くそっ……なんてことだ。
コレで、手持ちの金は半分以下に減ってしまったじゃないか。
店員は現金を受け取ると、途端に笑顔になる。
「ありがとうございます。またのご利用をお待ちしております。今度は是非、奥様といらして下さい」
「あ、ああ。勿論、そうするさ」
背中にゾッとしたものを感じながら、返事をすると急ぎ足でメリンダの元へ向かった。
「あ、社長。靴のプレゼントありが……え? どうなさったのですか? 何だか顔色が優れないようですけど?」
俺の顔色は相当悪かったのだろう、メリンダが心配そうに声をかけてきた。
「い、いや。大丈夫だ、それよりも早く店を出よう」
背後から何やら痛い視線を感じる。長居すると、色々良くないことが起こりそうだ。
「はい、分かりました」
立ち上がったメリンダを伴うと、逃げるように靴屋を後にした。
「え? もう会社に戻るのですか? せめて何処かでお茶でも飲んでいきませんか? もう少しだけ、社長とデート気分を楽しみたいのですけど……」
メリンダが嬉しいセリフを言ってくれる。勿論、俺もそうしたいところだが……。
「それは無理だ。今は一切変装をしていないからな。既婚者の俺が君と2人で町を歩いてみろ。知り合いに会ったら何を言われるか分かったものじゃないだろう?」
婿養子の立場である俺は何かと気を使わなければならないのだ。メリンダにはその事が良く分かっていない。
「そうですか……でも、仕方ありませんね。靴をプレゼントしていただいたのですから、これ以上我儘は言えませんものね。分かりました、では会社に戻りましょう」
「君が物分かりの良い女性で助かったよ」
こうして、俺達は再び辻馬車に乗り込むと会社へ戻った――
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