記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中

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第78話 マテオの豹変

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 話も終わり、2人でカフェを出るとマテオが尋ねてきた。

「ユリア、これからどうするんだ?」

「そうね…とりあえずベルナルド王子の所へ行くわ。まだ昼休み終了まで時間はあるし。いつも昼休みが終わるまであなた達は何処にいるの?」

「俺たちは大抵生徒会室で時間を潰しているけどな」

「そう。それじゃ行ってみるわ」

生徒会室に行く為に歩き始めると、当然の如くマテオが後からついてくる。

「なぁ。王子のところへ行ってどうするんだ?」

マテオが質問してきた。

「私達、婚約解消していますよね?って尋ねに行くのよ。10日以上前に婚約破棄して下さいってお願いしているから」

「え?そうだったのか?知らなかったな~」

マテオの言葉に私は嫌な予感がした。ひょっとすると私とベルナルド王子は婚約解消がまだされていないのだろうか?

「…だとしたら大変だわ…急いで王子の所へ行かなくちゃ」

「ユリア。婚約解消していることが分かった後はどうするんだ?」

「そうしたらノリーンの前でさり気なく言うわ。『私、ベルナルド王子と婚約解消したのよね~』って感じでね」

「そうか、それでノリーンのターゲットを自分からテレシアに向けさせるんだな?流石は悪女のユリアだ」

マテオは何故か嬉しそうに言う。

「…ねぇ。ひょっとして他人事だと思って楽しんでいるでしょう?」

隣を歩くマテオを恨めしそうな目で見ながら私は言った。

「いや、まさか。そんなはずないだろう?」

「だってさっきから笑って話をしているじゃない」

絶対にマテオは私が困っているのをみて喜んでいるに違いない。

「だから、違うって。むしろ俺はホッとしてるんだよ。王子と婚約解消し、ノリーンの恨みも回避出来るなら、こんな嬉しいことは俺にとってまたとない事だからな」

そんな事を話している内に私とマテオは生徒会室の側までやってきていた。

「ねぇ。何故マテオにとってまたとない事なの?」

どうにもマテオは先程から訳の分からない事を言ってくる。何故彼にとって嬉しい事なのだろう?首を傾げながら生徒会室の扉の前に立った時、マテオがとんでもない事を言ってきた。

「決まってるだろう?俺がユリアの事を好きだからに決まってるじゃないか」

「はぁっ?!」

あまりにも突然の告白に驚いて私はマテオを振り向いた。

「ね、ねぇ…今の台詞…本気で言ってるの?」

「ああ、勿論だ。この顔が冗談で言ってるように見えるか?」

さっきまではしょっちゅう顔を赤らめていたくせに、何故か今のマテオは平然としている。

「そ、そうね…冗談で言っているようにも見えないけれど、かと言って告白をしているような顔に見えないわね…」

「そうか?ならもう一度言うか」

すると突然マテオの両手が伸びてきて、私の両肩をガシッと掴んできた。

「好きだ、ユリア。お前のことが大好きだ」

「へ…?」

そして何を思ったか目を閉じるとマテオが顔を近づけてきた。

ギャ~ッ!!

思わず心の中で悲鳴を上げかけた時…。

ガチャ

私の背後で突然生徒会室の扉が開かれた。

「…お前ら、一体こんなところで何やってるんだよ?」

そこには呆れ顔をしたアークが立っていた。

「あ、アークッ!た、助けてよっ!」

未だにマテオは私の両肩を掴んだまま、仏頂面で言った。

「何で邪魔するんだよ…あと少しだったのに」

少し?少しって何がっ?!

「マテオ…全くお前って奴は…勝手にユリアに手を出すなよ」

アークはマテオの腕を掴むと睨みつけた。

た、助かった…。

「ちょっと!どういうつもりよっ!何でいきなりあんな事したのよっ!」

アークを盾に私はマテオに文句を言った。

「あんな事…?ってどんな事だ?」

マテオはキョトンとした顔で私を見る。

「ふ、ふざけないでよっ!い、いきなり私に…その、キ、キスしようとしたじゃないのっ!」

「はぁっ?!だ、誰がお前に?!」

マテオが顔を真っ赤にして反論してくる。

「何言ってるのよっ!た、たった今しようとしたでしょうっ?!」

するとアークが言った。

「ああ、そうだ。マテオ。今確かにお前はユリアにキスしようとしていた。こんな風にな」

するといきなりアークが私の方を振り向くと、顎をつまんで顔を近づけてきた。

「お、おいっ!アークッ!お前、何してるんだっ?!」

背後ではマテオの焦った声が聞こえる。

イヤァァァッ!!

「な、何するのよ~っ!!」

バッチーンッ!!

私は思い切りアークの顔を平手打ちした。

「え…?お、俺は今一体何を…?」

アークは頬を赤くして、呆然としている。

「ふ、2人とも…最っ低っ!!」

そして私は急いで生徒会室の前から逃げ出した。

「おかしい…絶対に何かおかしいわ…っ!」

こんなのおかしいに決まってるーっ!!

私は自分の教室目指して生徒達の注目を浴びながら走り続けた―。

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