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第45話 身勝手な護衛騎士
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馬車が見えなくなると、ようやく一息つくことが出来た。
「ふぅ~…やっと帰ってくれたわ」
「ええ。やっと帰ってくれましたね」
突如傍で声が聞こえて、またもや私は悲鳴を上げてしまった。
「キャアアアッ!」
「…いきなり人の耳元で叫ぶのはやめて頂けますか?」
ジョンは両耳を押さえながらジロリと私を見た。
「あ、あのねぇ…そんな誰もいないはずだった場所にいきなり現れて声を掛けられたら誰だって悲鳴を上げるわよ!いえ、むしろ心臓が止まらなくて本当に良かったわ…」
「随分大袈裟ですね。人はそんなに簡単に死にませんからご安心下さい。さて、それでは行きますよ」
「え?行くって何所へ?」
「そんなの分りきってるじゃないですか。ユリアお嬢様のお部屋へ戻るんですよ。これから反省文と『魔法学』のレポートをまとめなくてはいけないのですから」
「あ…」
そうだった、忘れていた。
「ユリアお嬢様…さてはすっかり忘れていましたね?」
ジョンがジロリと私を見る。
ギクッ!
「ま、まさか忘れてるはずないじゃない。勿論覚えていたわよ。ただねぇ…本当にそんな物提出して、私の退学処分が免れるとは思えないのよ。だってキャロライン先生はハッキリ言ったのよ。私の事絶対退学にするって」
「ああ。それならご安心下さい。そんな真似絶対にあの教師は出来ませんから」
「え?何で?」
その自信…一体何所から来るのだろう?
「簡単な事ですよ。多分今頃、もうあの女教師は学校を辞めている頃でしょうから」
「え…?や、やめた…?な、何で?」
「…理由を知りたいですか?」
ジョンはゾクリとするほど、美しい笑みを浮かべて私を見た。
「…」
どうしよう…正直な事を言えば、何故キャロライン先生が学校を辞めたのか知りたい。けれど…こ、怖いっ!絶対にジョンが何かしたのは確実だ。だからこそ、余計に尋ねる事が出来なかった。
「う、ううん。き、聞かなくていいわ」
「そうですか。ではすぐに部屋へ戻って始めますよ。何しろ退学がかかっているのですから。何としてもそれだけは阻止しなければなりませんからね」
傍から見れば、私の為に言っている台詞に思えるかもしれないが…しかし、私は知っている。この発言は全て自分の事だけを優先して話していると言う事を。
「…何ですか?まだ何か言いたい事でもあるのですか?」
冷たい目でジョンが私を見る
「い、いいえ。何も無いわ。それじゃすぐに部屋へ戻りましょうか」
そしてジョンと部屋へ向かう最中に、私は肝心な事を思い出した。
「あ…そう言えばジョンッ!何であんな真似をしたの?」
「あんな真似とは?」
「ベルナルド王子に炎の魔法を使った事よ」
「さぁ…?何の事でしょう?」
あくまでシラを切るジョン。
「しらばっくれないでよ。ベルナルド王子を火だるまにしようとしたでしょう?」
「随分話を盛りますねぇ。背中をちょっと焼いただけじゃないですか」
「ほら!引っかかった。今認めたわね?背中をちょっと焼いただけだと」
「な、なんと…っ!こ、この私が…たかだかユリアお嬢様ごときにしてやられるとは…っ!」
真底悔しがるジョン。
「ふふん、私だってやられっぱなしじゃないのよ」
それにしても、たかだかユリアお嬢様ごときと言う言葉が気に入らない。
「クッ…!私もまだまだ修行が必要だと言う事か…!」
修行…。一体どんな修行が必要だと言うのだろう?いや、それよりもまずは…。
「ねぇ。何故ベルナルド王子に火の魔法を使ったのか説明してよ。室内であんな魔法を使うなんて…火事になったら危ないじゃないの」
「成程。ユリアお嬢様はベルナルド王子の心配よりも火事の心配をされたのですね?」
ジョンはニヤリと笑うと言った。
「炎の魔法を王子に使ったのは簡単な事です。さっさと帰って欲しかったからですよ。何しろユリアお嬢様には反省文とレポート提出という最大重要事項があるのですから。いつまでも入り浸れていたら、課題に取り掛かれないでしょう?退学なんてされたらたまりませんからね」
「…」
私は呆れ顔でジョンを見た。結局、あんな滅茶苦茶な行動に出たのは全てジョンの身勝手な考えによるものなのだ。
本当にこんな男に護衛をお願いして大丈夫なのだろうか?
