記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中

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第94話 ジョンの正体

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 私の命を狙っているのと同じ人物…同じ…。

「キャアアアアアッ!!や、やっぱり殺人鬼なんじゃないのーっ!いやーっ!出てってっ!わ、私を殺しても何にもならないわよーっ!」

私は再び物を掴んで投げつけようとして…。

「ユリアッ!落ち着いてっ!」

ジョン…もとい、セラフィム?の言葉と共に私は身体が動かなくなってしまった。

「い、一体私にな、な、何をしたのよ…?!」

「ごめん。そんなに興奮していたら話をすることもままならないから…ちょっと身体を拘束させてもらったよ」

「や、やっぱりその普通じゃ考えられないようなその魔法…ジョンなのね?やっぱりジョンだったのね?!」

「そう、それだよ」

するとセラフィム?が私に言った。

「それって…何よ?」

「ユリアは何でジョンと呼ぶのかと思ってね」

「だ、だって本人が名乗ったよ。自分の名前はジョン・スミスだって」

「ジョン・スミス…あぁ、そう言う事か…ユリアはその名前を聞いた時、何て思ったんだい?」

「何って…随分ありふれた名前だなって思ったわ。何処にでもある名前でまるで偽名の様に感じ…」

そこまで言って私は思った。『何故ジョン・スミス』と言う名前を偽名だと感じたのだろうか…?この世界では余り聞かない名前なのに…。

「え…?この世界って…?」

何だろう?また妙な違和感を感じる。その様子をじっと見つめるセラフィムが言った。

「ユリアは人ならざる者に命を狙われているんだ」

「え?!」

あまりにも唐突な言葉に驚く。

「な、な、何それ?私の命を狙っているのは人間じゃ無かったの?」

「そうだよ。だからユリアは僕の噂を聞きつけて…身の危険を犯してでも僕の所へやってきた」

セラフィムは静かに語る。

「だ、だけど私の命を狙っているのはジョンなのよね?貴方とジョンは同一人物だってさっき言ってたじゃない…。ハッ!もしかして…セラフィム、貴方は人間じゃなかったのっ?!」

「いや?僕はれっきとした普通の人間だよ?今はね」

もう何が何だか分からない。セラフィムの話を聞けば聞くほど頭が混乱してくる。

「ねぇ、勿体つけた話し方するのはやめてよ。そういう所がジョンと似てるのよね」

「仕方ないよ。オルニアスに僕の身体は乗っ取られてしまったからね。でも…ようやく呪縛から逃れることが出来たけど…彼は完全に僕と分離してしまったみたいだから」

「え…?オルニアス…?オルニアスって誰の事よ?」

「ユリアがジョンと呼んでいる存在の名前だよ」

「え?!彼の名前はオルニアスって言うの?!一体何者なのよ?!」

するとセラフィムは以外な言葉を口にした。

「オルニアスの正体は…堕天使だ。姿を自由自在に変える事が出来る…厄介な奴だよ」

「え…?」

あまりにも以外な話に私は耳を疑った。

「だ、堕天使…?人間じゃ無いって事…?」

「そうだよ。散々命を狙われてきたユリアなら分かるだろう?ただの人間があんな時間を操ったり、空間を捻じ曲げるような魔法を使えるはずがない」

「あ、あのね。そもそも私は『魔法』が存在している世界こそ信じられないわよ」

「ああ、そうか…成程、違和感を感じるのは無理ないか…今のユリアは別人と言っても過言ではないからな…」

「え…?」

何、その話…?

私はますます頭が混乱してきた―。


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