記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした

第120話 父との再会？

「セラフィム…私、どれくらい眠っていたのかしら？」

「…聞いて驚くなよ？60日だ」

「ふ～ん…60日…ええええっ？！ろ、60日？！」

慌てて飛び起きようとして、力が入らずベッドに倒れ込んでしまった。

「ああ…ほら。無理するからだ。魔法でユリアの体力を維持させていたんだ。もうその魔法は既に切ってあるから今のユリアには体力がほとんど残されていないんだから無理しないほうがいい」

「え…？ひょっとしてセラフィムがずっと私の面倒を見てくれていたの…？」

「まぁ…そういう事になるかな？ユリアがこんな事になってしまったのは油断していた俺の責任でもあるし…」

「…ねぇ。これって…もう夢の世界なんかじゃないのよね？」

ベッドの中で横たわったまま、私はセラフィムに尋ねた。

「ああ、勿論」

「そう…何だか色々な夢を見ていたから何処までが夢か現実か分からないけど…」

その時―。

バンッ！！

いきなり扉が開かれ、数人の使用人たちをひきつれた父が現れた。

「あ…お父様…」

「ユリアッ！」

父に続き、背後にいた使用人たちが驚いた声を上げる。

「ユリアお嬢様が…」
「ついに目を覚まされた…！」
「奇跡だわ！」

「ユリア…目が覚めたのだな？」

余程慌てて駆けつけてきたのだろうか？父は肩で息を切らせながら大股で部屋にはいってくると私に声を掛けてきた。

「はい、お父様…」

ベッドに横たわったまま私は返事をした。

「そうか…。良かった…」

安堵のため息をつく父を見て私は思った。

うん。この人は…紛れもなく私の父だ。夢の世界ではまるきり他人としか感じられなかったけれども、全ての記憶を取り戻した今の私には、はっきり分かる。この人が自分の父親であるという事と…以前までの私は傲慢で我儘な嫌な人間だったということが。

「お父様、心配掛けてごめんなさい」

私の言葉に父は目を見開いた。

「…どうしたのだ？今迄そのようなしおらしい口を聞いた事等無かったのに…」

「はい。長い眠りから覚めて…私は生まれ変わったんです」

「そ、そうなのか…？よく意味が分からないが…」

首を傾げた父は次にセラフィムを見た。

「今迄娘を見てくれてありがとう、感謝する」

「いえ、当然の事をしたまでですから。それで…彼女と2人だけで話がしたいので席を外して頂けないでしょうか？」

セラフィムが父に言った。

「あ、ああ。分かった。一度席を外そう」

そして父は頷き、一緒にやってきた使用人達を連れて部屋を出ていった。


パタン…

扉がしまり、部屋の中は再び私とセラフィムの2人きりになると彼が声を掛けてきた。


「ユリア…それで誰がユリアの命を狙っているのか…分かったのか？」

「ええ、勿論」

私はセラフィムの目を見つめながら頷いた―。