私は一抹の不安を感じるのであった―。
「ふぅ~…やっと帰ってくれたわ」
「ええ。やっと帰ってくれましたね」
突如傍で声が聞こえて、またもや私は悲鳴を上げてしまった。
「キャアアアッ!」
「…いきなり人の耳元で叫ぶのはやめて頂けますか?」
ジョンは両耳を押さえながらジロリと私を見た。
「あ、あのねぇ…そんな誰もいないはずだった場所にいきなり現れて声を掛けられたら誰だって悲鳴を上げるわよ!いえ、むしろ心臓が止まらなくて本当に良かったわ…」
「随分大袈裟ですね。人はそんなに簡単に死にませんからご安心下さい。さて、それでは行きますよ」
「え?行くって何所へ?」
「そんなの分りきってるじゃないですか。ユリアお嬢様のお部屋へ戻るんですよ。これから反省文と『魔法学』のレポートをまとめなくてはいけないのですから」
「あ…」
そうだった、忘れていた。
「ユリアお嬢様…さてはすっかり忘れていましたね?」
ジョンがジロリと私を見る。
ギクッ!
「ま、まさか忘れてるはずないじゃない。勿論覚えていたわよ。ただねぇ…本当にそんな物提出して、私の退学処分が免れるとは思えないのよ。だってキャロライン先生はハッキリ言ったのよ。私の事絶対退学にするって」
「ああ。それならご安心下さい。そんな真似絶対にあの教師は出来ませんから」
「え?何で?」
その自信…一体何所から来るのだろう?
「簡単な事ですよ。多分今頃、もうあの女教師は学校を辞めている頃でしょうから」
「え…?や、やめた…?な、何で?」
「…理由を知りたいですか?」
ジョンはゾクリとするほど、美しい笑みを浮かべて私を見た。
「…」
どうしよう…正直な事を言えば、何故キャロライン先生が学校を辞めたのか知りたい。けれど…こ、怖いっ!絶対にジョンが何かしたのは確実だ。だからこそ、余計に尋ねる事が出来なかった。
「う、ううん。き、聞かなくていいわ」
「そうですか。ではすぐに部屋へ戻って始めますよ。何しろ退学がかかっているのですから。何としてもそれだけは阻止しなければなりませんからね」
傍から見れば、私の為に言っている台詞に思えるかもしれないが…しかし、私は知っている。この発言は全て自分の事だけを優先して話していると言う事を。
「…何ですか?まだ何か言いたい事でもあるのですか?」
冷たい目でジョンが私を見る
「い、いいえ。何も無いわ。それじゃすぐに部屋へ戻りましょうか」
そしてジョンと部屋へ向かう最中に、私は肝心な事を思い出した。
「あ…そう言えばジョンッ!何であんな真似をしたの?」
「あんな真似とは?」
「ベルナルド王子に炎の魔法を使った事よ」
「さぁ…?何の事でしょう?」
あくまでシラを切るジョン。
「しらばっくれないでよ。ベルナルド王子を火だるまにしようとしたでしょう?」
「随分話を盛りますねぇ。背中をちょっと焼いただけじゃないですか」
「ほら!引っかかった。今認めたわね?背中をちょっと焼いただけだと」
「な、なんと…っ!こ、この私が…たかだかユリアお嬢様ごときにしてやられるとは…っ!」
真底悔しがるジョン。
「ふふん、私だってやられっぱなしじゃないのよ」
それにしても、たかだかユリアお嬢様ごときと言う言葉が気に入らない。
「クッ…!私もまだまだ修行が必要だと言う事か…!」
修行…。一体どんな修行が必要だと言うのだろう?いや、それよりもまずは…。
「ねぇ。何故ベルナルド王子に火の魔法を使ったのか説明してよ。室内であんな魔法を使うなんて…火事になったら危ないじゃないの」
「成程。ユリアお嬢様はベルナルド王子の心配よりも火事の心配をされたのですね?」
ジョンはニヤリと笑うと言った。
「炎の魔法を王子に使ったのは簡単な事です。さっさと帰って欲しかったからですよ。何しろユリアお嬢様には反省文とレポート提出という最大重要事項があるのですから。いつまでも入り浸れていたら、課題に取り掛かれないでしょう?退学なんてされたらたまりませんからね」
「…」
私は呆れ顔でジョンを見た。結局、あんな滅茶苦茶な行動に出たのは全てジョンの身勝手な考えによるものなのだ。
本当にこんな男に護衛をお願いして大丈夫なのだろうか?
私は一抹の不安を感じるのであった―。
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