68 / 126
第68話 息詰まる食卓
しおりを挟む
そ、そんな…っ!記憶喪失で自分のことも何一つ覚えていないのに、どうして母親の名前が分かるのだろう?大体、何故母親が亡くなったのかも分からないのにっ?!
「あ、あの…そ、それは…」
背中に冷や汗が流れる。そう言えば父の話では私は兄達から嫌われているようだった。と言う事は…私を追い出す為にこのような質問をしているのだろうか?」
「どうした、ユリア。やはり答えられないのだな?だったら…」
シリウスお兄様目が怪しく光る。
「ああ、答えられないのだったら…」
その時―。
バタンッ!
突然扉が大きく開け放たれ、お父様が部屋の中に現れた。
「アレスッ!シリウスッ!お前たち、ユリアの部屋で何をしているのだっ!」
「あ…父上…」
「父上っ!」
アレスお兄様とシリウスお兄様が驚いたようにお父様を見る。
「一体お前たちという奴は…1年ぶりに帰ってきたかと思えば私の所へ顔も出さずにユリアの元へ行くとは…一体何を考えているのだ?!」
えっ?!そうだったの?!
「そ、それは…」
「ユリアの様子を見に…長男としてユリアの様子が気になったので…」
2人の兄はオロオロしている。
「それにお前たち…ユリアは記憶喪失だと言っているだろう?それなのに母親の名前など答えられるとでも思っているのか?!一体何を考えているのだ!」
「「…」」
あ!黙ってしまったっ!やっぱり私が答えられなかったら難癖をつけてここから追い出すつもりだったのかもしれない!
「…とにかくお前たち2人には話がある。荷物を置いたら速やかに私の執務室へくるように」
父は頭を抑えながら言う。
「え?荷物?」
その言葉に驚く。何とよく見れば私の部屋の入り口に大きなトランクケースが2つおかれているではないか。この2人は自分の荷物を持ったまま私の部屋にやってきていたのだ。
「「はい…」」
2人の兄は不満?そうに返事をすると父に連れられ、トランクケースを引っ張りながら私の部屋を出ていった。
「ふぅ…やっといなくなってくれたわ…」
安堵のため息を付きながら、この先の事が非常に不安になってきた。
「私…このまま何事もなく、この屋敷にいられるのかしら…」
そして私は不安な気持ちを抱えつつ…再び勉強を再開した―。
****
19時―
カチャカチャカチャ…
久しぶりに家族全員一家揃っての食事の団欒席…。それなのに、誰1人口を利く者はいない。
「「「…」」」
父も2人の兄も豪華な食事を前に無言で料理を口にしている。
「…」
未だに記憶が戻らず、全員が赤の他人にしか思えない私は当然言葉を掛けることも出来ず、やはり無言で食事を続けていた。
「「「「…」」」」
張り詰めた、行き詰まるような雰囲気。うう…胃が痛くなりそうだ…。食事が済んだらさっさと自分の部屋へ戻ろう。
そう考えていた時―。
「ユリア」
突然アレスお兄様が声を掛けてきた。
「は、はい!」
驚いて顔を上げるとアレスお兄様がじ~っと私を見つめている。
「な、な、何でしょうか?お兄様」
「お前…野菜が大嫌いだっただろう?それなのに何故今は残さず食べられるんだ?」
え?!そうだったのっ?!
「え、ええ。もう子供ではありませんので好き嫌いを言うのはやめにしたんです」
咄嗟に口からでまかせを言う。だって全ての野菜料理、美味しかったけど?!
「ふ~ん…それどころか魚料理も嫌いだったよな?それなのに今は綺麗に平らげている」
シリウスお兄様に空になっている魚料理の皿をフォークで指し示される。
え?!魚料理も嫌いだったの?!
「オ…オホホホ…お腹が空いていたので…」
苦しい言い訳をすると、父が言った。
「何だって?お腹が空いていたのか?それでは明日からもっとユリアの食事の量を増やすように厨房に伝えておこう。何しろお前は10日ぶりに目が覚めたのだからな」
「い、いえ!結構です!あ、あの…食事が済んだので私はこれで失礼致します!」
ガタンと席を立ち、私は逃げるようにダイニングルームを後にした。
そして自室を目指しながら私は思った。
いくらなんでも食事の嗜好まで変わっているなんて…。
本当に私は本物のユリア・アルフォンスなのだろうか―と。
「あ、あの…そ、それは…」
背中に冷や汗が流れる。そう言えば父の話では私は兄達から嫌われているようだった。と言う事は…私を追い出す為にこのような質問をしているのだろうか?」
「どうした、ユリア。やはり答えられないのだな?だったら…」
シリウスお兄様目が怪しく光る。
「ああ、答えられないのだったら…」
その時―。
バタンッ!
突然扉が大きく開け放たれ、お父様が部屋の中に現れた。
「アレスッ!シリウスッ!お前たち、ユリアの部屋で何をしているのだっ!」
「あ…父上…」
「父上っ!」
アレスお兄様とシリウスお兄様が驚いたようにお父様を見る。
「一体お前たちという奴は…1年ぶりに帰ってきたかと思えば私の所へ顔も出さずにユリアの元へ行くとは…一体何を考えているのだ?!」
えっ?!そうだったの?!
