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第52話 話はそれだけですか?
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「おかしい…何か腑に落ちないわ…。どうして突然に校長先生は態度を改めたのかしら…?ううん、それだけじゃないわ。何だか理事長も怪しく思えるし…」
ブツブツ呟きながら教室目指して歩いていると、前方から見知った顔がこちらへ向かってやって来る。あ…あの生徒は…。
向かってくるのは銀色の髪の女子生徒、確かテレシアだっただろうか?彼女は他に2名の女子生徒たちと会話をしながら歩いている。
そう言えば記憶は無いけれども、以前の私はどうやら彼女を虐めていたらしい。何となくバツが悪いので廊下の端っこをうつむき加減に歩いてやり過ごそうとした矢先…。
「おはようございます、ユリア様」
通り過ぎた瞬間、いきなりテレシアから声を掛けられた。
「あ…お、おはようございます」
愛想笑いをしつつ、振り向く。
するとテレシア達の顔色が変わる。
「何…?あの態度…」
「気持ち悪いわ…」
二人の女生徒が露骨に嫌そうな表情を浮かべて私を見る。それにしても気持ち悪いはあんまりな発言だと思う。一体どれほど私は嫌われていたのだろうか…?するとテレシアは言った。
「駄目よ、そんな言い方するのは良くないわ。いくらこの学園は実力主義だと言ってもユリア様は公爵令嬢なのだから」
うん?何だかその言い方にトゲを感じる。
「そうよね…失礼致しました。ユリア様」
私の事を気持ち悪いと言った女子学生がスカートの裾をつまみ、謝罪してきた。
「は、はい。では私はこれで…」
なるべく彼女達とは関わりたくはなかったので、そのまま立ち去ろうとすると、再びテレシアが呼び止めてきた。
「ところでユリア様。昨日の話…聞きましたわ」
「え?」
振り返るとテレシアはニッコリ笑みを浮かべながら私を見ている。
「昨日の話…?」
何だろう?色々ありすぎて分からない。ジョンが私の姿でキャロライン先生に炎の魔法をぶつけたことだろうか?それとも家庭科の授業で称賛を浴びたこと…はありえないだろう。となると、私が学園内で命を狙われたこと…?
首を捻っていると、テレシアが言った。
「分からないのですか?昨日家庭科の授業でケーキを作られたそうですが…」
「ああ、あの事ですか?」
成程、その話だったのか。一体どんな風に伝わっているのだろう?
「貴女は昨日、ベルナルド王子にまた差し入れに行ったそうですね?挙げ句に断られた腹いせに別の男性に王子の目の前でケーキを渡したらしいじゃないですか?いくら相手にされないからと言って、下手な小細工をするとますますベルナルド王子に嫌われてしまいますよ?」
「え?」
何それ?確かにベルナルド王子の目の前でケーキを渡したけれども、別に王子に差し入れに行ったわけではない。けれど、反論する気にもなれなかった。
「話はそれだけですか?」
「え?ええ…」
戸惑いながら返事をするテレシア。
「それではこれで失礼します」
頭を下げて、その場を立ち去ろうとするとさらにテレシアが呼び止めてきた。
「ちょ、ちょっとまだ話は…」
その時―
10分前の予鈴が鳴り響いた。
「あら?予鈴が鳴りましたね。ごめんなさい、もう行かないと」
私はまだ何か言いたげなテレシア達をその場に残し、背を向けると歩き始めた。
それにしても先程の話…。
あの場にテレシアはいなかったのに、何故知っていたのだろう?まぁ、事実は歪曲されているけれども…。
首を傾げながら私は急ぎ足で教室を目指した―。
ブツブツ呟きながら教室目指して歩いていると、前方から見知った顔がこちらへ向かってやって来る。あ…あの生徒は…。
向かってくるのは銀色の髪の女子生徒、確かテレシアだっただろうか?彼女は他に2名の女子生徒たちと会話をしながら歩いている。
そう言えば記憶は無いけれども、以前の私はどうやら彼女を虐めていたらしい。何となくバツが悪いので廊下の端っこをうつむき加減に歩いてやり過ごそうとした矢先…。
「おはようございます、ユリア様」
通り過ぎた瞬間、いきなりテレシアから声を掛けられた。
「あ…お、おはようございます」
愛想笑いをしつつ、振り向く。
するとテレシア達の顔色が変わる。
「何…?あの態度…」
「気持ち悪いわ…」
二人の女生徒が露骨に嫌そうな表情を浮かべて私を見る。それにしても気持ち悪いはあんまりな発言だと思う。一体どれほど私は嫌われていたのだろうか…?するとテレシアは言った。
「駄目よ、そんな言い方するのは良くないわ。いくらこの学園は実力主義だと言ってもユリア様は公爵令嬢なのだから」
うん?何だかその言い方にトゲを感じる。
「そうよね…失礼致しました。ユリア様」
私の事を気持ち悪いと言った女子学生がスカートの裾をつまみ、謝罪してきた。
「は、はい。では私はこれで…」
なるべく彼女達とは関わりたくはなかったので、そのまま立ち去ろうとすると、再びテレシアが呼び止めてきた。
「ところでユリア様。昨日の話…聞きましたわ」
「え?」
振り返るとテレシアはニッコリ笑みを浮かべながら私を見ている。
「昨日の話…?」
何だろう?色々ありすぎて分からない。ジョンが私の姿でキャロライン先生に炎の魔法をぶつけたことだろうか?それとも家庭科の授業で称賛を浴びたこと…はありえないだろう。となると、私が学園内で命を狙われたこと…?
首を捻っていると、テレシアが言った。
「分からないのですか?昨日家庭科の授業でケーキを作られたそうですが…」
「ああ、あの事ですか?」
成程、その話だったのか。一体どんな風に伝わっているのだろう?
「貴女は昨日、ベルナルド王子にまた差し入れに行ったそうですね?挙げ句に断られた腹いせに別の男性に王子の目の前でケーキを渡したらしいじゃないですか?いくら相手にされないからと言って、下手な小細工をするとますますベルナルド王子に嫌われてしまいますよ?」
「え?」
何それ?確かにベルナルド王子の目の前でケーキを渡したけれども、別に王子に差し入れに行ったわけではない。けれど、反論する気にもなれなかった。
「話はそれだけですか?」
「え?ええ…」
戸惑いながら返事をするテレシア。
「それではこれで失礼します」
頭を下げて、その場を立ち去ろうとするとさらにテレシアが呼び止めてきた。
「ちょ、ちょっとまだ話は…」
その時―
10分前の予鈴が鳴り響いた。
「あら?予鈴が鳴りましたね。ごめんなさい、もう行かないと」
私はまだ何か言いたげなテレシア達をその場に残し、背を向けると歩き始めた。
それにしても先程の話…。
あの場にテレシアはいなかったのに、何故知っていたのだろう?まぁ、事実は歪曲されているけれども…。
首を傾げながら私は急ぎ足で教室を目指した―。
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