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第66話 一人目の兄
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「2人の兄って…一体どんな人達なのかしら…」
魔法学の勉強をする手を止めて私はポツリと呟いた。父の話では現在24歳の長男の名前は『アレス』、そして22歳の次男の名前は『シリウス』だと言う。
「う~ん…『アレス』といい、『シリウス』といい…何処かで聞いた名前のようにも感じるし…」
だけど、いくら思い出そうとしても駄目だった。感覚的には何となくその名前に覚えがある気がするのだが、気の所為と言われてしまえばそれで終わってしまう。
「でも…こんな風に思える様になったのも…ひょっとして失われた記憶が少しずつ戻ってきているって事なのかしら…?」
考えてもしようがない。それより今は退学にならない為に一生懸命勉強する事を優先しなくては。
そして再び私は教科書に目を落とした―。
****
午後4時―
私は相変わらず勉強を続けていた。私が今勉強しているのは歴史である。
「え~と何々?『魔法』が初めてこの世で確認されたのはインペリアル歴3年?」
だけど…実際にこの目でジョンやクラスメイト達が魔法を使う様子を何度も目撃しているのに、自分が魔法を使えない所為もあってか、未だに信じられなかった。けれど、どうしてこんなにも魔法がある世界に違和感を感じるのだろう?私の頭の中では未だに魔法なんかあるはずないと否定し続けている。
「兄達や父は魔法を使えるのかしら…」
ポツリと呟いた時…
コンコン
突然扉がノックされた。
「あら?誰かしら?」
すると扉の外で声が聞こえた。
「ユリア、俺だ。お前の兄のシリウスだ」
「え?!」
まさか、直接部屋を訪ねてくるとは思わなかった。てっきり夕食の席かどこかで顔合わせをするだろうと思っていたのに…。
「ユリア?どうした?開けてくれ」
「は、はい!今開けます」
カチャ…
扉を開けると、そこには見知らぬ若い男性が立っていた。少し癖のある巻毛のブロンドヘアーに紫色の瞳…。中々のイケメンである。
「シリウス…お兄様…?」
見上げながら恐る恐る、その名を呼ぶ。
「ああ、そうだ。記憶を失っていると父から聞いていたが…何か思い出したのか?」
「いいえ…それがさっぱり思い出せないのです」
首を振って答える。
「そうか…とりあえず中に入れてくれ。話がしたい」
「あ、どうぞ」
私は扉を大きく開け放し、招き入れた。シリウスお兄様はズカズカと部屋に入ると、テーブルの上に広げられた教科書とノートに目を向けた。
「…勉強していたのか?」
「はい」
「お前が?信じられんな」
「いえ、本当です」
余程私の事が信じられないのだろうか?
「この世で一番嫌いなことは勉強だと豪語していたユリアが…自主的に勉強するなんて…ありえないな…」
そんなに記憶を失う前の私は勉強嫌いだったのか…。
「まぁいい」
シリウスお兄様はテーブルの椅子を引くと椅子に腰掛けると私を見た。
「ユリア、お前も座れ」
「は、はい」
命じられるまま、大人しく椅子に座る。そんな私を兄は不躾なくらい、ジロジロと見る。
「あ、あの…何か…?」
「いや…父が言っていたのだが…お前は記憶を失ってからまるで別人の様になってしまったと言っていたのだが…最初その話を聞いた時は信じられなかったが…確かに今のお前は別人に見えるな…」
「そうなのですか?」
まるで別人の様になってしまったと言われても、私には今の状態になる前の自分の記憶が一切ない。適当に相槌を打つしか無かった。
すると、突然兄が私に言った。
「ユリア…お前、一体何者だ…?」
「え…?」
兄のその言葉に私は何故か背筋が寒くなった―。
魔法学の勉強をする手を止めて私はポツリと呟いた。父の話では現在24歳の長男の名前は『アレス』、そして22歳の次男の名前は『シリウス』だと言う。
「う~ん…『アレス』といい、『シリウス』といい…何処かで聞いた名前のようにも感じるし…」
だけど、いくら思い出そうとしても駄目だった。感覚的には何となくその名前に覚えがある気がするのだが、気の所為と言われてしまえばそれで終わってしまう。
「でも…こんな風に思える様になったのも…ひょっとして失われた記憶が少しずつ戻ってきているって事なのかしら…?」
考えてもしようがない。それより今は退学にならない為に一生懸命勉強する事を優先しなくては。
そして再び私は教科書に目を落とした―。
****
午後4時―
私は相変わらず勉強を続けていた。私が今勉強しているのは歴史である。
「え~と何々?『魔法』が初めてこの世で確認されたのはインペリアル歴3年?」
だけど…実際にこの目でジョンやクラスメイト達が魔法を使う様子を何度も目撃しているのに、自分が魔法を使えない所為もあってか、未だに信じられなかった。けれど、どうしてこんなにも魔法がある世界に違和感を感じるのだろう?私の頭の中では未だに魔法なんかあるはずないと否定し続けている。
「兄達や父は魔法を使えるのかしら…」
ポツリと呟いた時…
コンコン
突然扉がノックされた。
「あら?誰かしら?」
すると扉の外で声が聞こえた。
「ユリア、俺だ。お前の兄のシリウスだ」
「え?!」
まさか、直接部屋を訪ねてくるとは思わなかった。てっきり夕食の席かどこかで顔合わせをするだろうと思っていたのに…。
「ユリア?どうした?開けてくれ」
「は、はい!今開けます」
カチャ…
扉を開けると、そこには見知らぬ若い男性が立っていた。少し癖のある巻毛のブロンドヘアーに紫色の瞳…。中々のイケメンである。
「シリウス…お兄様…?」
見上げながら恐る恐る、その名を呼ぶ。
「ああ、そうだ。記憶を失っていると父から聞いていたが…何か思い出したのか?」
「いいえ…それがさっぱり思い出せないのです」
首を振って答える。
「そうか…とりあえず中に入れてくれ。話がしたい」
「あ、どうぞ」
私は扉を大きく開け放し、招き入れた。シリウスお兄様はズカズカと部屋に入ると、テーブルの上に広げられた教科書とノートに目を向けた。
「…勉強していたのか?」
「はい」
「お前が?信じられんな」
「いえ、本当です」
余程私の事が信じられないのだろうか?
「この世で一番嫌いなことは勉強だと豪語していたユリアが…自主的に勉強するなんて…ありえないな…」
そんなに記憶を失う前の私は勉強嫌いだったのか…。
「まぁいい」
シリウスお兄様はテーブルの椅子を引くと椅子に腰掛けると私を見た。
「ユリア、お前も座れ」
「は、はい」
命じられるまま、大人しく椅子に座る。そんな私を兄は不躾なくらい、ジロジロと見る。
「あ、あの…何か…?」
「いや…父が言っていたのだが…お前は記憶を失ってからまるで別人の様になってしまったと言っていたのだが…最初その話を聞いた時は信じられなかったが…確かに今のお前は別人に見えるな…」
「そうなのですか?」
まるで別人の様になってしまったと言われても、私には今の状態になる前の自分の記憶が一切ない。適当に相槌を打つしか無かった。
すると、突然兄が私に言った。
「ユリア…お前、一体何者だ…?」
「え…?」
兄のその言葉に私は何故か背筋が寒くなった―。
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