「そ、それは…」
「ユリアの様子を見に…長男としてユリアの様子が気になったので…」
2人の兄はオロオロしている。
「それにお前たち…ユリアは記憶喪失だと言っているだろう?それなのに母親の名前など答えられるとでも思っているのか?!一体何を考えているのだ!」
「「…」」
あ!黙ってしまったっ!やっぱり私が答えられなかったら難癖をつけてここから追い出すつもりだったのかもしれない!
「…とにかくお前たち2人には話がある。荷物を置いたら速やかに私の執務室へくるように」
父は頭を抑えながら言う。
「え?荷物?」
その言葉に驚く。何とよく見れば私の部屋の入り口に大きなトランクケースが2つおかれているではないか。この2人は自分の荷物を持ったまま私の部屋にやってきていたのだ。
「「はい…」」
2人の兄は不満?そうに返事をすると父に連れられ、トランクケースを引っ張りながら私の部屋を出ていった。
「ふぅ…やっといなくなってくれたわ…」
安堵のため息を付きながら、この先の事が非常に不安になってきた。
「私…このまま何事もなく、この屋敷にいられるのかしら…」
そして私は不安な気持ちを抱えつつ…再び勉強を再開した―。
****
19時―
カチャカチャカチャ…
久しぶりに家族全員一家揃っての食事の団欒席…。それなのに、誰1人口を利く者はいない。
「「「…」」」
父も2人の兄も豪華な食事を前に無言で料理を口にしている。
「…」
未だに記憶が戻らず、全員が赤の他人にしか思えない私は当然言葉を掛けることも出来ず、やはり無言で食事を続けていた。
「「「「…」」」」
張り詰めた、行き詰まるような雰囲気。うう…胃が痛くなりそうだ…。食事が済んだらさっさと自分の部屋へ戻ろう。
そう考えていた時―。
「ユリア」
突然アレスお兄様が声を掛けてきた。
「は、はい!」
驚いて顔を上げるとアレスお兄様がじ~っと私を見つめている。
「な、な、何でしょうか?お兄様」
「お前…野菜が大嫌いだっただろう?それなのに何故今は残さず食べられるんだ?」
え?!そうだったのっ?!
「え、ええ。もう子供ではありませんので好き嫌いを言うのはやめにしたんです」
咄嗟に口からでまかせを言う。だって全ての野菜料理、美味しかったけど?!
「ふ~ん…それどころか魚料理も嫌いだったよな?それなのに今は綺麗に平らげている」
シリウスお兄様に空になっている魚料理の皿をフォークで指し示される。
え?!魚料理も嫌いだったの?!
「オ…オホホホ…お腹が空いていたので…」
苦しい言い訳をすると、父が言った。
「何だって?お腹が空いていたのか?それでは明日からもっとユリアの食事の量を増やすように厨房に伝えておこう。何しろお前は10日ぶりに目が覚めたのだからな」
「い、いえ!結構です!あ、あの…食事が済んだので私はこれで失礼致します!」
ガタンと席を立ち、私は逃げるようにダイニングルームを後にした。
そして自室を目指しながら私は思った。
いくらなんでも食事の嗜好まで変わっているなんて…。
本当に私は本物のユリア・アルフォンスなのだろうか―と。
34
お気に入りに追加
2,871
あなたにおすすめの小説
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】
王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。
しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。
「君は俺と結婚したんだ」
「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」
目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。
どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結】記憶が戻ったら〜孤独な妻は英雄夫の変わらぬ溺愛に溶かされる〜
凛蓮月
恋愛
【完全完結しました。ご愛読頂きありがとうございます!】
公爵令嬢カトリーナ・オールディスは、王太子デーヴィドの婚約者であった。
だが、カトリーナを良く思っていなかったデーヴィドは真実の愛を見つけたと言って婚約破棄した上、カトリーナが最も嫌う醜悪伯爵──ディートリヒ・ランゲの元へ嫁げと命令した。
ディートリヒは『救国の英雄』として知られる王国騎士団副団長。だが、顔には数年前の戦で負った大きな傷があった為社交界では『醜悪伯爵』と侮蔑されていた。
嫌がったカトリーナは逃げる途中階段で足を踏み外し転げ落ちる。
──目覚めたカトリーナは、一切の記憶を失っていた。
王太子命令による望まぬ婚姻ではあったが仲良くするカトリーナとディートリヒ。
カトリーナに想いを寄せていた彼にとってこの婚姻は一生に一度の奇跡だったのだ。
(記憶を取り戻したい)
(どうかこのままで……)
だが、それも長くは続かず──。
【HOTランキング1位頂きました。ありがとうございます!】
※このお話は、以前投稿したものを大幅に加筆修正したものです。
※中編版、短編版はpixivに移動させています。
※小説家になろう、ベリーズカフェでも掲載しています。
※ 魔法等は出てきませんが、作者独自の異世界のお話です。現実世界とは異なります。(異世界語を翻訳しているような感覚です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる